近年多くなっている暗号資産絡みの投資詐欺やマルチ商法について、後編ではよくある勧誘の手口と対策について解説します。こうした傾向と対策の前提となる被害事例については、前編をお読みください。
SNSやマッチングアプリにあふれる「お金の話」
FacebookやTwitterなどを日常的に利用している方であれば心当たりがあるかもしれませんが、近年投資やお金儲けに関する広告や投稿が多くなったとお感じではないでしょうか。広告と明記しているものもあれば、個人の投稿者が「自分はこうしてお金を儲けた」「この方法に出会って人生が変わった」といったような投稿をしているパターンもあります。
特に後者のパターンが悪質で、あたかも「自分がこうして成功した方法を、お金に困っている人に教えてあげたい」という善意から投稿しているようなものも多く見られます。筆者はこうしたアカウントをウォッチしているので実名を挙げたいくらいですが、どのアカウントも同一人物がやっているのではないかと思うほど、投稿の内容が似ています。また、多くのアカウントは女性名義で、本人らしき人が写真に登場している場合もあります。
こうした「お金の話」は、Youtubeなどの動画投稿サイトや、さらにマッチングアプリにもあふれています。Youtubeの場合は動画で訴求する形なので悪質度は低いですが、マッチングアプリで女性名義のアカウントで男性を誘う手口は極めて悪質です。男性の下心や恋心を利用して誘い出し、複数名で威圧的な勧誘をして断れない状況を作り、消費者金融に借金をさせたという事例もあります。
まずはこうしたネットにあふれている「お金の話」は基本的に嘘もしくは「大盛り」であり、話半分どころか話10分の1程度の認識でいいと思います。
暗号資産に関する「お金の話」は特に要注意
SNSやマッチングアプリなどを使った「お金の話」で最近特に多いのが、暗号資産絡みです。以前はFXで大儲けした、という話が主流だったのですが、その「トレンド」は暗号資産に移行しています。その理由は簡単で、暗号資産は儲かりそう、暗号資産なら自分にもチャンスがあるかも、これからは暗号資産…という漠然としたイメージを持っている人が多いからです。しかも若い人たちは暗号資産に対するイメージがそれほど縁遠いものではなく、年配の人たちほどハードルは高くありません。そこが、詐欺師たちにとっては好都合なのです。
暗号資産でお金儲けができる方法といった情報にネットで出会ったら、それは100%嘘もしくは何か別の意図があると考えて問題ありません。
他人にお金儲けをさせてくれる人はいない
筆者はこうしたお金にまつわる怪しげな話や事件を長年ウォッチしてきていますが、長年にわたる取材や情報収集からひとつの大きな結論に至っています。それは「わざわざ他人にお金儲けをさせてくれる人はいない」という明白な真実です。FXや暗号資産などでのお金儲けは同じ手法を用いる人が増えるとやりづらくなることが多いため、本当に儲かる手法があるのであれば自分たちだけでこっそりやっているほうが利益も安定します。それを他人に教えるということは、その時点でそんな手法はないか、そもそも投資詐欺かマルチ商法の類であると考えてください。
もちろん、FXや暗号資産のことをしっかり勉強して自らの戦略を投資をすれば、利益を上げることはできます。しかしそれは地道に努力した結果であって、他人から教わった方法でなしえるものではありません。投資でお金儲けをしたい人は、まず投資とは何か、資金管理とは何かという勉強から始めることを強くおすすめします。実際にお金を動かすのは、すべての勉強を終えて理解を深めてからでも遅くはありません。