太陽光発電をはじめとする再生可能エネルギーは、基本的に自然由来のエネルギーです。自然は気まぐれなもので、再生可能エネルギーはその自然の気まぐれに付き合わなければならないところがネックとなっています。
例えば、太陽光発電は日光が十分ある昼間しか発電をしませんし、昼間であっても天候が悪ければ発電量がぐっと減ってしまいます。
その一方で天候に恵まれている日は太陽光発電による発電量が一気に増えるため、今度は電力余りになることがあります。
こうした気まぐれを、暗号資産のマイニングで解決しようとする企業が現れました。これはとてもユニークな取り組みなので、ここで紹介したいと思います。
再生可能エネルギーの出力抑制をどう解決するか
冒頭で述べたように、再生可能エネルギーには自然特有の気まぐれさがあります。太陽光発電以外にも、風力発電は風がなければ発電をしません。逆に風が強すぎると風車を破損する恐れがあるため、風が強すぎる場所には設置できません。こうした気まぐれさがあるうちは、再生可能エネルギーを電力の中枢に据えるのは難しいでしょう。
環境意識や経済性への評価が高まり、再生可能エネルギーのなかでも太陽光発電はどんどん普及が進んでいます。このこと自体は喜ばしいと思いますが、普及しすぎたゆえに一部の地域では電力会社による出力抑制が起きています。
出力抑制とは電力会社が電力を買い取らず、太陽光発電所からの送電を受け取らない現象のことです。せっかく発電をしたのに買い取ってもらえず、電力を捨てている状態です。
これはとても勿体ないということで、出力抑制をいかに回避して電力を有効活用するかが課題となっています。
暗号資産のマイニングが「優等生」に
太陽光発電による余剰電力は、蓄電する方法があります。近年では家庭用の蓄電池も普及が進んでいるので、自宅で発電をして余った分は蓄電、夜間や天候の悪い日に蓄電池の電力を使うことで電力の地産地消が可能になるというわけです。太陽光発電による電力を全部自宅で使い切るモデルのことは自家消費モデルと呼ばれ、電気代高騰の影響もあって注目を集めています。
これは家庭レベルの話で、メガソーラーなど大規模な太陽光発電所を設置している場合、余剰電力も莫大なものになるため、蓄電池に溜めておくというのは現実的ではありません。
そこで登場したのが、アジャイルエナジーのビジネスモデルです。このアジャイルエナジーとは東京電力のグループ企業で、ベンチャー企業のような位置づけで設立されました。
同社が目指しているのは、再生可能エネルギーによる余剰電力の有効活用です。既存の電力会社が買い取れない分も含めて余剰電力を買い取り、それを暗号資産のマイニングをはじめとする莫大なリソースを要するコンピューティングに活用するというものです。暗号資産のマイニングが莫大なリソースを必要とするのは当コラムでも述べてきていますが、同社はマイニング以外にもCGのレンダリングや生成AI、ゲノム解析などにも活用すると発表しています。
これが実現すると、暗号資産のマイニングが環境と両立した「優等生」になり得ることも期待できます。すでにこうした取り組みは海外で始まっていますが、日本で本格的な動きが始まることに大いに期待したいと思います。