2021年の株式市場は、アメリカの斜陽産業が大嵐を巻き起こした事件からスタートしました。それは、Gamestop株を舞台とした狂乱相場です。このことについてはあまりにも大きく報道されたために(興味本位の報道も含めて)、株式投資をやっていない方であってもご存じの方は多いでしょう。
この狂乱相場は「Gamestop株」祭りとも呼ばれ、日本からも多くの個人投資家が参戦して利益を上げた人、逆に損失を被った人などさまざまです。当のアメリカでは破産に追い込まれるほどの大損をした人もいるようで、いかにこの祭りが狂った祭りであるかが窺えます。
このGamestop株祭りとはいったい何だったのか?そしてこの祭りが株式市場や金融市場にどんな影響を与えたのでしょうか?そしてこの狂乱が暗号資産(仮想通貨)市場でも起きるといわれている声もあるので、ここで一度騒動の顛末を解説したうえで、今後の展開を展望してみたいと思います。
Gamestop株祭りの顛末をざっくり解説
Gamestopとは、アメリカで中古ゲームソフトなどを販売しているチェーン店です。日本でいうとブックオフやゲオといったところでしょうか。子供のころからゲームが好きだったという方のなかには、ブックオフやゲオのお世話になったという方も多いのではないでしょうか。それがアメリカでは、Gamestopというわけです。
しかしこのGamestopは、オンラインゲームや配信によるゲームのリリースなどが影響して業績が低迷し、かつてのような存在感はなくなっていました。そこで株価の下落を見越したヘッジファンドがGamestop株の大規模な空売りを仕掛けました。これは何ら珍しいことではなく、買いだけではなく売りからでも参戦してくるヘッジファンドにありがちな投資行動です。ただ、相手がGamestopだったことが良くなかったのです。
子供のころから慣れ親しんできたゲームソフト屋に空売りを仕掛けて会社を潰そうとしている!という怒りの声がネットで上がり、それがレディットという掲示板に集まるようになりました。このレディットにはたくさんの掲示板があって、そのなかに「Wallstreetbets」という証券取引に関する情報が書き込まれる掲示板がありました。日本でいう「2ちゃんねる」のスレッドのようなものです。
すると多くのネットユーザーがこれに賛同し、「俺たちのGamestopを潰そうとしているヘッジファンドを叩き潰せ!」とばかりに個人投資家が殺到、Gamestop株に買いが殺到することとなりました。しかも少し前からロビンフッドという株式投資アプリがアメリカでは大流行しているので、多くのロビンフッダーたちがGamestop株を買い上げていったわけです。
かくして、すでに数ドル程度で低迷していたGamestop株は100ドル、200ドルという節目をあっさりクリアし、対には400ドルを超える高値をつけたのです。
ヘッジファンドは敗北、そして退散
それでは空売りを仕掛けていたヘッジファンドはどうなったのかといいますと、個人投資家の殺到に耐え切れず踏み上げを食らい、損切りをして退散することとなりました。ロビンフッダーはほぼ全員が個人投資家なので、1人1人の投資額は大きくないのですが、ネットの影響力でそれが集結するとヘッジファンドを打ち負かすことができることが証明される前例となりました。
しかもロビンフッダーたちは株式投資の専門家というより、何か面白そうなので乗っかってみようというレベルの投資家がほとんどなので、このようにブーム化した銘柄に殺到しやすい土壌がかねてからありましました。アメリカのEV大手であるテスラ株を買い上げて行ったのもロビンフッダーだと言われていますし、今後彼らが注目したものは狂騰する可能性があるわけです。
暗号資産市場とロビンフッダー
ロビンフッドは株式投資アプリというイメージが強いですが、暗号資産の取引も可能です。可能である以上、何かのきっかけでロビンフッダーが暗号資産の何かのコインに殺到する可能性は十分あります。
もとより暗号資産はボラティリティがとても大きく、値動きの激しさが魅力であり、リスクでもあります。一時は40万円台にまで下落していたビットコイン円は400万円を超える上昇をしましたし、そもそもビットコインが高騰する前は1円を大きく下回る価値しかなかったのですから、そのボラティリティの高さはGamestop株の比ではありません。
ロビンフッダーは「投資で儲ける」という勢力と、「面白そうだから乗っかる」という勢力に分けられると思います。前者はビットコインに注目する可能性が高いですが、後者はビットコインでなくても面白そうなコインであれば何でも良いと考えるので、聞いたこともないようなコインが急に狂騰することも十分あり得ます。
日本からロビンフッドを利用することはできませんが、暗号資産取引をするのであれば彼らの動向は注視しておく必要があります。日本語のニュースでも検索をすると情報を得ることができるので、暗号資産に何らかの注目が集まっているというニュースを見逃さないようにしましょう。