「バイナンス」というと、世界最大の暗号資産取引所として知られるメジャーな存在です。日本向けのサービスを公式に行っているわけではないのですが、日本語サービスがあるので日本人投資家も多く取引をしており、実質的に日本進出を果たしている取引所といって良いでしょう。
世界各国が相次いで「バイナンス」に警告
2021年の6月25日、金融庁がバイナンスに警告を発しました。日本で金融取引サービスを提供するには金融庁の強化が必要ですが、無許可で実質的なサービスを提供しているのはけしからん、というわけです。
これだけなら、相変わらずの規制大国ニッポンという話で終わってしまう可能性もあるのですが、これとほとんど同じ内容の警告が翌日にはイギリスでも「バイナンス」に対して発せられました。さらにその翌日には、カナダでも別の暗号資産取引所に対して同様の警告が出ました。これを受けて、「バイナンス」は警告を発したカナダのオンタリオ州でのサービスを中止しました。
なぜ「バイナンス」が目の敵にされるのか
この問題は、「バイナンス」がそもそもグレーな事業を展開してきたことに起因します。暗号資産は特定の国からの規制を受けず、グローバルに広がる存在です。もちろん特定の国の意向によって暗号資産の価格を操作したりすることもできず、管理者のいない巨大なマーケットがただ広がり続けているのが、現在の暗号資産市場です。
このことに世界各国の金融当局が良く思っていないことは、すでにご存じのとおりです。エルサルバドルのようにビットコインを法定通貨にしたような事例もありますが、これは自国通貨の信用がなく、元から米ドルが法定通貨のように流通している国であるという事情もあります。また、経済的な小国ほどトリッキーなことをやって耳目を集める傾向も無関係ではないでしょう。
規制逃れ、脱法行為とも思われる手法で「バイナンス」などのグローバルな暗号資産取引所は成長し、今や主要国の金融当局からも無視できない存在になっているわけです。
しかも、その国が「バイナンス」などへのアクセスを遮断してしまったとしても、VPNを使うなど抜け道はいくらでもあります。目の敵になってきているものの、それを規制したり潰す決定的な方法がないことでますます敵視されているというのが、今の状況でしょう。
「バイナンス」が出禁になると、投資家はどうなる?
タックスヘイヴンのように金融活動への規制が緩い国や地域に本拠地を置いて、そこから規制が厳しいものの本来の市場にしたい国々に向けてサービスを提供するという「バイナンス」のようなビジネスモデルは、他にもたくさんあります。そして、それらのサービスは総じて良くは思われておらず、何らかの形で規制を加えることが検討されています。
それでは、このまま「バイナンス」がどんどん規制によって出禁になるようになると、何が起きるでしょうか。
そもそも金融当局がこうした暗号資産取引所に対して警告を発しているのは、「面白くないから」というだけではありません。レバレッジをかけた暗号資産取引に対するリスクが十分に説明されていない状態で規制逃れをしながら投資家にアプローチをするのは、投資家に大損をさせるリスクがあります。自国の投資家に不利益なことを看過できないとの思惑もあるので当局による「バイナンス」への規制は必ずしも間違ったことともいえません。
「大きなお世話」と思うかもしれませんが、投資家を保護しようとするベクトルでもあるのです。
「バイナンス」利用者は、同社だけのコインに要注意
今すぐに「バイナンス」が日本から締め出されることはないと思いますが、その方向に進んでいることは確かです。外資系の会社だけに日本ではやりにくいと判断したらあっさりと手を引く可能性があるので、投資家はそのXデーに備えておくべきでしょう。外資系企業は日本に特に思い入れがないので、そうなると投資家の利益も何もないでしょうし。
それに備えるために最も意識しておきたいのは、「バイナンス」だけで取引可能なコインです。引き続き英語のサービスで取引はできると思いますが、その時に日本人に不利な環境になってしまうことも考えられるので、「バイナンス」でしか取り扱っていないコインを保有している人は、今の売っておくか別の国内取引所でも取引可能に替えておくなどの対策は必要になるかもしれません。