ペロブスカイト太陽電池の最新事情と「義務化」の噂について

石橋大右

2026.7.7 エネルギー問題太陽光発電ビジネス

ペロブスカイト太陽電池の最新事情と「義務化」の噂について

こんにちは、石橋です。
今回は当コラムでも何度か取り上げているペロブスカイト太陽電池についてのお話です。
その中でも、最近ペロブスカイト太陽電池の設置が義務化されるという噂が飛び交っているので、その件を中心に論じてみたいと思います。

近年、「ペロブスカイト太陽電池が義務化されるらしい」という噂を見聞きすることが多くなった感があります。
事実はどうかというと、現時点でそんな制度は存在しません。
結論からいうと、ペロブスカイト太陽電池そのものが義務化される予定はありません。
ではなぜ、こんな噂がまことしやかに拡散しているのでしょうか。

「義務化」というキーワードで思い起こすのが、東京都などで導入された新築住宅への太陽光発電設備の設置を義務化する制度ですね。さすがに私も荒っぽい制度だと感じたものですが、この制度は「太陽光発電」の導入を対象としており、使用する太陽電池の種類までは指定していません。
つまり、従来のシリコン太陽電池でも、将来的にペロブスカイト太陽電池でも要件を満たせます。
国も建物への太陽光発電導入を後押しするため、建築基準や電気設備に関する制度整備を進めています。ただ、これらもペロブスカイト太陽電池を設置しやすくするための環境整備であり、「設置を義務付ける制度」ではありません。

ペロブスカイト太陽電池について「政府が推進している」というのは、単なる期待ではなく、実際に国の政策として明確に位置付けられています。高市政権の方針にも盛り込まれているので、明確な国の方針です。
経済産業省が公表した導入目標には、数字がしっかりと記載されています。これによると政府は2040年までに20GW(ギガワット)を導入するという目標を掲げています。これは原子力発電所約20基分に相当する発電量であり、かなり大きな数値です。それだけ国は本気だということですね。

さらに、2025年に閣議決定された第7次エネルギー基本計画でも、再生可能エネルギーの拡大に向けた重要技術の一つとしてペロブスカイト太陽電池が位置付けられています。
環境省も政府施設への導入を率先して進める方針を示しており、2035年から2040年にかけて多くの公共施設へ設置する計画を打ち出しています。つまり、民間に普及させる前に、まず国自らが利用することで市場を育てようとしているのです。

なぜこんなに力を入れているのか?そこにはいくつかの背景があります。
1つ目は、私が常々ここでも言及しているエネルギー安全保障です。ご存知の方は多いと思いますが、世界の太陽電池市場では中国製品のシェアが非常に高く、残念ながらかつて世界一だった我らが日本の面影はありません。日本としては、次世代技術で主導権を取り戻したいという狙いがあるわけです。
2つ目は、ペロブスカイト太陽電池の主要材料となるヨウ素です。日本は世界有数のヨウ素生産国であり、なんと世界生産量の約3割を占めています。原材料を国内で調達できることは、海外依存を減らすという点でも大きな強みです。日本は資源のない国と言われますが、ヨウ素については国内調達をしやすいので、この「珍しい強み」を活かしたいと考えているわけです。
3つ目は、ペロブスカイト太陽電池の技術は日本の大学や企業が長年研究を続けてきた虎の子です。積水化学工業やパナソニック、リコーなどが実用化商品の開発を進めており、日本発の新しい産業として育成したいという思惑もあります。

ペロブスカイト太陽電池の最大の特徴は、「薄く、軽く、曲げられる」ことです。このメリットは、現在太陽電池を設置できないところにも設置できるところが画期的です。
現在主流のシリコン太陽電池には重量があり、十分な強度を持つ屋根でなければ設置できません。しかし、ペロブスカイト太陽電池なら、耐荷重が小さい建物や工場の屋根、ビルの壁面、窓ガラスなど、これまで設置が難しかった場所にも取り付けられる可能性が出てきます。
都市部では屋根の面積に限りがありますが、外壁や窓も発電設備として利用できるようになれば、再生可能エネルギーの導入量を大きく増やせると期待できますよね。

そんなペロブスカイト太陽電池の現在地ですが、今や「研究段階」をほぼ終え、「量産化」に向かう過渡期にあります。
政府はグリーンイノベーション基金などを活用して量産工場の建設や製造技術の開発を支援しています。積水化学工業などでは量産ラインの整備が進められており、2027~2028年頃から本格的な市場投入が始まると見込まれています。
少し前までは未来の話だと思っていましたが、もはや来年の話です。

現時点でペロブスカイト太陽電池が義務化される予定はありませんが、日本政府は数値目標を設定し、量産化支援や制度整備、政府施設への導入などを通じて、この技術の普及を強力に後押ししています。

脱炭素だけでなく、エネルギー安全保障や産業競争力の強化という観点からも重要な技術と位置付けられており、今後10年は日本の再生可能エネルギー政策の中核を担う存在になる可能性があります。
特に2027年以降は量産化が本格化すると予想されており、関連産業を含めて注目度が一段と高まることになりそうです。シリコン太陽発電は中国に持って行かれましたが、ペロブスカイト太陽電池は技術的にも商業的にも日本が世界をリードする未来を期待しています。

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