2022年5月に起きた暗号資産の暴落。その中でも99.99%の下落という天文学的な暴落が起きたLUNAと、そのLUNAが価値を裏づけていたステーブルコインUSTの暴落について、その背景やここから得られる教訓について解説します。
今回は、その後編です。何が起きたのかを知りたい方は前編からお読みください。
アルゴリズム型ステーブルコインの限界
ステーブルコインは法定通貨とペッグしている暗号資産のことです。ペッグとは価値が同一もしくは連動するという意味です。暗号資産の中で最も有名なステーブルコインはテザー(USDT)だと思いますが、これは1USDT=1ドルになるように設計されています。
このドルペッグを維持するために、テザーは発行枚数と同じだけのドルを保有しています。つまり、いつでもドルを交換できるだけの現物資産を用意することでドル兌換といえる状態を作り、それをテザーの信用につなげています。
これに対してUSTは、アルゴリズム型のステーブルコインです。このアルゴリズム型というのが少々厄介で、テザーのような法定通貨の裏付けはありません。USTの発行枚数に対してドルが保管されているわけではなく、その代わりに同じく暗号資産であるLUNAが裏付けとなっていました。つまり、LUNAの価値が安定していればUSTの価値も保持されるわけです。
ではLUNAにどれだけの財産的裏付けがあるかというと、それは市場原理に任せっぱなしでした。ビットコインのような決済手段としての普及、イーサリアムのようにスマートコントラクトの基軸通貨としての機能があるわけではなく、ブロックチェーンにまた誕生した暗号資産の1つにすぎませんでした。ちょっと厳しい言い方になりますが、砂上の楼閣の上にさらにもう1つ砂上の楼閣を建てたイメージでしょうか。
「アルゴリズム型」と呼ばれているのは、ステーブルコインのUSTが価値を安定させるためにLUNAの発行量を自動調節するからです。それによってUSTの裏付けとなるLUNAの価格が安定し、仮にUSTでドルペッグとの乖離が起きそうになったとしてもアービトラージの動きが起きて自然発生的にドルペッグに回帰していくというのが、LUNAとUSTに描いたビジョンでした。
このモデルが機能するには、LUNAの調節機能とUSTのアービトラージが常に健全でなければなりません。つまり、ほとんど市場の原理に任せる他力本願です。これだと暗号資産全体に「何か」が起きたときに一気に構図が崩れ、今回のような天文学的な暴落につながってしまうわけです。
図らずも、今回の件はその前例となりました。この前例がある以上、アルゴリズム型のステーブルコインに生きる道はないかもしれません。
暗号資産投資家は何に注意するべきか
今回の暴落で、暗号資産投資家は大きなダメージを受けてしまったかもしれません。暗号資産FXのようにレバレッジ取引をしている人の中にはロスカットを余儀なくされたというケースもあるでしょう。
やはり暗号資産はとても不安定なものであり、何らかの裏付けや需要がなければ成立しえないことが改めて証明されました。ミームコインのように半分おふざけの暗号資産が高値を付けることもありますが、これも多くの投資家が面白がって買っているだけで、最後に買った人がババ抜きのババを掴まされることになります。 暗号資産投資では通貨の見極めがとても重要です。その通貨にはどんな役割と使い道があるのか、その使い道は今後実需を伴うものなのか、これらの点を精査して少しでも不安があるコインやトークンには投資しないのが賢明です。