前編では、暗号資産がいよいよ本来の能力を発揮して、実需を伴う発展をするかもしれないというお話をしました。後編では、暗号資産が先行して普及して広く使用されている国々の事情を踏まえて、暗号資産が今後さらに利用価値を高めていくのかどうかについて解説したいと思います。
利用は拡大しているが、やはり途上国のみ
前編ではビットコインがエルサルバドルで法定通貨になり、ハイパーインフレが進んでいるような国々では決済通貨として機能していることに言及しました。確かに、こうした国々で利用が広がっているのはアンバンクトの人たちにとってもメリットが大きいと思います。
というのも、暗号資産は単に決済手段だけでなくDeFiやレンディングなど、本来であれば銀行で受けるようなサービスも用意されているため、暗号資産だけで金融システムにアクセスする人がいてもおかしくありません。まだまだ制度上、機能上で未整備な部分もありますが、それでもアンバンクトの人たちにとっては「マシ」な手段なのです。
しかしながら、私たち日本人はこのことにメリットをあまり感じません。日本にはほとんどアンバンクトの人がおらず、銀行に口座を持っても一部の銀行を除くとコスト不要です。伝統的な銀行にアクセスできる日本では、アンバンクトの人たちが感じるようなメリットがメリットに見えません。
このことは他の主要先進国にも共通していることなので、やはり暗号資産が本来の用途で普及していくのは途上国や経済が破綻しているような国々だけなのかもしれません。
数十億人のアンバンクトが暗号資産を利用すると、どうなる?
今後の暗号資産を考えた時、先進国と途上国とでは事情がかなり違うことがお分かりいただけたと思います。今後も先進国や主要国では自国の権益を守るために暗号資産に対して冷たい政策がとられることは間違いないと思います。それに対して途上国の中には暗号資産に頼らざるを得ない国が間違いなくありません。
これらの国々にいるアンバンクトの人たちは、人数だけを見ても数十億人。この人たちが銀行の代わりに暗号資産を使い始めたら、それはとんでもない市場規模になります。
ビットコインなど比較的信頼性のある暗号資産の価格は跳ね上がるでしょうし、今後ビットコインに次ぐようなコインが登場しても不思議ではありません。
とりわけ利用価値が高いと考えられるのが、ステーブルコインです。米ドルなど世界の主要な法定通貨と同じ価値になるように運用されているので、米ドルの代わりにステーブルコインが決済に使用されている場面はすでに数多くあります。
暗号資産の将来を決めるのは、今はアンバンクトとなっている人たちかもしれません。
マイニングビジネスに参入するチャンスかもしれない
アンバンクトの人たちに本格的な普及が始まると、暗号資産は大化けするかもしれません。しかも、投機的な動きではなく実需による高騰が起きれば、暗号資産は伝統的な資産と同列に扱われるようになるでしょう。
中国の暗号資産全面禁止やFTXの経営破綻など、暗号資産の価格を暴落させるようなニュースが相次ぎました。それに伴って暗号資産の中では最難関であるビットコインのマイニングハッシュレートも低下し、個人がマイニングに参入しやすい環境が整っています。これを機にマイニングを始める人は、途上国のアンバンクトの人たちの動向に注目してみるのも面白いと思います。