マイニングの報酬を巡る「戦い」がますます熾烈になっていく中、他人のマシンを勝手に使ってマイニングをするcoinhiveについての記事を公開しました。このcoinhiveが商業的に成功したこともあって、同様の手法でマイニングを行うクリプトジャッキングが爆発的な増加を見せています。

ここまできたマイニングとクリプトジャッキングの最新事情と、これから考えられる展開について述べてみたいと思います。

いかに他人のリソースを使うか

自宅や会社などでマイニングをしている方に共通する悩みは、電気代と騒音です。本格的なマイニングリグを構築して運用するとグラフィックボードが8枚実装されたマシンが大量の電気を消費し、決して無いことにはできない騒音を発します。

これだけの環境を用意したとしても満足のいくマイニング報酬を得られるかというと、その保証もありません。

そこで考え出されたのが、他人のマシンやネット回線というリソース（資源）を使ってマイニングを行い、その報酬は自分のものにする手法です。これをクリプトジャッキングといいます。クリプトジャッキングが悪質なのは、ユーザーの知らないところでバックグラウンド処理としてマイニングが行われるため、ユーザーが全く及び知らないところで他人の金儲けに参加させられてしまう点です。

それによってマシンが熱を持ってしまったり、ひどい場合は熱暴走を起こして止まってしまうこともあります。そこまでいかなくてもマシンの処理速度が急に落ちてしまったりといった報告は数え切れないほどあります。

まさにコンピューターウイルスのような厄介者のクリプトジャッキングですが、セキュリティソフト開発大手のシマンテックのレポートによると2017年の1年だけでクリプトジャッキングの事例が850倍に跳ね上がっているそうです。このデータは同時に、それだけクリプトジャッキングが儲かる魅力的なものだということを物語っています。

この傾向は今後も続くと思われるので、coinhive以外にも続々と登場しているクリプトジャッキングツールが普及をしていくことでしょう。

クリプトジャッキングは善か悪か

クリプトジャッキングのこうした特性を知ると、「とんでもない行為だ」と思われる方も多いでしょう。いえ、ほとんどの方がそう思うことでしょう。しかし、クリプトジャッキングは犯罪行為として取り締まりの対象になっておらず、法律的な解釈でもグレーゾーンです。coinhiveを埋め込んだサイトを運営していた人が家宅捜索をされた事例が大々的に報じられましたが、この人が逮捕にいたったわけではなく、改めてグレーな存在であることが浮き彫りになりました。

勝手にマシンのリソースを使われた人にとってはたまったものではありませんが、クリプトジャッキングを収入源とすることで広告を表示しなくてもよくなり、すっきりと見やすいサイトが増えるというメリットも指摘されています。

クリプトジャッキングツールを設定する時にマシンのリソースをそれほど食わず、「ちょっと拝借」という程度であればユーザーにも迷惑がかかりませんし、その程度のクリプトジャッキングであれば市民権を獲得していくかも知れません。

必ずしも悪と言い切れないところにモヤモヤ感はありますが、「それでも自分はそんなのに参加したくない」と思われる方も多いでしょう。

クリプトジャッキングは撃退できる

勝手にマイニングに参加させられて報酬だけは持って行かれるのは納得できないという方は、クリプトジャッキングを撃退してください。方法はとても簡単で、最も簡単なのは主要なセキュリティソフトを導入しておくことです。多くのセキュリティソフトがクリプトジャッキングのスクリプトを検知して警告を発するなど何らかの反応をしてくれます。中には自動的にアクセスを遮断するものもあるので、ウイルスやトロイの木馬と同様のセキュリティを確保できます。

その他には、Ad-Blockerといって広告表示をブロックする拡張機能も有効です。なぜなら、クリプトジャッキングはJavaScriptで動作するものなので、広告表示のために作動するスクリプトを止めることでクリプトジャッキングも止めることができます。

もっと根本的にJavaScriptを無効化する方法もありますが、最近はこの機能を使って便利な使い勝手を実現しているサイトも多いので、クリプトジャッキングを撃退する一方でデメリットも大きいのであまりおすすめはできません。

何だか世知辛い話ですが、それもこれも仮想通貨の存在感がますます大きくなっていることが最大の理由です。仮想通貨で報酬を得ることの意味が大きくなればなるほど、こうした問題はより大きくなってしまうのは避けられません。