こんにちは、石橋です。
最近はどこのテレビを観ても米、米、米。
米が高い、米が足りない、備蓄米が行き渡らない・・・などなど。日本人の主食である米の話題だけに関心が高いのは分かるんですが、日本人の米消費量は年々下がり続けていて、「もっと米を食べよう」というキャンペーンが毎年のように展開されてきたご時世です。
そんな折に、今度は急に米、米、米。皆さん、そんなに米が好きでしたっけ?とツッコミを入れたくもなりますが、これも群集心理のようなものでしょう。コロナ禍の時にあったマスクやティッシュ、トイレットペーパー、除菌スプレーなどと同じですね。人間は「ない」「足りない」と言われると欲しくなる生き物ということなんでしょう。

さて、今回の本題はそれではありません。米不足の本質的な問題への対策と、太陽光発電を組み合わせた解決法の提案です。
私は再生可能エネルギー企業の代表を務めている関係上、太陽光発電に関しては専門家を自認しています。太陽光発電にはさまざまな形が実用化されていますが、その中のひとつにソーラーシェアリングがあります。このコラムでも何度か取り上げていますし、和上ホールディングスのグループにはソーラーシェアリングを手がける「和上の郷」という会社もあるので、私にとってもソーラーシェアリングは身近な存在です。
農地の上に太陽光パネルを設置して、太陽光を「シェア」するという考えに基づいており、太陽光発電による売電収入と農業収入の両方を狙うビジネスモデルです。すでに多くの実用化事例があって、特に茗荷(ミョウガ)やニラなどの作物との相性がいいことからこれらの農作物でのソーラーシェアリングはすでに成功しています。
それを受けて、私は稲作とソーラーシェアリングの可能性に期待しています。実は稲作とソーラーシェアリングについてはすでに多くの実験や検証が行われており、よほど条件が悪くない限りは成功する確率が高いことが分かっています。
何せ、稲作は1年のうち半分くらいは田んぼが休んでいるため、その期間は太陽光発電に使い放題です。稲作期間については太陽光を遮ることによって収穫量に影響が出るため気候条件などをしっかり精査する必要がありますが、多くの実験の結果では売電収入を組み込むと農家の収入は大幅に伸びることが分かっています。
農家の後継者不足や高齢化などが指摘されて久しいですが、これらの問題は米の生産量低下につながり、米不足の遠因になっています。後継者がいないことから耕作放棄された田んぼは増え続け、農村に行くと明らかに誰も管理していないと思われる田んぼを目にすることも珍しくありません。米が不足しているのに、田んぼを活用できていない。これって、もったいないと思いませんか?
そこで台頭しているのが、大規模農業法人です。大規模に集約された農業をすることでコストを下げ、耕作放棄地の解消にも一役買っています。これは、とても素晴らしいことです。日本の農業は近代化が遅れていると言われていますが、こうした大規模な農業を展開することで近代化が進み、自給率の向上にも貢献できるでしょう。
それと並行して、私が期待しているのがソーラーシェアリングです。田んぼに太陽光パネルを設置して、農家は売電収入と農業収入を得ることができます。農業収入ができるだけ減らないようにするには気候条件の精査やシミュレーションが欠かせません。そこは、ソーラーシェアリングのプロによるベストミックスの出番です。すでにそういった技術はどんどん進んでいて、今後は田んぼ+太陽光発電というビジネスモデルが珍しくない時代がやってくるかもしれません。
こうした動きで得られるメリットは、計り知れません。収入が伸びるのであれば農業をしたい人が増えるでしょうし、これまで農業とは無関係だった企業の参入も考えられます。「農業は儲かる」ということが確立されるのであれば、やりたい人はたくさんいるのです。現状では収入が安定しないことなどがネックになっているわけですが、ソーラーシェアリングがそれを解決すれば、農業の新しいビジネスモデルが普及していくでしょう。
米価格の高騰は、モメンタム(市場心理)によるものです。備蓄米を放出しているのに行き届いていないせいで買いだめをしようとする人も多くなり、慢性的に市場で不足してしまっているだけです。
ソーラーシェアリングによって就農する人が増え、米の生産量が増えれば、毎年のようにやってくる米不足や米価格の高騰は起きにくくなります。量が足りているのであれば買いだめをする必要もなく、市場の需給は安定します。
もちろん、太陽光発電が万能とは言いません。しかし、米不足の構造的な原因を解決できる可能性があって、しかも再生可能エネルギーによる日本のエネルギー安全保障にも寄与します。私は環境ビジネスに携わる者として、この可能性に大いに期待したいです。