系統用蓄電池は大型の設備ということもあり、導入しようと思うと思いのほか費用が掛かります。今回は、系統用蓄電池の価格や負担を抑える方法、補助金制度について詳しくご紹介します。系統用蓄電池事業に関心を寄せている方などは参考にしてみてください。
系統用蓄電池の価格相場は?
2022年度の価格相場は1kWhにつき4.9万円、2023年度は1kWhにつき6.2万円と一時的に値上がりしていました。しかし、2024年度の価格相場は、1kWhにつき5.4万円と少し落ち着きを見せています。(工事費を除く)
以下に価格の内訳を紹介します。
年度 | 内訳(1kWhあたりの価格) |
---|---|
2022年度 | 蓄電池:3.6万円 パワーコンディショナ:0.5万円 その他:0.7万円 工事費:1.2万円 |
2023年度 | 蓄電池:4.8万円 パワーコンディショナ:0.6万円 その他:0.8万円 工事費:1.4万円 |
2024年度 | 蓄電池:4.1万円 パワーコンディショナ:0.6万円 その他:0.7万円 工事費:1.4万円 |
出典:「2024年度 定置用蓄電システム普及拡大検討会の結果とりまとめ(案)」(経済産業省)
系統用蓄電池の価格が大きく変化したのは、主に本体で、パワーコンディショナや付帯設備、蓄電池制御部分などについては、ほとんど変わっていません。
系統用蓄電池の費用内訳
系統用蓄電池の費用は、システム費用と工事費用、その他(付帯設備など)費用の3種類で構成されています。続いては系統用蓄電池の費用内訳をわかりやすく解説します。
システム費用
系統用蓄電池のシステム費用は、全体の約50~60%を占めるほど費用の掛かる設備です。コストを抑えて系統用蓄電池を導入したいなら、やはりシステムそのものを慎重に検討する必要があるでしょう。
厳密には「システム費用」は蓄電池のことだけを指すのではなく、系統用蓄電池を構成する以下のような設備も含まれます。
- 蓄電池
- パワーコンディショナ
- 空調設備
- 充放電の制御システム(PMS、BMS)
- コンテナ
蓄電池は、系統用蓄電池のメインといえる部分で、電気の充電と放電を行う設備です。主流とされているのはリチウムイオン電池で、他の種類よりも安価とされています。メーカーによって蓄電池の価格は異なるため、メーカーや型番ごとに比較することも大切です。
パワーコンディショナは、電気の交流や直流変換などを担っています。充放電に関する制御は、PMSやBMSといったシステムによって支えられており、効率的な買電や売電を行う上でも重要な部分です。コンテナは系統用蓄電池を収納するための部材です。
工事費用
系統用蓄電池における工事費は、主に以下3つの費用にわけられます。
- 設置工事費用
- 工事費負担金
- 専用線敷設費用
設置工事費は、系統用蓄電池の用地に関する造成工事(基礎工事)、蓄電池の運搬と設置、配線工事などといった、設置に直接かかわる費用です。系統用蓄電池事業では売電を行うため、電力系統の接続も必要ですが、系統への接続にかかる工事は一般送配電事業者に依頼しなければならないため、これの負担金も必要です(工事費負担金)。
また系統用蓄電池事業では、電力需給のひっ迫時に一般送配電事業者から発動指令を受け取り、電力供給に対応します。発動指令を受け取るためには専用線敷設費用が必要なため、こ専用線を敷くための工事費も必要です。
その他費用
その他にも系統用蓄電池を設置するための用地の取得費用、アグリゲーターの利用料などがかかります。
アグリゲーターは、系統用蓄電池を含む各エネルギーリソースをまとめて、かつ電力需給に合わせて調整してくれる専門サービスです。系統用蓄電池事業では、電力市場の電力需給バランスや価格変動に対して迅速に対応しなければならず、アグリゲーターを介して売買を行います。
系統用蓄電池の価格を抑える方法
系統用蓄電池の費用は大きくなりやすく、事業を検討する企業にとってはハードルになりやすいポイントです。続いては、系統用蓄電池の価格を抑える方法について詳しく解説します。
メーカーごとの価格を比較する
先に解説したように蓄電池システムにかかる費用は、全体の約50~60%を占めています。
市場シェアの高いメーカーや海外メーカーは、比較的安価な傾向にあります。これから蓄電池を選定する企業は、複数のメーカーや型番から価格を比較し、性能とのバランスがとれた製品から検討を行ってみましょう。ただし海外メーカーは故障時の部品交換などが難しくなる可能性もあるため、可能であれば専門業者と相談しながら決めるとよいでしょう。
用地選定を外部の会社へ全て委託しない
系統用蓄電池を設置するためには、設備の運用に適した用地を用意しなければなりません。しかし、用地選定の手間やリソースを考え、選定に関する諸々の作業を全て外部の会社へ委託する企業も多いのではないでしょうか。
外注費用はかさみやすく、削りやすい費用です。全て外部の会社へ依頼しないよう、自社でできる作業は積極的に取り組みましょう。たとえば次に紹介する鵜ような作業は、自社で取り組める可能性が高いです。
▼土地の候補をインターネットなどで調査する
土地の候補を出す際は、デスクトップリサーチを実施しましょう。デスクトップリサーチとはインターネット検索や文献などから、取得予定の土地に関する情報を収集する作業のことです。あらかじめ資料などでいくつかの情報を把握しておけば、現地視察(フィールドリサーチ)の負担を抑えられます。
たとえば以下のような情報は、自力で調べることができます。
- 土地の所在地
- 土地の敷地面積
- 土地の形状がわかる図面
- 地目
土地の所在地については、インターネット検索で確認することが可能です。敷地面積や形状、地目に関しては、不動産登記簿謄本などで調べたり土地を所有している方へ確認したりすることで把握できます。(地目とは、原野や山林、畑といった土地の区分を示したものです。)
▼土地の安全性を調査
日本は、地震や台風といった災害の多い環境でもあります。用地を選定する際は、系統用蓄電池の設置しやすさだけでなく、どのような自然災害リスクが生じるのか、災害によってどれだけの被害を受けるのかといった点を確認しておく必要があります。専門的な分析は業者への依頼が必要ですが、リスクが高い土地をある程度除外するための作業は自社でも可能です。
自然災害リスクを調べる際は、自治体から提供されているハザードマップを活用してみましょう。ハザードマップは、被災する可能性が高い地域、避難経路などを地図に示しており、噴火や地震、洪水など災害におけるそれぞれの被災想定区域などを確認することができます。
▼地盤改良の必要性を調査
土地の形状や環境によっては、木々の伐採や土地の地盤強化をはじめとした造成工事が必要です。造成工事の規模や内容によっては、費用がかさむ可能性があります。
そのため、インターネットに掲載されている航空写真から、河川や木々の有無などをある程度確認し、造成工事の規模感を想定しておくことも大切です。用地選定まで対応してくれる施工業者へ相談する場合は、造成工事の詳細について確認しておきましょう。
騒音対策にかかるコストを用地選定で抑える
系統用蓄電池の騒音対策に関するコストは、用地選定で抑えられる場合があります。
土地の周辺に住宅などがあると、設置工事や稼働中に発生する音で負担をかけてしまいます。状況によっては、周辺住民から苦情を受けてしまうリスクもあるため、事前に騒音対策を実施する必要があるのです。
用地選定の段階で住宅など生活区域からの距離などを考慮できれば、騒音対策に必要なコストを抑えやすくなります。騒音規制の詳細は自治体などの案内を確認するとよいでしょう。
用地選定の際に工事費負担金を抑えられる土地を探す
系統用蓄電池と電力系統を接続(系統連系)するための工事にかかる費用は、敷地内に電柱や鉄塔、架空線などといった設備がない場合、新たに設備を建設しなければならないことで発生します。
しかし、土地によっては既に電柱などが設置されている場合もあり、工事費負担金を削減できる可能性もあります。こうした条件の良い用地は普及の広まっている太陽光発電所が建設されていることも多いですが、スペースや日射量的な問題からまだ空いている土地がある可能性もあります。諦めずに差がいてみることが大切です。
自社で完結している施工会社やメンテナンス業者を探す
系統用蓄電池の施工やメンテナンスができる企業の中には、設計や施工、保守管理を下請け会社に任せている企業も存在します。下請け会社と協力しながら対応している企業は、工事費用に中間マージンを上乗せしているため、どうしても費用が高くなりやすいです。
自社で全て対応している企業は中間マージンを追加しないため、その分安く施工対応してくれます。
中間マージンの上乗せは工事費用の負担増加につながり、価格面でデメリットの大きな部分です。そのため、施工会社やメンテナンス業者を選定する際は、自社で施工および管理しているかどうかという点も確認しておきましょう。
系統用蓄電池の補助金制度
系統用蓄電池の価格を抑えるためには、補助金制度について調べておくことも重要です。
たとえば、国の補助金制度「再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金」は、系統用蓄電池の導入にかかる費用を補助してもらえます。
以下に系統用蓄電池にかかわる内容を抜粋して紹介します。
補助対象の事業 | 蓄電システム(電力系統に直接接続しており、かつ電力市場などでの取引を通じて再エネの有効活用や普及拡大などに寄与できること) | |
補助対象事業者 | 日本国内で事業を営んでいる法人、補助対象設備の使用者など | |
補助対象の経費 |
設計費:事業の実施に必要な最低限の経費、基本設計費は補助対象外 設備費:蓄電システムを構成している設備 ・セル、モジュール(リチウムイオン、レドックスフローなど) ・電池システム制御部分(BMSなど) ・電力変換装置(パワーコンディショナなど) ・蓄電システム制御装置(計測装置や表示装置、蓄電システムに必要不可欠な装置) ・付帯設備(分電盤、空調など) ・その他 |
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補助金率、補助上限額 |
下記の新型蓄電システム導入に関する設計費と設備費、工事費 新規技術開発蓄電システム(長期エネルギー貯蔵技術(LDES))(最大受電電力が1,000kW以上) |
補助率3分の2以内 補助上限額20億円 |
電動車等の駆動用蓄電池のリユース、蓄電システム導入に関する設計費と設備費、工事費(最大受電電力が1,000kW以上) |
補助率2分の1以内 補助上限額20億円 |
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上記以外の蓄電システムに関する設計費と設備費、工事費(リチウムイオン、NAS、レドックスフロー・鉛など) |
(1)最大受電電力が1,000kW以上10,000kW未満 補助率3分の1以内 補助上限額10億円 (2)最大受電電力が0,000kW以上 補助率2分の1以内 補助上限額40億円 |
出典:SIIウェブサイト
なお、令和6年度の「再生可能エネルギー導入拡大・系統用蓄電池等電力貯蔵システム導入支援事業費補助金」は、2025年2月時点で終了しています。令和7年度の補助金制度も同様の時期に募集が始まる可能性があるため、早めに準備しておきましょう。
系統用蓄電池の価格はさまざまな工夫で抑えられる!
系統用蓄電池の価格相場は、2024年度時点で1kWhにつき5.4万円とされています。価格を抑えるためには、蓄電池のメーカー選びをはじめ、用地選定、用地の調査方法などを工夫することが大切です。
系統用蓄電池事業に関心を寄せている方や系統用蓄電池事業についてより詳しく知りたい方などは、今回の記事を参考にしながら和上ホールディングスの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
弊社和上ホールディングスは、系統用蓄電事業における収支のシミュレーションから用地選定、造成工事や設置工事を含め全て自社で対応しております。中間マージンの負担がないため、価格面での負担を抑えながら導入いただけます。
少しでも気になった方は、お電話やメールよりお気軽にご相談ください。