暗号資産のマイニングは、暗号資産投資の中でも手堅いインカム収入です。最初に仕組みを作ってしまえばあとは基本的に放置していても自動的にお金を稼ぎだしてくれるとあって世界的に多くのマイナーがマイニングに参入しています。もちろん日本国内にも多くのマイナーがいるわけですが、日本国内でマイニングビジネスに参入し、そこで利益を上げると税金との関わりが避けられません。
「どうせ暗号資産での取引だし、税務署もよくわかっていないだろう」とばかりに無申告を決め込んでいる人も少なくありませんが、これが果たして通用するのかどうかについても関心がおありの方は多いと思います。
そこで今回の前編と後編に分けて、マイニング収入と税金の関係についてこれからマイニングを始めようとお考えの方も知っておくべき知識をまとめました。
確定申告が必要になるのは年間利益20万円以上
最初に、マイニング収入がある人で確定申告の義務がある人の定義から解説しましょう。年間のマイニング収入が20万円以上ある人は、確定申告の必要があります。税務上、マイニング収入は雑所得に分類されます。ここでまず、雑所得とは何かという定義をご覧いただきましょう。雑所得とは、以下の所得に該当しない所得のことをいいます。
・利子所得
・配当所得
・不動産所得
・事業所得
・給与所得
・退職所得
・山林所得
・譲渡所得
・一時所得
おおむねそれぞれの名称からどんな所得なのか想像がつくかと思います。確かにマイニングによる収入は上記のどれにも該当しないので、雑所得となります。雑所得が年間で20万円を超えると確定申告と納税の義務が生じますが、逆に雑所得が20万円未満の場合は申告不要です。注意したいのは、マイニング収入だけでなく他の雑所得がある場合、雑所得全部を合計して20万円未満であるかどうかを判断する必要がある点です。
ちなみにマイニング収入の他に雑所得に分類されるものには、ネットショップを運営して得られた収入、年金収入、印税収入などが挙げられます。これら以外にも個人的にお金を貸し、その利息を受け取った場合も雑所得になります。
こうして見ると雑所得の範囲は意外に広いので、マイニング収入以外にも該当するものがないかをしっかり確認するようにしてください。
マイニング収入の課税対象額を計算する方法
雑所得に対する課税なので、基本的な計算式は所得税の課税対象になる他の収入と同じです。その計算式は、以下のとおりです。
マイニング収入 ― 経費 = 所得額
マイニングで収入を得るためには、さまざまな必要経費が発生しているはずです。マイニングに使用するマシンの購入費や電気代はその代表格ですが、それ以外にもマイニングビジネスに参入するために専門書籍を買ったのであればそれも経費になりますし、マシンの購入や勉強のために交通費を使ったのであれば、それも経費として計上できます。
このようにマイニングビジネスを始めて維持するために要した費用はほとんどが経費として認められるため、年間のマイニング収入から経費を差し引き、それをマイニングによる所得額とします。
収入の受け取り方によって計算方法が異なる
暗号資産のマイニングでは、報酬をどの通貨で受け取るかが一定ではありません。ビットコインのマイニングをしている場合であれば報酬はビットコインで支払われますが、マイニングの代行業者などに参加している場合はドルや円といった法定通貨で支払われる場合もあります。どんな形によって支払われるかによって税金の扱いが異なるので、これも解説しておきたいと思います。
日本円で受け取った場合は、その日本円の額面がそのまま収入額となります。そこから経費を差し引けば所得額を求められます。
そうではなく暗号資産や外国通貨で支払われた場合は、その報酬が日本円でどれだけの価値を持っているのかを確定する必要があります。
暗号資産で報酬を受け取った場合は、報酬が発生して支払いを受けた時点の時価で算出します。外国通貨で受け取った場合も同様で、報酬を受け取った時点の日本円に対するレートを用いて収入額を算出します。
なお、暗号資産で報酬を受け取った場合、その暗号資産を日本円に両替をしたらそこで収入があったことが確定するという「説」がありますが、これは誤りです。会計上の収入が発生するのは暗号資産であっても支払われた日であり、それを日本円に両替せず持ち続けていたとしても報酬を受け取った時点で収入があったと見なされます。
マイニング収入の税率は何%?
もう一点、マイニングで得た収入に対する税率も気になるところでしょう。雑所得といっても所得の一種なので、他の所得と合算した課税対象所得全額に対して、以下の一覧表の税率を当てはめます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
例えば、サラリーマンの方で本業の所得額が500万円でマイニング収入が年間で50万円ある場合は、合計の所得額は550万円です。上記の一覧表に当てはめると3番目の「3,300,000円 から 6,949,000円まで」に該当するため、税率は20%です。
550万円の総所得に対する所得税額は、以下のように求めます。
550万円 × 20% - 42万7,500円 = 67万2,500円
上記の計算式で42万7,500円を差し引いたのは控除額で、上記の一覧表の3番目に記載されている数値です。このように所得税額は、総所得額に税率を掛け、そこから控除額を差し引いて求めます。
前編ではマイニング収入と税金の関係について、基礎的な知識について解説しました。後編ではマイニング収入が年間20万円を超えているのにそれを放置するとどうなるのか、本当にばれないのかといった点について解説したいと思います。