系統用蓄電池事業を始める際は、どのようなメーカーから提供されているのか把握しておくことが大切です。また、系統用蓄電池の選び方や注意点についても理解した上で準備を進めておきましょう。今回は、系統用蓄電池の主要メーカーや蓄電池の選び方と価格について詳しくご紹介します。系統用蓄電池事業に関心を持ち始めた方などは参考にしてみてください。
系統用蓄電池の主なメーカー
以下に系統用蓄電池のメーカーをいくつか紹介します。
メーカー | 製品例 |
---|---|
株式会社パワーエックス |
蓄電容量2.7MWhの定置用大型蓄電池などを製造している AIによる電力運用、管理システムも提供 |
株式会社VOLT |
家庭用から産業用、系統用蓄電池まで幅広く対応している リン酸鉄(LFP)リチウムイオン電池を採用 |
CONNEXX SYSTEMS株式会社 | MWhクラスの大型蓄電池の製造にも対応している |
コンテナに系統用蓄電池本体とEMSユニットを格納した一体型システム ACリンク、DCリンクどちらにも対応 |
|
SUNGROW JAPAN株式会社 |
水冷式蓄電システムを製造している 蓄電池を事前に組み立てることで、輸送・設置コストを削減 |
各メーカーでは、それぞれの強みを活かした系統用蓄電池を設計、製造しています。たとえば、国産蓄電池メーカーの株式会社パワーエックスでは、AIを活用した管理システムを導入しているのが強みです。管理を自動化できるため、リソース不足などで悩んでいる企業にとってメリットがあります。
株式会社VOLTのリン酸鉄(LFP)リチウムイオン電池はニッケルなどのレアメタル不使用で、安価に製造できるのがメリットのひとつです。
CONNEXX SYSTEMS株式会社は、EMSも格納させたコンテナタイプも製造しており、コンパクトなサイズ感も魅力といえます。接続方式は、ACリンクとDCリンクどちらにも対応しています。(ACリンク、DCリンク:太陽光発電との接続における方式)
SUNGROW JAPAN株式会社の系統用蓄電池は、本体を水冷システムで冷却させる方式を採用しており、高い冷却性能を期待できます。
系統用蓄電池メーカーの選び方
続いては、系統用蓄電池メーカーを調べる際に注目すべきポイントを確認していきます。
取り扱っている蓄電池の種類や特性を確認する
系統用蓄電池に使用されている電池は、主にリチウムイオン電池で、LFP(リン酸鉄リチウム)やNMC(三元系)などが代表的です。LFPは安全性と寿命に優れ、NMCはLFPよりも低い温度でも動作できます。このほか、コストや資源確保の観点からNAS電池(ナトリウム硫黄)やレドックスフロー電池なども実証導入が進んでいます。新しい技術を扱っているメーカーは限られているため、設置場所や価格、安定性など優先したい内容に合わせて選びましょう。
アフターサービスの内容を調べておく
系統用蓄電池を含め蓄電池は、充放電を繰り返していくたびに少しずつ劣化していきます。充放電で利益を得る系統用蓄電池は、通常よりもさらに劣化しやすい可能性があります。
充放電の回数や時間、方法、その他温度をはじめとした環境で変わるため、厳密な寿命を予測するのは難しいです。どの程度の劣化でメーカー保証が適用されるのかなど、できる限りアフターサービスの具体的な内容や条件を確認しておきましょう。
メンテナンス事業者が対応できるメーカーか確認する
系統用蓄電池を比較する際は、メンテナンス事業者で対応できるメーカーかどうかという点も確認しておきましょう。
たとえば、国内拠点を持っていない海外メーカーから系統用蓄電池を導入した場合、部品の調達に時間がかかる可能性もあります。国内のメンテナンス事業者で対応していない製品を導入してしまうと、修理交換やメンテナンスに対応した事業者を見つけられないこともあります。
メーカーを選ぶ際は、国内拠点の有無、サポート体制、メンテナンス事業者での対応状況まで細かく調べて置くことが大切です。
系統用蓄電池の選び方
系統用蓄電池事業を検討する場合は、メーカーだけでなく製品に関しても慎重に調べる必要があります。続いては、系統用蓄電池の選び方をわかりやすく解説します。
系統用蓄電池の制御機能が優れているか調べておく
系統用蓄電池を選ぶ際は、蓄電池の種類や耐久性だけでなくBMS(Battery Management System)についても比較しましょう。系統用蓄電池事業では、効率的に電力を調達し売電を繰り返します。
BMSは、系統用蓄電池の充放電に関する制御を担うユニットで、過剰に充電したり放電したりするのを防いでくれます。これにより、蓄電池の消耗を抑え、急速な劣化のリスクが軽減されます。劣化しにくい蓄電池を選べば、ランニングコストも抑えられるでしょう。
蓄電容量と定格出力を確認する
日本卸電力取引所(JEPX)で系統用蓄電池事業を行うためには、1コマ(30分)50kW以上の定格出力が必要とされています。そのため、どれほど小規模であっても、定格出力50kW以上の蓄電池が必要です。
50kW台の小規模な蓄電池では、2~3コマ以上の取引を行えません。一般的には蓄電容量2,000kWh(2MWh)以上あれば、取引を継続することが可能です。
異なるメーカーと連携できるか確認する
既存の設備と接続したい場合は、異なるメーカーや既存設備との連携も確認しましょう。
蓄電池は、太陽光発電設備やV2H+電気自動車などと接続できます。しかし系統用蓄電池のメーカーによっては、特定のメーカーでなければ太陽光発電設備やV2Hへ電気を供給できない場合もあります。メーカーや施工業者の担当者に連携可能な設備の種類、メーカー、型番などを確認しておくことが大切です。
系統用蓄電池の価格相場
2024年度の価格相場は、経済産業省の「2024年度 定置用蓄電システム普及拡大検討会の結果とりまとめ(案)」によると1kWhあたり54,000円です。なお、2023年度の価格相場は1kWhあたり62,000円で、2024年度にかけて少し落ち着いてきています。また、工事費については、2023年度から変わらず1kWhあたり14,000円です。
2023年度にかけて価格上昇した理由には、一時的な資源価格の高騰も関係しています。蓄電池に使用される炭酸リチウムの輸入価格が、2022年4月から2023年7月頃まで値上がりしました。そのため、系統用蓄電池の価格も同時期に上昇しています。
工事費以外の内訳については、系統用蓄電池本体部分41,000円、パワーコンディショナー6,000円、その他7,000円です。コストの多くは、蓄電池本体で占められています。
容量別の価格相場は以下の通りです。
容量 | 価格相場 |
---|---|
10MWh未満 |
設備費:60,000円 工事費:15,000円 |
10~50MWh未満 |
設備費:57,000円 工事費:15,000円 |
50MW以上 |
設備費:49,000円 工事費:11,000円 |
出典:「2024年度 定置用蓄電システム普及拡大検討会の結果とりまとめ(案)」(経済産業省)
系統用蓄電池の価格を抑えるには
最後は、系統用蓄電池のコストを抑えるポイントを解説します。
相場より安いメーカーから検討する
系統用蓄電池のコストを抑えたい場合は、価格相場より安いメーカーから比較検討してみるのも重要です。メーカーによっては1.5倍以上の価格差が生じることもあるため、蓄電池の本体の価格は無視できません。しっかりと比較しましょう。
補助金制度を活用する
国による系統用蓄電池向けの補助金制度もあります。補助金制度を活用できれば、設備や工事費用などを大幅に削減することが可能です。
たとえば、「令和6年度 系統用蓄電池・水電解装置導入支援事業」は、系統用蓄電池と水電解装置の設計や導入費用に対して補助金が交付されます。
以下に補助額などを紹介します。
対象設備 | 系統用蓄電池 水電解装置 |
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対象経費 | 設計費 設備費(セル、モジュールやBMS、パワーコンディショナなど) |
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補助額 | 下記新型蓄電システム導入に関わる設計費や設備費、工事費 | 補助率3分の2以内 上限額20億円 |
新規技術開発蓄電システム(長期エネルギー貯蔵技術(LDES)) 最大受電電力が1,000kW以上 |
補助率3分の2以内 上限額20億円 |
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上記以外の蓄電システム(リチウムイオン、NAS、レドックスフロー、鉛等)に関わる設計費や設備費、工事費 | 補助率3分の1以内 上限額10億円 |
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補助率2分の1以内 上限額40億円 |
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公募期間 | 2025年4月9日時点で終了 |
出典:IIウェブサイト
なお、「令和6年度 系統用蓄電池・水電解装置導入支援事業」は、2025年4月9日時点で既に終了しています。補助金制度を活用していきたい企業は、国から発表される最新の情報を定期的に確認しておきましょう。
蓄電池のメーカーは複数あり!比較検討してみるのが大切
系統用蓄電池に関するメーカーは、複数あります。各製品には違いや独自の強みなどがあるため、自社の方針に合ったものを選んでいきましょう。また、系統用蓄電池のメーカー選びを効率的に進めていくためには、ノウハウを蓄積した施工業者へ相談することが大切です。
系統用蓄電池事業に関心を持ち始めた方や系統用蓄電池についてより詳しく知りたい方などは、今回の記事を参考にしながらメーカー、施工業者を比較検討してみてはいかがでしょうか。
弊社和上ホールディングスは、系統用蓄電の用地選定から造成工事、メーカー選び、設備の調達、設置工事、保守管理を含め全て自社で対応しております。また、中間マージンの負担がないため、費用を抑えながら設備を導入いただけます。
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