仮想通貨の暗号化や記帳など、維持管理するシステムであるマイニングでは、膨大な取引情報の計算を行うことからマイニングの処理を行うマイニングマシンには高スペックのPCを使用する必要があり、高スペックのPCフル稼働することから電力消費量が大きくなります。
マイニングは最初に取引情報をブロックチェーンに書き込んだ人に対して報酬が払われます。そのため誰よりも早く計算を行うためにマイニングマシンには高性能の機能が求められるのです。
PCの電力消費量は、PCのハードウェアやOSの種類などによって大きく異なりますが、一般家庭で使用されているデスクトップPCの場合、電力消費は大体50〜150W、ノートPCの場合は20〜30Wくらいになります。PCの消費電力量は家庭内で使用される電力の数パーセント程度で、PCは電化製品の中でも省エネな電気機器なのです。しかし、ワークステーションやスーパーコンピューターになると、消費電力はデスクトップPC、ノートPCに比べて何十倍もの電力量になります。例えばビットコインマイニング専用のASIC(集積回路)のひとつであるBitmainのAntminer S9(14TH/s)の消費電力は1,372Wとなります。
仮想通貨の取引記録は膨大です。そのためマイニングではワークステーションやスーパーコンピューター、またはそれに準ずる高性能のマイニングマシンを24時間フル稼働させて計算を行います。
ここまで高性能のマシンをフル稼働させれば、それだけマシンから発生する熱も相当なものになります。マイニングマシンをフル稼働していれば、冬場は暖房の代わりになるといわれるくらいです。PCは精密機械のため、温度が高いと故障したり、様々なトラブルが発生するようになります。そのため多数のマイニングマシンを設置する施設では、温度を一定の温度に保つための冷房装置も必要になります。
マイニングマシンを多数使用するマイニングファームでは、PCの消費電力に加えて冷房の消費電力が加算され、その結果、電気料金が大きくなってしまうのです。大きなマイニングファームの施設では、膨大な電力を使っていることからから施設の場所を特定されて、マイニングマシンの盗難事件が起こったくらい、それだけ大きな電力を使用しているのです。
マイニングファームで大きな電力が使用され、電気料金かかるということは、それだけマイニングファームの利用者にも負担がかかることになります。
そのためマイニングに使う電力の確保については、各企業も様々な工夫を行っており、多数のマイニングマシンを設置するマイニングファームの場合、電気料金が安いアイルランドやクロアチア、セルビア、スロバキア、アイスランドなど、海外に施設を建設するところも多くなっています。
電力料金が安い、電力と通信回線が最近は安定していることもあり、中国でもマイニングファームが多く作られており、四川では価格の安い水力発電所からマイニングファームに電力が供給される仕組みになっており、中国でのビットコインマイニングの拠点となっています。
現在マイニング業者の大部分は中国にあるといわれており、仮想通貨における中国の発言力が大きなっています。
PCの消費電力は新しいモデルがリリースされるたびに小さくなっていますが、マイニングに利用される電力消費量は今後も増加し、2018年の10月にはイギリスの全電力消費量を超え、2018年の末には世界の電力消費量の0.5%になるといった試算もあります。
そのためマイニングに利用される電力を今後どうやって作り出し、確保するかが課題になっています。
世界ではエネルギーは未だ石油、石炭、天然ガスに頼っており、マイニングに消費されている電力の多くは、石炭消費国である中国が占めていることから、マイニング消費電力の増加によって温暖化対策の目標が阻害されるなど、地球環境への影響が問題視されるようになっています。
HydroMinerは2015年にオーストリアの姉妹が設立したICO企業ですが、この企業では「マイニングする場合の電力もエコじゃなきゃダメだよね!」という問題提起を行っており、水力発電によって作られた電力を使い収益を上げるビジネスモデルを作り出しています。
そのような事情もあり、最近は太陽光発電業者が仮想通貨に参入しています。そしてマイニングファームの施設に独立型電源システムを用意して太陽光発電し、作り出した電力をマイニングで使用するといった環境改善への取り組みも行われているのです。急激に太陽光発電システムが普及したこともあり熊本電力(熊本県の新電力業者)では出力抑制時の余剰電力をマイニング事業に活用するなど、電力の有効利用も行われています。
和上サイクルも、そんな太陽光発電システムで作り出した電力を利用するファーム業者です。和上サイクルの親会社は太陽光発電で実績のある会社のため、もとより電力消費の地球環境への影響について高い関心を持っています。
そのため和上サイクルのマイニングファームの施設には太陽光パネルが敷き詰められており、太陽光発電パネルで作り出した電力を利用してマイニングを行っています。和上サイクルでは不足分の電力については、価格の安い電力プランを利用することによってユーザーへの負担を軽減しています。
太陽光発電の出力でマイニングファームの電力消費をまかなうには程遠い現実がありますが、マイニングによる電力消費がもたらす影響を真剣に考え、できることから取り組むという姿勢でマイニングファームを運営しています。
これからはマイニングに使われる電力の「質」にもこだわる時代になることは確実で、和上サイクルが行っている太陽光発電との融合は、そんな時代に向けての問題提起と言えるでしょう。