2024年3月28日、アメリカのニューヨークで歴史的ともいえる裁判の判決がありました。その判決は、暗号資産取引所大手だったFTXの創業者、バンクマン・フリード被告に対するものです。
注目の判決は、禁固25年。同氏は現在32歳なので、満期まで「お務め」をしたとすると57歳まで刑務所暮らしということになります。これはかなり重大な判決といえますが、この判決を受けた各方面の反応や、この判決が持つ意味などについて述べたいと思います。
かつては業界2番手のFTX、時代の寵児となった創業者
冒頭でも述べたように、FTXの創業者であるバンクマン・フリード被告に対する判決は禁固25年、さらに資産110億ドルの没収でした。刑期の長さもさることながら、没収される資産額が日本円では1兆6,000億円という規格外の規模です。こんなに資産があったこと、そしてそれを没収されることを考えると、彼が犯した罪の重さが分かります。
彼が創業したFTXは、かつて暗号資産業界2位の取引所でした。ビットコインをはじめとする暗号資産の価格高騰を受けて、この世の春を謳歌していたことでしょう。
それが一転して犯罪者となり、これから25年の「お務め」に行くだけでなく1兆円以上の資産を没収されたのですから、その人生の転落ぶりはすさまじいものがあります。
フリード被告はどんな悪事を働いたのか
筆者が思うに、このフリード被告は最初から顧客の資産を盗もうとは思っていなかったと思います。そうでなくても暗号資産の価格高騰で十分恩恵はありましたし、何事もなければ十分ミリオネアになれていたはずです。
FTXは2022年11月に経営破綻して、その時に顧客の口座から巨額の資金を盗んだとして裁判にかけられました。いわゆる火事場泥棒のような悪事を働いたわけですが、こうした犯罪はアメリカではとても厳しく罰せられる風土があります。かつてあったエンロンの巨額粉飾決算もそうですし、アメリカでは市場経済の信用を失墜させるような犯罪はとても厳しく罰せられます。このFTX事件でも検察からは40年の求刑があったので、厳しい判決が出ると見ていました。
本人は裁判で「多くの人たちをがっかりさせて申し訳ない」と話したそうですが、これは「がっかり」で済む話ではないでしょう。顧客の中には何億円もの資産を引き出せなくなった人もいるのですから。
禁固25年は軽い?100年の刑期もあり得た
禁固25年というのは厳しい判決だと思える一方で、識者からはこれでも軽いとの指摘もあります。法的には、100年以上の刑期もあり得たそうです。禁固25年といっても、アメリカの制度では13年くらいで出所できる可能性もあるわけで、これだと重罪とはいえないというわけです。
こんな程度の刑で済んでしまうと、今後同種の犯罪の抑止力のならないのでは?と警鐘を鳴らす人もいます。
当事者である被害者に言わせると、刑期の長短によってお金が戻ってくるわけでもなく、長い刑期になったとしても意味がないとの声が大勢のようです。このあたりのドライさは、アメリカらしいと思います。日本の道義的責任、倫理的責任という観点で制裁をすることにあまり興味がないというも、司法大国であるアメリカらしさなのかもしれません。
健全化が進む暗号市産業界でも、自分の身は自分で守ろう
このフリード被告は、間違いなく暗号資産業界の超大物です。いえ、超大物でした。そんな人物であっても、こうして犯罪者となり、長期間にわたって社会不在になってしまいます。こういうことがあると、また暗号資産業界に対してうさん臭いイメージが増幅してしまうでしょう。
しかし、業界の黎明期と比べると暗号資産業界も健全化が進んでおり、こうした怪しげな人物や団体は淘汰が進んでいます。暗号資産業界での投資やマイニングビジネスなどでは、しっかりと情報収集をして、他人の意見を鵜呑みにせず自分で考えて判断し、行動することが重要です。