お笑いコンビ「TKO」の木本武宏氏が暗号資産投資をめぐるトラブルで所属事務所である松竹芸能との契約を解除したとの報道が世の中を騒がせています。TKOというと相方の木下隆行氏が後輩への暴力沙汰で干されてしまったことで知られていますが、TKOはコンビ揃ってTKO(テクニカルノックアウト)状態だと揶揄される有様です。
木下氏のトラブルについては暗号資産に何の関係もありませんが、木本氏の投資トラブルは暗号資産に関わるもので、しかも当コラムで一度取り上げたSTEPNが舞台となっています。いったい何が起きたのか、何が問題なのかについて解説したいと思います。
「TKO木本事件」の概要
芸能界だけでなく投資業界も騒がせている「TKO木本事件」は、歩いて暗号資産がもらえるSTEPNに絡むものでした。当コラムではすでにSPTENの問題点だと思われる部分について指摘していますが、その危惧が現実になってしまった格好です。
木本氏自身も相当STEPNにのめり込んでいたようで、その魅力を芸人仲間にも広めたところ、STEPNにお金を投じる人が続出。しかしSTEPNでもらえる暗号資産であるGSTの暴落や、新規ユーザーからの利益を吸い上げるポンジスキームのような仕組みによって多くの参加者が損をする事態になったようです。
その規模は、なんと5億円。自分で5億円を損しただけであれば高すぎる授業料で済まされたかもしれませんが、参加を勧めた人にまで損害が及んでいることが問題でした。これによって木本氏は松竹芸能との契約を解除、事実上芸能活動を停止することとなりました。少なくともテレビやラジオなどでの芸能活動はもう難しいでしょう。
やはりSTEPNは詐欺だったのか?
人気お笑い芸人を実質的な廃業に追い込んでしまったSTEPNですが、筆者はかねてよりリスクについて指摘してきました。歩くことで暗号資産がもらえるという発想は健康にも良いですし、悪いものではありません。しかしそれを投資として捉えると少々怪しげな香りが漂います。
STEPNで利益を得るにはスニーカーを購入する必要があり、そのスニーカーが数十万円という高額であることが問題です。ポンジスキームであるとの指摘も一部当たっていると思いますし、STEPNでもらえる暗号資産GSTの暴落も投資として捉えると破綻状態にあります。
木本氏がSTEPNをあちこちに勧めていた頃はGSTの価格も高かったかもしれませんが、それが暴落してしまったのですから、「騙された」と感じる人がいても不思議ではありません。当記事の執筆時点でそのような「被害者の声」は聞かれませんが、やがて損害の状況も明らかになっていくでしょう。
暗号資産の儲け話にはくれぐれもご用心
今回の「TKO木本事件」に似た事件は、これまでにも何度もありました。人気芸能人や有名人が勧めることによって被害が拡大したことも珍しくはありません。しかし、やはり他人に儲け話を教えてくれる人はいないというのは鉄則で、仮に木本氏に悪気がなかったとしても結果的に木本氏も含めて損をしてしまうこととなりました。
暗号資産は歴史が浅く未発達の部分が多いためにこうした話は他にもたくさんあります。自分で判断するリテラシーと仮に全額を失っても致命的なダメージにはならない余剰資金以外を投じないことなど、暗号資産との付き合い方を改めて考えさせられる事件です。