2020年4月28日、ついにドル円相場が20年ぶりに130円を突破しました。急激な円安が進行している中でも上方ブレイクなので投資家からはそれほど驚きはなかったようですが、為替は世界最大の金融マーケットであるため、ハードカレンシーでこれだけ急激な変動があると他の金融マーケットにも影響を及ぼしてしまいます。
今回は、円安が暗号資産に与える影響について考察してみたいと思います。
2022年の円安は異常なスピードで進行している
2022年の超円安が130円台に向かうまでには、2段階の円安がありました。ドル円チャーを見ると、その2段階が顕著に表れています。
1段階目は、2021年の9月です。それまで109円で推移していたドル円相場が一気に114円台となり、5円の円安です。コロナ禍からいち早く経済が回復しているということで注目されたアメリカ経済が好感され、この頃からドル高の傾向が始まっていました。
その後114円台でしばらく推移していたのですが、そこから一気に超円安が始まったのが2022年3月です。ウクライナ戦争によって相場がリスクオフになり、その流れで一度は円高になったのですが、そのあとはご存じのとおりの超円安です。わずか2か月で16円もの円安が進んだというのは、おそらく歴史的な出来事です。
筆者はドル円のトレードはしていませんが、他のクロス円通貨で外貨売り円買いのポジションを保有しているので、この超円安ではかなりの含み損を食らいました。
あまり論じられない、為替と暗号資産の相関性
それでは話を本題に進めていきましょう。これだけの超円安が進行すると、ビットコインやイーサリアムなど主要な暗号資産の価格にも何らかの影響はあるのでしょうか。
結論から申し上げると、円安と暗号資産価格に直接の関係はありません。円安が進行している間にビットコインやイーサリアムが極端な値動きをしたかというと、そんなことはありません。
円とは直接の相関性はないものの、ドルと暗号資産には一定の相関性があるといわれています。特にビットコインとドルの交換レートである「BTC/USD」は法定通貨と暗号資産をつなぐ最も取引量の多い通貨ペアなので、ドルが売られてビットコインが買われる、逆にビットコインが売られてドルが買われるといった関係性があります。これは取引量が多い通貨ペアであるがゆえのことです。そのためドルとビットコインには逆相関があるといわれており、ドル高の時はビットコインが安くなり、逆にビットコインが高い時はドル安になりやすくなります。
暗号資産同士の相関性に注目
暗号資産と法定通貨の間にはそれほど相関性が多いわけではなく、ドルとビットコインといったように、一部のメジャーな通貨同士の逆相関がみられる程度です。しかし、暗号資産同士の相関性はとても高く、主要な暗号資産はことごとくビットコインの影響を受けていると言って良いでしょう。
時価総額の純でいえばビットコイン、イーサリアムに続いてテザーが3位にランクインしています。このテザーはステーブルコインといってドルと連動するように運用されている暗号資産なので、ドル円チャートとほぼ同じチャートパターンを描いています。
暗号資産の世界ではこのようにステーブルコインが実質的にドルと同一視されているので、テザーのティッカーシンボル(市場での呼び名)も「USDT」です。
近年では法定通貨と暗号資産の取引よりも暗号資産同士の取引でステーブルコインを使うことで法定通貨との疑似的な取引をする動きが広がっています。そのため、法定通貨との相関性を観察するには「BTC/USDT」や「ETH/USDT」といったように主要な暗号資産とテザーの通貨ペアを観察した方が相関性を見つけやすいかもしれません。