今回は、2025年度中に新築住宅の購入を検討している方に向け、国が用意している新築向けの補助金概要を解説します。昨今では、省エネ住宅の建築が求められていて、環境に優しい生活を実現できる住宅設備の導入には非常に手厚い補助金が給付されるようになっています。特に、新築時の導入を迷ってしまう方が多い家庭用蓄電池について、本年度の補助金では特別な取り扱いがなされているため、新築の購入を計画している方はぜひ情報をおさえておきましょう。
日本では、2050年カーボンニュートラルの実現が宣言されていて、住宅領域での省エネ対策が強く求められるようになっています。政府は、エネルギー基本計画等(2021年10月22日閣議決定)において、2030年度以降新築される住宅は、ZEH水準の省エネ性能が確保されることを目指すとしているなど、今後、住宅の省エネ基準はさらなる引き上げが予定されています。実際に、2025年度の補助金では、新たな省エネ住宅の基準としてGX志向型住宅が設けられ、ZEHなどよりも高額な補助金が設定されています。
2025年度の新築住宅に対する補助金は、子育てグリーン住宅支援事業が予定されています。この補助金は、太陽光発電や家庭用蓄電池などの導入も補助してくれる内容となっているため、この記事では、どのような住宅を建築・購入する際に利用可能なのか、蓄電池に対する補助金との関係性などについて解説します。
2025年度の新築補助金は子育てグリーン住宅支援事業
冒頭でご紹介したように、日本では2050年カーボンニュートラルの実現が宣言されています。そして、カーボンニュートラルの実現には、住宅領域での脱炭素化が必要不可欠と考えられていて、これに寄与する取り組みを後押しするような制度が設けられているのです。
例えば、国は2022年11月より、経済産業省、国土交通省、環境省の3省が連携して運用する『住宅省エネキャンペーン』という補助金制度を作っています。子育てグリーン住宅支援事業は、この住宅省エネキャンペーンの中の一つの補助事業で、省エネ性の高い新築住宅の入手や既存住宅の省エネリフォームを補助するという制度となっています。
な、2025年度の住宅省エネキャンペーンは以下の4つの補助事業で構成されています。
- 子育てグリーン住宅支援事業
- 先進的窓リノベ2025事業
- 給湯省エネ2025事業
- 賃貸集合給湯省エネ2025事業
先進的窓リノベ事業や給湯省エネ事業は、既存住宅の断熱改修、高効率給湯器への交換に対する補助金として有名で、2024年度も内容に多少の違いはあるものの、同じ名前で運営されていました。しかし、子育てグリーン住宅支援事業に関しては、あまり聞き馴染みがない名称であることから、2025年度に新たな補助事業として追加されたように感じますよね。ただ、この補助金については、昨年度は「子育てエコホーム支援事業」という名称で運用されていた補助金が、名称変更されたという形となっています。補助金の内容についても、「省エネ性の高い新築住宅の入手」「既存住宅の断熱、省エネ改修」を補助するといった感じで、補助金の大枠は変わっていないと言えます。つまり、子育てグリーン住宅支援事業は、子育てエコホーム支援事業の後継事業といった扱いと考えていただければ良いです。なお、補助金の詳細まで確認すると、全く同じ内容で継承されているわけではなく、対象世帯の拡大や省エネ住宅の基準の見直しなど、いくつかの変更が加えられています。
子育てグリーン住宅支援事業の概要について
子育てグリーン住宅支援事業は、「子育て世帯」や「若者夫婦世帯」が中心であるものの、全世帯が対象となる補助金で、高度な省エネ性能を有した「注文住宅・分譲住宅・賃貸住宅」を新築する場合や、既存住宅の断熱性や省エネ性を高めるためのリフォーム工事を行う際、それにかかる費用の一部を補助してくれるという制度となっています。
この補助金は、2050年カーボンニュートラルの実現目標が背景にあり、以下のような目的で制定されたとされています。
- エネルギー価格などの物価高騰の影響を特に受けやすい子育て世帯などに対して、「ZEH水準を大きく上回る省エネ住宅」の導入を支援する
- 2030年度までの「新築住宅のZEH基準の水準の省エネルギー性能確保」の義務化に向けた支援を行う
子育てグリーン住宅支援事業は、省エネ性能が高い住宅を広く普及させることで、住宅領域での脱炭素化を推し進めることが主な目的となっています。2024年度の子育てエコホーム支援事業に関しては、新築部門の補助金は、「子育て世帯」「若者夫婦世帯」に限定されていたのですが、後継事業となる子育てグリーン住宅支援事業では、省エネ住宅の条件によって『新築』であっても全世帯が対象になるなど、補助対象が大きく拡大しているという点が特徴です。
なお、この補助金における「子育て世帯」「若者夫婦世帯」の定義は以下の通りです。
子育てグリーン住宅支援事業の対象と補助金額について
それでは、子育てグリーン住宅支援事業について、具体的にどのような家を建てる場合に補助金が給付されるのかという補助対象や、いくらぐらいの補助金が給付されるのかについて解説します。
なお、子育てグリーン住宅支援事業は、大きく新築部門とリフォーム部門に分けることができるのですが、この記事では新築部門の補助対象と補助金額をご紹介します。
新築住宅に対する補助金額について
子育てグリーン住宅支援事業は、2050年カーボンニュートラルの実現を目指し、省エネ性能の高い住宅を建築・購入する際、その費用の一部を補助してくれます。新築住宅の入手に対する補助金額は、リフォームの補助額と比較すると、かなり手厚い内容となっています。
子育てグリーン住宅支援事業の補助額は、省エネ住宅の種類によって区分されていて、以下のような補助金額となっています。
- GX志向型住宅の場合:160万円/戸(すべての世帯が対象)
- 長期優良住宅の場合:80万円/戸(子育て世帯、若者夫婦世帯が対象)
- ZEH水準住宅の場合:40万円/戸(子育て世帯、若者夫婦世帯が対象)
長期優良住宅とZEH水準住宅に限っては、古家の除却が伴う場合の1戸当たり20万円の補助金が加算されます。
GX志向型住宅は、2025年度の補助金から新たに制定された省エネ住宅の基準です。補助額からも分かるように、従来型の省エネ住宅を上回る省エネ基準が設定されています。GX志向型住宅であれば、160万円という非常に高額な補助金が設定されているうえ、全ての世帯が対象となっているなど、国がGX志向型住宅の普及を目指しているのだとよくわかります。
なお、上記の補助金を受け取るためには、以下の条件を満たしている必要があるので注意しましょう。
- 居住用部分の床面積は、50㎡以上240㎡以下であること
- 土砂災害特別警戒区域、災害危険区域に建てられた住宅ではないこと
- 市街化調整区域に建てられた住宅ではないこと
1と2の条件に関しては、特に気にしなくてもクリアできると思いますが、③の市街化調整区域については該当するケースが意外に多いと考えられるので注意しましょう。
補助対象となる新築住宅の性能要件について
子育てグリーン住宅支援事業は、省エネ性の高い住宅の普及を後押しすることが目的です。したがって、補助対象となる住宅に関しては、きちんと性能要件が設けられています。ここでは、子育てグリーン住宅支援事業の対象となる省エネ住宅に求められる要件をご紹介します。
【ZEH水準住宅】
ZEH水準住宅は、従来型の省エネ住宅の中では、最も省エネ性能が高いと位置付けられていた住宅の形です。具体的には、以下の要件を満たした住宅が、子育てグリーン住宅支援事業の補助対象となります。
- 断熱等性能等級:等級5以上
- 一次エネルギー消費量削減率(再生可能エネルギーを除く):20%以上
ZEHは、「net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の頭文字をとった略語で、「エネルギーの収支をゼロにする家」という意味があります。補助金の要件では、再エネ設備を除いて一次エネルギー消費量削減率が20%以上と設定されていますが、再エネ設備を含めた場合、自宅で作るエネルギーと消費エネルギーの収支を実質的にゼロ以下にすることを目指す住宅がZEHと定義されます。なお、先ほど紹介したように、国は2030年以降の新築住宅については、この水準の省エネ性能が確保されることを目指しています。
【長期優良住宅】
次は長期優良住宅です。長期優良住宅は、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が講じられている住宅を指し、所管行政庁(都道府県、市区町村等)にて認定を受けた住宅です。補助金の対象となるには、以下の省エネ性能が確保されていることが条件となります。
- 断熱等性能等級:等級5以上
- 一次エネルギー消費量等級:等級6以上
長期優良住宅については、省エネ性能のみを考慮した住宅の形ではありません。上で紹介したように、長期優良住宅は「長期にわたり良好な状態で使用する」ことを想定とした住宅の形で、家の省エネ性能により脱炭素などの環境負荷軽減を実現するのではなく、家の建築から解体までの生涯CO2排出量を削減することで環境に貢献することができるといった考えの住宅です。ZEHやGX志向型住宅は、太陽光発電などの再エネ設備を設置するのが基本となるのですが、長期優良住宅の場合、再エネ設備の設置は認定条件になっていないなど、単純に住宅の省エネ性を高めた住宅とは少し異なります。
ちなみに、昨今建設されている新築住宅に関しては、長期優良住宅の基準が標準仕様となっている住宅メーカーが増えています。そういった会社に依頼して家を建てる場合、補助金を受け取りやすいはずです。
【GX志向型住宅】
GX志向型住宅は、ZEH基準の水準を大きく上回る省エネ性能を有する脱炭素志向型の住宅と定義されています。先ほど紹介したように、従来型の省エネ住宅では、ZEH水準が最も省エネ性能が高いとされていたのですが、2050年カーボンニュートラルの実現には、これ以上の性能を持つ住宅の普及が必要と考えられGX志向型住宅という基準が新たに設けられています。
GX志向型住宅に求められる性能は、以下の通り、非常に高いです。
- 断熱等性能等級「6以上」
- 再生可能エネルギーを除いた一次エネルギー消費量の削減率「35%以上」
- 再生可能エネルギーを含む一次エネルギー消費量の削減率「100%以上」
※寒冷地等に限っては75%以上(Nearly ZEH)も可。都市部狭小地等の場合に限っては再生可能エネルギー未導入(ZEH Oriented)も可。
GX志向型住宅は、非常に高い断熱性能が求められます。住宅の断熱性能は、断熱等性能等級という指標で表されているのですが、2025年現在、最高等級は「7」となっています。GX志向型住宅は、この断熱等性能等級について、上から2つめの「6」という非常に高い性能が求められるのです。
また、省エネ性能に関しても、再エネ設備を除いた状態での一次エネルギー消費量の削減率が35%以上と、ZEH水準よりも高く設定されています。また、一般地に建てられる住宅については、再エネ設備を含めて一次エネルギー消費量の削減率「100%以上」と設定されています。これは、住宅で使用する電力の全てを再エネ設備で賄えるようにするという意味で、従来型の省エネ住宅と比較しても、かなり高い性能が求められているということがよくわかります。
ただ、GX志向型住宅は、求められる性能要件は非常に高いものの、1戸当たり160万円という高額な補助金が用意されています。これは、長期優良住宅やZEH水準住宅と比べると倍以上の金額となっていますし、国はGX志向型住宅の普及を目指しているという意思が透けて見えますね。
子育てグリーン住宅支援事業は蓄電池補助金と併用できる?
ここまでの解説で、2025年度中に新築住宅の購入を考えている方で、ZEHや長期優良住宅、GX志向型住宅など、省エネ性能が高い住宅を入手する際には、非常に手厚い補助金が用意されているということが分かっていただけたと思います。
省エネ住宅は、一般的な戸建住宅と比較すると、建物の断熱対策や高性能な住宅設備の設置が必要になるため、建築コストが割高になってしまいます。しかし、断熱性能や省エネ性能が高い住宅で生活する場合、日々の生活にかかる光熱費を大幅に削減することができるようになるため、中長期的な視点で考えた時には、トータルコストがお得になる可能性が高いと言えます。2025年度であれば、補助金を利用することで初期のコスト負担も軽減することができるため、まさに高性能な住宅を建築するにはうってつけのタイミングといえるでしょう。
それでは、2025年度の新築住宅の入手に対する子育てグリーン住宅支援事業は、その他の補助金と併用できるのでしょうか?先ほど紹介したように、子育てグリーン住宅支援事業は、住宅省エネキャンペーンを構成する一つの事業という扱いで、これ以外に給湯器や窓の断熱改修に対する補助金が用意されています。当然、複数の補助金を併用できれば、それだけコスト負担を軽減できるわけなので、誰でも補助金の併用はできないのかな…と考えてしまいますよね。
そこでここでは、子育てグリーン住宅支援事業とその他の国の補助金との関係性について簡単に解説します。
住宅省エネキャンペーンの併用について
住宅省エネキャンペーンは、4つの補助金事業で構成されています。子育てグリーン住宅支援事業は、省エネ性能が高い新築住宅の入手や既存住宅の省エネ・断熱改修リフォームに対して補助金を給付する事業となります。
そして、このほかにも高効率給湯器の導入を補助する給湯省エネ2025事業や、窓の断熱改修に対する先進的窓リノベ2025事業など、住宅の省エネ化に関わる補助金事業がたくさんあるのです。それでは、これらの補助金について、併用することは可能なのでしょうか?結論から言ってしまいますが、新築の入手に対して子育てグリーン住宅支援事業を利用する場合、その他の住宅省エネキャンペーンを構成する補助事業は利用できません。
まず、給湯省エネ事業との関係性についてです。給湯省エネ事業は、給湯器の交換などリフォーム工事だけでなく、新築住宅への高効率給湯器の設置も対象となります。こう聞くと、補助金は併用できそうと感じますが、経済産業省の資料で以下のように解説されています。
原則として、本事業と補助対象となる給湯器について、国の他の補助制度との併用はできません(例えば、新築住宅を建てられる際に、子育てグリーン住宅支援事業による支援を受けた場合、子育てグリーン住宅支援事業では給湯器も含めた新築住宅について補助しているため、本補助金の併用はできません)。
引用:経済産業省資料
GX志向型住宅を建てる際に子育てグリーン住宅支援事業を利用する場合、160万円の補助金を受け取ることが可能です。ただ、この補助金額の中には、給湯器の設置部分も含まれているという扱いになるため、そこに対して給湯省エネ事業を利用することができないという考えになっているのです。
また、先進的窓リノベ事業については、「既存住宅において窓の断熱改修を補助する」ことが目的の補助金です。つまり、この補助金はリフォーム工事が対象となる補助金のため、新築住宅の入手に利用する子育てグリーン住宅支援事業と併用することはできないのです。なお、子育てグリーン住宅支援事業のリフォーム部門で利用する場合、先進的窓リノベ事業と併用することは可能です。
※国の補助金事業ではなく、自治体の補助金と併用することは可能な場合が多いです。お住まいの地域に併用できる補助金がないか確認してみると良いでしょう。
家庭用蓄電池導入の補助金は併用可能!
前項でご紹介したように、2025年度の新築住宅に対する補助金制度「子育てグリーン住宅支援事業」は、その他の補助金と併用することは基本的にできない仕組みになっています。これは、住宅に対して給付される補助金は、家の断熱対策や省エネ設備の設置など、すべての面を含めて補助しているという考えだからです。
しかし、家庭用蓄電池の設置に対する補助金である「DRに対応したリソース導入拡大支援事業」については、子育てグリーン住宅支援事業との併用が可能とされています。
「DR」は、ディマンド・リスポンスの略称で、電力の使用量を制御して、電力需給バランスをとる仕組みのことを指しています。GX志向型住宅やZEH水準住宅の場合、再エネ設備の設置が求められます。上で解説したように、GX志向型住宅は、再エネ設備を含めて一次エネルギー消費量の削減率「100%以上」という非常に高い基準が設けられています。これを実現するためには、家庭用蓄電池のような「電気を蓄えることができる設備」が非常に有用となるため、DRに活用できる設備として、補助金の併用が可能となっているのです。実際に、国が公表している資料の中でも、以下のように紹介されています。
2050年カーボンニュートラルの実現に向けて家庭部門の省エネを強力に推進するため、新築住宅の省エネ化への支援を強化する必要。国土交通省及び環境省による「住宅の新築・購入」を支援する補助制度と、経済産業省による「蓄電池の設置」を支援する補助制度について、3省の連携により、各事業を組み合わせて利用すること(併用)を可能とする。
引用:国土交通省資料より
家庭用蓄電池に対する補助金については、家庭用蓄電池を導入するためにかかる費用のうち、3分の1以内を補助するとなっています。したがって、子育てグリーン住宅支援事業の対象となる省エネ住宅の建築を考えていて、「蓄電池の設置はどうしようか?」と迷っている方がいれば、蓄電池部分も補助金の利用を検討してみると良いでしょう。
参照:国土交通省資料
まとめ
今回は、2025年度の新築住宅の購入に利用できる補助金「子育てグリーン住宅支援事業」の概要と、家庭用蓄電池に対する補助金が併用できるのかについて解説しました。
日本では、2050年カーボンニュートラルの実現に向け、住宅領域での省エネ対策が強く求められるようになっています。記事内でもご紹介したように、2030年以降の新築は、ZEH水準の省エネ性能が確保されることを目指すと国が掲げているほか、地方自治体などでは新築への太陽光発電設置義務化の動きが強まっています。
ただ、住宅の省エネ性能を向上させるには、高性能な設備、建材の使用が求められるため、建築コストが高くなってしまう…という問題があります。そこで、省エネ住宅の普及を後押しするため、国が手厚い補助金制度を運用するようになっているのです。
2025年度は、子育てグリーン住宅支援事業により、最大160万円という過去に例を見ないほど高額な補助金が給付されることになっています。さらに、省エネ住宅の新築に合わせて蓄電池の設置も行う場合、蓄電池に対する補助金を併用することができるようになっています。
現在、新築住宅の購入を考えていて、子育てグリーン住宅支援事業の利用を検討しているという方がいれば、家庭用蓄電池の導入も同時に行うのがおすすめです。家庭用蓄電池は、太陽光発電など、再エネ設備の機能を最大限発揮させることができるため、より省エネな生活を実現するための設備として役立ってくれます。2025年度は、導入にかかる費用の1/3を補助してくれる制度などもあるので、新築の購入に合わせて蓄電池の設置を検討しているという方は、お気軽にお問い合わせください。