2023年は暗号資産にとって冬の時代だとする見方が大勢ですが、実はそうとも言い切れない動きもあります。その動きの発信地になっているのが、ウクライナへの侵略戦争で世界中から非難を浴びているロシアです。
ロシアの中央銀行がクロスボーダー決済に暗号資産を採用するかもしれないとの報道が流れ、もしこれが現実になると暗号資産業界におけるロシアの立ち位置が大きく変化することになります。
この報道が持つ意味と、ロシアの本音を考察してみたいと思います。
ロシア中央銀行が暗号資産の取り扱いを転換?
暗号資産は、世界各国の政府や通貨当局から忌み嫌われている部分があります。自国の通貨よりも権威のある世界通貨が流通することは面白くありませんし、それに加えてマネーロンダリングや詐欺などの暗黒面がどうしても付きまとうからです。
2023年3月には先進主要国であるG7が暗号資産の規制強化を促進することで合意したばかりです。これだけ逆風が吹いている暗号資産を、ロシアは積極的に利用しようとしています。もちろんロシアも本音としては暗号資産には冷淡になりたいところだと思いますが、昨今の事情がそれを許さないようです。
ロシアが置かれている状況と暗号資産
ロシアによるウクライナへの侵略戦争は、世界中から強い非難を浴びています。非難だけでなく、史上最強クラスの経済制裁をG7から受けているため、ロシア経済は欧米や日本などとの経済的なアクセスがほとんどできない状態になっています。世界の金融マーケットからも締め出されているので、ロシアの経済は絶海の孤島にあるのと同じような状態です。
世界のクロスボーダー決済では、基軸通貨である米ドルが用いられています。一部ではユーロや日本円なども用いられていますが、これらもすべてG7の通貨です。ロシアはこうした通貨によるクロスボーダー決済から締め出されているので、実質的に外国からモノを買えない状態にあります。
しかし、ロシア国内には資源以外に有力な産業はありません。生活用品ですら外国からの輸入に依存しているので、資源で稼いだ外貨がなければロシアは干上がってしまいます。そこで目を付けたのが、暗号資産です。
暗号資産であれば匿名性の高い取引ができますし、基軸通貨を用いなくても貿易ができます。そこで経済制裁の網の目をかいくぐるようにロシアは暗号資産でのクロスボーダー決済を増大させているわけです。
これまでは民間レベルで行われていたことですが、それがいよいよ中央銀行にまで波及したというわけです。
ロシアが暗号資産をクロスボーダー決済に採用すると、どうなるか
まだまだロシアの暗号資産決済はそこまで本格的なものではありませんが、現在の状況が続くと中央銀行が公式にそれを認めるようになるでしょう。そうなると、世界各国で四面楚歌になっている暗号資産に新しい風が吹きます。
侵略戦争が引き金になっているので決して喜ばしいことではありませんが、冬の時代といわれている暗号資産の需要が急回復し、ビットコインなど主要な暗号資産の市場価値が高くなる可能性は大いにあります。
ハッシュレートが低下してマイニングの競争が落ち着いている今、マイニングに参入すると暗号資産の思わぬ値上がりという恩恵を受けられることがあるかもしれません。