適した土地がない!系統用蓄電池の市場が拡大する一方で土地不足が問題になっている

石橋大右

2025.9.21 エネルギー問題

適した土地がない!系統用蓄電池の市場が拡大する一方で土地不足が問題になっている

こんにちは、石橋です。
ますます注目度が高まっている系統用蓄電池について、私が代表を務める和上ホールディングスにも多くの引き合いをいただいています。
系統用蓄電池の意義を含めて、このように注目が集まって市場が拡大するのは望ましいことなんですが、その一方で新たな問題が生じています。

その問題とは、系統用蓄電池を設置したいと思っても、その条件を満たした土地がなかなかないことです。系統用蓄電池を設置して稼働させるには、主に以下のような条件を満たしている必要があります。

  • 少なくとも100坪以上の広さ
  • 近くに送電線などがあって電力系統に接続しやすい
  • 周辺に民家などがない
  • 正方形もしくはそれに近い形の土地
  • 傾斜が2%以下

などなど、細かい条件を挙げるとまだまだあります。
系統用蓄電池を事業化するためにはある程度の規模感が必要になるため、あまり狭い土地だと蓄電池を設置することはできても事業の収益性が下がってしまいます。
また、蓄電池の中でも系統用蓄電池は電力系統に接続していないと意味がないため、近くに送電線があるなど、「つなぎやすい」ことが重要です。仮に送電線が近くになかったとしても工事によって接続することはできると思いますが、そのための工事費がどんどん高くなっていくと、事業としての現実味が薄れてしまいます。
そして、周辺に民家などがないことも重要です。蓄電池は夜中に稼働することもあるわけですが、その際の音がずっと続くとなると近くに誰かがいることがトラブルのもとになってしまいます。一般的に系統用蓄電池は山奥や過疎地の周りに何もないような場所に設置しますが、テレビ番組の「ポツンと一軒家」のように、例外的に人が住んでいることもあるため、土地選びの際にはその土地だけの条件だけではなく周辺環境の十分な調査も必要です。
系統用蓄電池は太陽光発電と同様に、遊休地や郊外の土地を有効活用できる数少ない有望な手段として注目されているわけですが、土地であれば何でもいいわけではないところに難しさがあります。

私たち和上ホールディングスにも系統蓄電池に関するたくさんのご相談やオファーをいただいています。「系統用蓄電池の投資を始めたい」というものはもちろん、逆に「うちの土地を活用できないか」という土地目線のご相談もあります。
太陽光発電でも同様ですが、これまで活用する方法がなくて悩んでいた土地であっても、これなら活用できるのではないかということで期待を寄せる土地オーナーは多く、ご相談にもとづいて土地の要件を調査させていただくこともあります。
もちろん、今も土地活用のご相談は大歓迎ですので、所有されている土地や、土地を活用したい人がいる、といったご相談はいつでもお寄せください。系統用蓄電池、太陽光発電のプロとして活用できるかどうかの診断や、活用する場合の具体的なプランを提案させていただきます。

こうした呼びかけをしていても、依然として系統用蓄電池の候補地選びには苦労させられています。
そこで、私なりにこの問題をすれば打開できるかを考えてみました。問題の打開には、短期的目線と、長期的目線があります。

まずは、短期的な目線。
系統用蓄電池を土地活用の手段として考えると、どうしても他に活用の方法がなかった遊休地などを連想します。それだとなかなか好適地がないため、そうではなくすでに何かの用途に使っていた土地をもっと再利用するというのはアリだと思います。
休耕地に加えて、工場などの作業所があった跡地、倒産や廃業をした企業の社屋や敷地、閉鎖された鉱山などなど。こうした土地はかつて使用していたことがあるため、送電線が近くにある可能性も高いでしょう。しかし今では人口減少や企業の撤退などによって遊休地となってしまった・・・そんな土地であれば比較的条件を満たしやすいと思います。
これは余談ですが、海外には浮体式といって水に浮かべて運用する系統用蓄電池施設もあるそうです。
もうひとつ私が推奨しているのは、既存の再生可能エネルギー施設に併設する考え方です。太陽光発電所や風力発電所は広い敷地に設置することが多く、発電所の敷地内に空きスペースを確保できるケースもあります。また、過疎地などに設置されている発電所であれば周辺にも遊休地がある可能性が高いでしょう。
こうした発電施設は系統に接続されているため、既存の送電線が近くにある可能性が高く、「近くに送電線がない」という問題をクリアしやすいでしょう。
こうした発想の転換を進めることにより、用地確保の難航というボトルネックを解消できる可能性があります。

もうひとつの長期的目線は、主に技術革新です。
蓄電池の技術革新によって、同じ体積であってもより多くの電力を蓄えられるようにすれば、これまで候補地ではなかったような土地も活用できる道が開かれます。
そして、蓄電池の高層化。現在はコンテナサイズの蓄電池を横に並べるという設置方法が一般的ですが、上に積みあげて設置できるように技術革新が進めば、同じく敷地が広くない土地であっても設置できる余地が生まれます。

電力の安定供給は、自前の天然資源を持たない日本にとって非常に重要な課題です。
しかも今後はデータセンターやAIサービスの拡大によって、さらなる電力需要が見込まれています。それに貢献できる有望なビジネスとして系統用蓄電池が登場し、普及が進んでいます。この循環はエネルギー安全保障の観点からも望ましいことなので、土地の問題がボトルネックになっている現状をどうにかしたいと常に考えています。
今後も土地探しに奔走し、系統用蓄電池に有望性を感じている皆様の期待に応えられるよう、私たちにできる最大限の努力をしていきたいと思います。

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