2024年に迫っているビットコインの半減期に向けて、ビットコインマイニングへの影響を考察するシリーズの後編です。前編と中編では背景やマイニング事業者への影響などについて考察していますので、そちらに興味がある方は前編や中編からお読みいただくと理解が深まると思います。
後編では中編の真逆の意見を紹介し、実際のところはどうなるのかを考えてみましょう。
ビットコインの半減期で強者独占が進む?
ビットコインの半減期では、それまで6.25BTCだった1ブロックあたりのマイニング報酬が、半分の3.125BTCになります。単純に半分なのでそれに旨味を感じなくなった事業者、そもそも暗号資産やビットコインの前途にあまり良いイメージを持っていない事業者などは撤退の可能性があるため、ハッシュレートの低下が予想されると述べました。
しかしその一方で、半減期を迎えるとさらに強者の独占が進むのではないかとする意見もあります。その根拠は、2つあります。
①事業者の生き残りをかけた競争が激化する
半減期によってマイニング報酬が半分になることは、マイニング事業者にとっては重大な問題です。事業から撤退するか、生き残りをかけて市場で引き続き戦うか、どちらかの選択が迫られます。撤退を選択する事業者が多ければ業界の寡占状態は改善されると思いますが、生き残りをかける事業者が多ければ競争はさらに激化します。何せ半分になってしまった報酬を奪い合うのですから、その競争は想像に難くありません。
かくして、資金力や規模感のある事業者がさらなる投資によって強い事業者を目指す可能性が高く、そんな事業者が増えると業界の強者独占がさらに進むかもしれません。
②個人マイナーの撤退が相次ぐ
半減期によってマイニング報酬が半分になると、撤退を検討するのはマイニング事業者だけではないでしょう。個人レベルでマイニングをしている人たちの中にも割が合わないと感じる人が出てきても不思議ではありません。特に個人レベルのマイナーはマイニングマシン1台で参戦している人も多く、報酬の半減が直撃しやすい立ち位置にあります。しかも、折からのエネルギー価格高騰によって世界各国の電気代は高騰しています。電気代は高騰する、報酬は半減するということで、個人マイナーが撤退を検討する余地は大いにあります。
半減期の影響が出るのは翌年?
これまで、ビットコインは3回にわたる半減期を迎えてきました。それらの半減期があった後で起きたビットコインの値動きには少々共通する部分があります。そこまで明確な共通点ではないものの、ビットコインの半減期の翌年に相場が緩やかに上昇する動きが見られ、これが一種のアノマリーのようになっています。アノマリーとはテクニカルやファンダメンタルズなどといった相場の理論では説明ができないものの、習慣的に観測される値動きのことです。「過去3回同じ動きをしたのだから、今回もそうなるだろう」というのが、ビットコイン半減期のアノマリーです。アノマリーに根拠はありませんが、それを考慮して投資行動をとる投資家が多くなればなるほどそれが多数決となり、アノマリーが現実になります。
2024年のビットコイン半減期も、その翌年からの緩やかな上昇の端緒となるかもしれません。
ビットコインの「枯渇」により、長期上昇トレンドに?
ビットコインは2,100万枚の総発行枚数に迫ってきており、すでに1,900万枚がマイニング報酬として発行されています。2040年頃には全枚数が発行されるといわれていますが、マイニング競争が激化してビットコインの利用シーンが多くなると2,100万枚到達が早まるかもしれません。
2,100万枚の上限に到達するとそれ以上のビットコインは発行されず、希少性が増します。そのことによってビットコイン価格は長期的に上昇すると見る投資家が多く、その将来性に目を向けてマイニング競争に参戦するマイナーもいるわけです。
強弱入り乱れた説が飛び交う、ビットコインの2024年問題。どちらになるかは分かりませんが、ここは勝負どころと見た人は、個人マイナーとして参戦する価値はあると思います。