ビットコインのマイニングは競争が激しく、高性能マイニングマシンが世界中で稼働しているせいで、それが環境負荷を高めている・・・という話はずいぶん前からあります。
確かに事実ではあるのですが、その後業界のさまざまな努力によって、現実は一変していることをご存じでしょうか。
今はビットコインマイニングは環境性能の高いビジネスに様変わりしているので、その最新事情をお届けしたいと思います。
一番の悪者は送電ロスだった
一時はビットコインマイニングが世界で最も電力を消費するビジネスだと言われていましたが、実はそれよりも電力を浪費している悪者がいます。それは、送電ロスです。
送電ロスとは、発電所から電力消費地まで送電をする際に失われる電力のことです。送電ロスは日本でも顕著で、特に遠隔地にある原子力発電所から大都市に送電をする際に多く発生しています。もっと発電所と消費地が近ければ送電ロスが少なくなり、今よりもっと電気代を安くできるはずです。
世界全体を見ると、実はこの送電ロスが最も深刻です。ビットコインマイニングなど足元にも及ばない規模で送電ロスが発生しているので、本当に電力消費の環境負荷を論じるのであれば、送電ロスが槍玉に挙がるべきでしょう。
再生可能エネルギーの余剰電力をうまく利用
再生可能エネルギーの中でも主力となるのは、太陽光発電と風力発電です。これらは無限にあるエネルギーを活用できるので夢のエネルギーですが、最大のネックは発電の偏りです。太陽光発電は昼間の明るい時間帯しか発電しませんし、風力発電も発電ができるのは風が吹いている時だけです。
自然の気まぐれ次第なので、これらの再生可能エネルギーは多く発電できる時と全く発電しないタイミングがあり、これがムラになります。例えば太陽光発電は昼間の明るい時間帯に各地の太陽光発電所が一斉に発電をするため、電力が余ります。皮肉なことに、太陽光発電が普及すればするほど余剰電力が発生してしまい、電力会社は出力抑制といって電力を購入できなくなります。電力の需要が高まる時間帯がある一方で、余っている時間帯は電力を捨てているわけです。
出力抑制で売電が止まると再生可能エネルギーの事業者は売り上げが減るため、今後再生可能エネルギーへの投資意欲が細くなってしまう可能性もあります。そこで救世主となっているのが、ビットコインマイニングです。今や、世界各地でビットコインマイナーが余剰電力の買い手となって再生可能エネルギー事業者の売上を支えています。再生可能エネルギー事業者は潤い、さらなる投資につながることも期待できます。
このようにビットコインマイニングが今や環境ビジネスを後押ししているということは、知っておいていただきたい事実のひとつです。