こんにちは、石橋です。
今回は、国際情勢に絡めたお話をしたいと思います。
2022年が明けたと思ったら途端に緊迫している、あのウクライナについてです。
ウクライナはロシアの西に接している東欧の国で、有名な教会がたくさんある歴史豊かな国としても知られています。日本からは離れているのでウクライナのことをなかなかイメージしづらいのですが、東欧諸国の中では国土も広く大きな国です。
そんなウクライナが、今にもロシアから侵攻されるのではないかと連日ニュースを騒がせています。すでにウクライナ南部にあるクリミア半島はウクライナの国土でありながらロシアに強奪されてしまったので、ロシアによるウクライナ侵攻は今に始まったことではありません。すでに「前科」があることから、これだけ大規模な軍隊を国境付近に集結させていることが「本気ではないか」と思わせる理由になっています。
もしロシアがウクライナに侵攻すれば明確な侵略戦争であり、ロシアがやることは許されません。しかし、今回私がお話をしたいのはそのことではなく、ウクライナの環境問題です。実はウクライナには戦争と同じく重大な環境問題が存在しています。
ウクライナといえば、あのチェルノブイリ原発事故を覚えている方は多いと思います。ウクライナの首都であるキエフ近郊にあって北側で国境を接しているベラルーシにも近いところにあるチェルノブイリで、世界最悪となる原発事故が起きました。
私たち日本人は福島原発事故のことが頭に強く残っているのでそちらに注目が行ってしまいがちですが、事故の規模や深刻度はチェルノブイリの比ではありません。
日本とウクライナはどちらも原発事故を経験したわけですが、その後の対応は両国でかなり異なります。
日本では福島原発の事故以降、国全体に原子力アレルギーのようなものが蔓延しました。原子力=悪、再生可能エネルギー=善という構図です。私自身、この構図はあまりにも単純であってエネルギーに対する理解不足も甚だしいと思っていますが、感情が科学を上回ることがあるのはコロナ禍でも改めて実証されています。
そんな日本を尻目に、ウクライナはむしろ原子力への依存を強めています。ウクライナ自身も資源国の側面があるので石炭や石油、天然ガスといった地下資源を採掘することができるのですが、ウクライナのエネルギーを長年支えてきたのは旧ソ連時代に設置されたロシアからのパイプラインです。地下資源が豊富なロシアからは旧ソ連時代から石油と天然ガスがパイプラインで供給されており、今もそれはウクライナの重要なエネルギー源になっています。
間もなく戦争になるかもしれない国からエネルギー供給を受けるのって、違和感があると思いませんか?そんな違和感たっぷりの状況が長年続いていることも、ウクライナが原子力に依存する大きな理由でもあります。
国内のエネルギーをロシアに依存しっぱなしだと、ロシアがご機嫌を損ねたとたんに供給が止まってしまい、ウクライナは国が成り立たなくなってしまいます。事実、過去にロシアとウクライナが政治的に対立した時にはロシアがエネルギーの供給を止めるぞと揺さぶりを掛けたこともありました。何と器の小さい話かと思いますが、これが国際政治です。そんな過去があるのですから、今回もウクライナ侵攻の前に「兵糧攻め」にするのではないかと考えるのが自然ですね。
そんな懸念から、ウクライナは原子力を手放すことができずにいます。ロシアが万が一エネルギー供給を止めたとしても国が止まってしまわないようにする、ウクライナにとってのエネルギー安全保障なのです。あれだけのひどい原発事故を経験していながら国内世論が脱原発に向かわないのは、原発よりもロシアという非常に高いリスク要因があるからです。
ひるがえって、日本に目を向けてみましょう。
日本はウクライナよりもエネルギーを海外からの輸入に依存しています。特定の国だけから輸入しているわけではありませんが、脆弱であることに変わりはありません。ウクライナほどの原子力依存は必要ないと思いますが、日本も国内のインフラをしっかり活用してエネルギーのポートフォリオを構築する必要があります。
私は太陽光発電の普及を推進することを事業としているので、再生可能エネルギーが持つ可能性に大きく期待しています。しかし、太陽光発電は万能ではありません。国の電力需要をすべて賄うほどの能力はありませんし、雨の日や夜間に発電できないリスクも十分理解して対策を講じる必要があります。原油や天然ガスの価格が高騰しているから電気料金が高くなるなんて、脆弱すぎると思いませんか?
そこで原子力を電力源に組み込むことには賛成ですし、EUが原子力をクリーンエネルギーに認定したのも日本とよく似た事情があるからだと思います。原子力=悪ではなく、「適切に利用しない原子力」が悪なのです。
リスクとメリットをしっかりと精査したうえでベターな選択をするのが、科学に基づいた決断です。日本は科学立国なのですから、もっと科学的にエネルギーのこと、コロナのことを考えてほしいものです。