マイニングに使用する機器といえば、グラフィックボードに搭載するGPUや、マイニング専用に開発されたASICなどを思い浮かべる方が多いと思います。特にGPUは本来グラフィックボードとして使用するものなのですが、暗号資産のマイニングに適していることから購入者が急増、グラフィック機能のために購入したい人までGPUをなかなか購入できない事態になってしまいました。
それが今、今度はGPUが大量に余っているというのですから尋常ではありません。マイニングの最前線では、何が起きているのでしょうか。
未開封のまま眠っている大量のマシン
ビットコインのマイニング向けにGPUを搭載したハイスペックマシンが続々と投入されましたが、それが今では未開封のまま眠ったままになっているというニュースが流れました。その数、アメリカだけでも25万から50万台に上るそうです。
価格が高騰し、それでも多くのマイナーたちが争奪戦を繰り広げてまで買い求めていたマイニングマシンが使われていないというのは、実にもったいない話です。1台1台が決して安いとはいえないマイニングマシン(しかも高騰時に購入している可能性が高い)が使われずに放置されているのは、「動かさないほうがまし」だからです。それは、なぜでしょうか。
マイニングマシンを稼働させると赤字になる
ビットコインのマイニングには、ハイスペックマシンを常時稼働させ、膨大な計算をさせる必要があります。コンピューターはハイスペックになるほど電力消費も多くなるため、最もマイニングのスピード競争が激しいビットコインで用いられているマイニングマシンは暗号資産の中でも最もハイスペック機がしのぎを削り合っています。
しかし、世界的に電気代が高騰しています。直接の理由はロシアによるウクライナ侵攻ですが、それだけではなく以前から原油価格の高騰は始まっていましたし、欧米各国で進行しているインフレもエネルギー価格を押し上げています。大量に電力を消費するマイニングマシンは電気代の高騰による影響をもろに受けるため、稼働させるとコストが増大します。
しかし、その一方でビットコインの価格は低迷したままです。数十万円にまで暴落した当時と比べるとまだ高いほうですが、500万円以上の価値があったビットコインが今や200万円や300万円なので、実に半値近くにまで価格が落ちたままです。
電気代による仕入れコストが上昇している一方で、売値(ビットコインの価格)は下落しているのですから、マイナーたちのため息が聞こえてきそうです。
マイニングマシンが未開封のまま放置されている意外な理由も
実はもうひとつ、大量のマイニングマシンが未開封のまま放置されている理由があります。それは、データセンターのスペース不足です。データセンターとは大容量回線に接続され、サーバーなどのコンピューターを設置する場所のことです。マイニングマシンもデータセンターに設置するのがセオリーですが、このデータセンターのスペースがマイニングのブームによって不足しています。
急に中国などでマイニングが禁止されたため、それまで高いシェアを誇っていた国からマイナーが移動し、特にアメリカやカザフスタンに殺到することとなりました。そうなるとこれらの国々では好機ととらえ、データセンターの使用料を引き上げたわけです。
スペース不足に加えてデータセンターの価格も高騰しているので、マイニングマシンを設置する行き場がなくなってしまったのです。
こうした状況がすぐに劇的に変わるとは考えにくく、当面はマイニングマシンがだぶつく状態が続きそうです。価格の下落も考えられるので、近い将来にマイニングに参入したいとお考えの方には、チャンスが到来するかもしれません。