暗号資産のマイニングというと、ブロックチェーンを維持するための台帳記録に参加し、その報酬として暗号資産をもらうという形が一般的です。大半の暗号資産でマイニングが可能なので、売買で利益を狙うことに加えて暗号資産の稼ぎ方として広く知られています。
そのため「マイニングで稼ぐ」というとマイニングに使用する高速マシンを購入して、それをブロックチェーンの台帳記録に参加させるというビジネスモデルが成立しています。和上サイクルにも、こうしたマイニングに利用できるマシンの販売を手掛けています。
さて、今回から2回にわたってご紹介するのは、マイニングではあっても「流動性マイニング」です。またの名を「イールドファーミング」ともいいます。この言葉自体初めて聞いたという方もおられると思いますので、新しい暗号資産マイニングの概念として分かりやすく解説していきたいと思います。
流動性マイニング(イールドファーミング)とは
暗号資産のマイニングを平たく表現すると、「暗号資産の維持に協力すること」です。ブロックチェーンに記録する作業に参加し、その有効性を証明するのですから、ビットコインなど暗号資産はマイニングをする人がいなければ存在できません。その存在を維持するために協力して得られる報酬がマイナー(マイニングをする人)の目的で、その報酬である暗号資産が高騰したことでマイニングの世界的なブームが起きました。
今回解説する流動性マイニングを先ほどの表現に置き換えてみると「暗号資産を用いた商取引の流動性を確保するのに協力すること」となります。暗号資産の貸し借りをするレンディングというサービスがありますが、例えばこのレンディングでやり取りされる暗号資産を出資して預けおくことで流動性の確保に協力することができます。するとレンディングのための資金を提供した人にはその対価として金利が支払われます。このように流動性を確保するために協力をして報酬を狙うことを、流動性マイニングといいます。なお、流動性マイニングはまたの名を「イールドファーミング」ともいいます。
流動性マイニングを理解するために必要な3つの知識
流動性マイニングを理解するには、その舞台となるDeFiなど分散型金融の仕組みを理解しておく必要があります。そこで重要な3つの知識について解説しましょう。
①DeFi(分散型金融)
暗号資産は分散型のネットワークに存在する財産的価値としてすでに認知され、流通しています。このような分散型ネットワークの仕組みを金融サービスに応用したのが、DeFi(分散型金融)です。金融といえば銀行ですが、銀行のように中央集権的な会社の機能があるわけではなく、分散型ネットワークの中で暗号資産が流通し、融通されています。DeFiの多くは最初に開発した人や団体はいるものの、その後は特定の人や企業が管理することなく運営されるところに大きな特徴があります。
②DEX(分散型取引所)
次に、DEXについても解説しておきましょう。DEXとは分散型の暗号資産取引所のことです。暗号資産の取引所というと日本国内ではbitFlyer(ビットフライヤー)やCoincheck(コインチェック)などが有名です。海外にも大手取引所として何かと話題になるBinance(バイナンス)やHuobi(フオビ)などがあります。
これらはいずれも運営企業があり、その企業が利益を追求するために運営している暗号資産取引所です。それぞれの取引所には中央集権的なサーバーや管理機構があります。こうした暗号資産取引所はCEXと呼ばれています。
それに対してDEXは中央集権的なサーバーがなく、暗号資産らしく分散型のネットワークで運営されている取引所です。暗号資産の売りと買いそれぞれのオーダーをマッチングする仕組みが機能し、その取引はすべてブロックチェーンに記録されます。特定の企業が営利目的で運営しているわけではないので、DEXは手数料がとても安いなどのメリットがあります。
③暗号資産レンディング
暗号資産の貸し借りも、DeFiのサービスとして提供されています。分散型ネットワーク上で資金を借りたい人と貸したい人がマッチングをして、それが成立したら実際に暗号資産の受け渡しが行われます。しかし、たくさんの暗号資産がある中で特定の暗号資産が常に貸し借り成立するとは限らず、一定量の暗号資産をプールしておいてそれを使って資金の融通をするのが効率的です。このように暗号資産をプールしておくこと、そして暗号資産をプールしておくことで報酬をもらうことを流動性マイニング(イールドファーミング)といいます。
流動性マイニングの魅力
流動性マイニングの魅力は、なんといっても高利回りであることです。需給のバランスによって自動的に金利が決まるのですが、需給の状況によっては数十パーセントや数百パーセントという途方もない金利になることがあります。
さらに暗号資産取引の流動性マイニングをする場合、そのDEXが発行しているトークンがもらえることがあります。そのトークン自体も暗号資産なので、対象のトークンが発行されているDEXの人気が高まるとトークンの人気も高まり、価格が高騰します。後編で述べる予定ですが、世界的な人気DEXであるUniswapではUNIというトークンが発行されており、このUNIの価格高騰によって多大な利益を上げた流動性マイナーがいます。
それでは、流動性マイニングについての詳細は、後編に続きます。