2022年11月11日に破産の申請をした暗号資産交換業大手のFTX。前編ではことの経緯を解説しましたので、後編ではその影響によってすでに起きていること、そして今後起こり得ることについて解説します。
暴落した暗号資産相場が回復していない
FTX破綻の噂が流れ始めた頃から暗号資産相場は下落を続けており、11月11日の破産申請でその下落は一気に加速しました。しかしそれがセリングクライマックス(売りのピーク)とはならず、ビットコインだけを見ても11月14日一段安、さらに11月22日にも2番底のような下落を見せています。一時期は700万円を超えていたビットコインが、回復しても200万円台がやっとです。600万円、700万円といった価格でビットコインを買った人にとっては、きわめて厳しい相場展開です。
イーサリアムなど他の暗号資産についても同様なので、今後よほど大きな材料が出てこない限りは、一気に相場が回復するというのは期待薄です。
レンディングサービス大手のBlockFiも連鎖倒産
暗号資産には関連するサービスが実にたくさんありますが、その中に暗号資産の貸し借りをすることができるレンディングというサービスがあります。そのレンディングサービスを提供していた大手であるBlockFi(ブロックファイ)が、FTXに続いて裁判所に破産の申請をしました。タイミングから見ても、FTXの破綻に関連した連鎖倒産であることは明白です。ニュース報道によると、債権者数は10万人以上にのぼるそうです。ただしBlockFiについては十分な流動資産があり、それをもとに再建するとアナウンスされているため、FTXのように破産してそのまま廃業ということではなさそうです。
少なくともこの点においては不正の香りがあまり漂ってこないので、債権者は安心していることと思います。ここでBlockFiにまで不正の事実が明るみに出るようなことがあれば、暗号資産への信用は地に堕ちていたことでしょう。
今後も連鎖倒産が起きるか
FTXは暗号資産の交換業ですが、BlockFiは貸付業です。つまり暗号資産業界の「銀行」のような企業です。暗号資産業界ではこうした金融業に近い事業を展開している企業からの融資や資金調達を前提に事業を営んでいる事業者もいるため、BlockFiからの資金調達を見込んでいた事業者にとっては痛手となるでしょう。資金繰りが悪化している状態でBlockFiが最後の望みだったとすると、こうした事業者にも破綻のリスクがあります。
これまで「イケイケ」に近い形で存在感を高めてきた暗号資産ですが、FTXの破綻はそれが正念場に差し掛かっていることを強く示しています。
余談:FTXの債権者が大谷翔平らを訴えていますが
ところで余談ですが、FTXの破綻によって経済的な被害を被るであろう債権者や口座保有者の中に、大谷翔平や大坂なおみらを訴えている人たちがいます。それ以外にも被告人にはNFLのスター選手であるトム・ブレイディなども含まれています。
彼らはFTXの「グローバル・アンバサダー」でした。つまり広告塔として起用された人たちなのですが、この「グローバル・アンバサダー」がいなければ自分はFTXにお金を投じることはなかったので、広告塔も連帯責任だ、というわけです。
もちろんこの裁判に勝てるとは思っていないでしょうが、さすがにこれは論理に無理がありすぎます。それだけ債権者たちは何としてもお金を取り戻そうと必死なのが伝わってきます。