2023.02.14
ソーラーカーポートvs屋根の太陽光、徹底比較7番勝負

自宅で太陽光発電を導入しようとお考えの方にとって、今は選択肢が広くなっている時代です。以前は屋根の上に太陽光パネルを設置する「屋根の太陽光」が主流でしたが、今ではソーラーカーポートといって駐車場の上に屋根として設置するカーポートにも太陽光パネルを設置できる方法が確立しています。太陽光発電を導入するのであれば経済的なメリットを最大化したいというのは、多くの方に共通する願いでしょう。
そこで住宅用太陽光発電の2大勢力ともいえる、屋根の太陽光とソーラーカーポートについて、それぞれのメリットとデメリットを比較してみたいと思います。どちらにするか迷っている方はぜひ、参考にしてください。
目次
人気が高まるソーラーカーポートとは

ソーラーカーポートとは、「カーポート付き太陽光発電」のことです。自宅に駐車場を設置している場合、クルマを直射日光や雨風から守るために屋根を付けているケースは多いと思います。これがカーポートで、この屋根のスペースを活用して太陽光パネルを設置し、クルマの保護と再生可能エネルギーの発電を両立できるシステムとして近年普及が進んでいます。
メリットについては後述していきますが、駐車場に設置する発電設備なので、自宅にEV(電気自動車)を保管している場合は駐車場がそのまま発電所、そして充電所になります。
今や定番、屋根の太陽光とは

ソーラーカーポートが駐車場の屋根を利用した太陽光発電設備であるのに対して、屋根の太陽光とは自宅の屋根に太陽光パネルを設置する太陽光発電システムのことです。家庭用太陽光発電の普及が始まった頃は国や自治体の補助金が追い風となって自宅の屋根に太陽光パネルを設置するモデルが一気に普及しました。
今は補助金がないものの太陽光パネルをはじめとする機器類の価格が下がったため、補助金が無くても無理なく導入できる環境が整備されています。
今も家庭用の太陽光発電といえば、屋根の太陽光は定番といえます。
ソーラーカーポートvs屋根の太陽光、比較7番勝負

その1 スペースの有効活用
空いたスペース、使っていないスペースのことをデッドスペースといいます。大豪邸に住んでいるのであれば話は別ですが、自宅敷地内のスペースを少しでも有効活用したいというのは、多くの方に共通する思いでしょう。
その意味で、太陽光発電は極めて優れた仕組みです。屋根の上やカーポートの上など、他に使い道が特にないスペースを使って発電ができるのですから、一石二鳥、一石三鳥も期待できます。
その意味ではソーラーカーポートと屋根の太陽光はどちらも優位性があるので引き分けと言いたいところですが、やはりデッドスペースとして他に使い道がないというとカーポートのほうが上をいくのではないかと思います。なぜなら、屋根の上であれば太陽熱温水器を取り付けることもできますし、採光窓を設置することも考えられます。
それに対してカーポートは本当にクルマを直射日光や雨風から守る役割しかないので、そこに太陽光パネルを設置するアイディアは画期的です。しかもクルマを直射日光から守りつつ発電までできるのですから、デッドスペースの有効活用の面ではソーラーカーポートに軍配が上がります。
その2 収益性
太陽光発電は、収益性で選ぶ時代です。経済的メリットが注目されて投資目的で太陽光発電所を運営する投資家も増えているほど、太陽光発電の収益性は安定していることが大きなメリットです。
収益性の面からソーラーカーポートと屋根の太陽光を比較すると、やはり屋根の太陽光のほうが規模の大きな発電ができるため、多くの事例では屋根の太陽光に軍配が上がります。企業向けの大きな駐車場に設置するソーラーカーポートであれば屋根の太陽光とそん色のない規模で運用が可能になると思いますが、家庭用のカーポートは大きくても2台分ほどのスペースなので、屋根の太陽光ほどの規模感を出すのは難しいでしょう。ただし、近年では最初からソーラーカーポートを設置する事例においては、規模感でそん色のない事例も見られるようになっています。
太陽光発電の導入にあたってコストパフォーマンスを含めて比較すると、一般的には屋根の太陽光のほうが収益性はあるといえます。
その3 EVとの親和性
EV(電気自動車)を自宅に駐車している場合、自宅に太陽光発電設備があるとそこが発電所であり、充電設備になります。太陽光で生み出した電力でEVが走るというのは究極のエコスタイルなので、これを実現する導入事例が増えています。EVが必要とする全電力を太陽光発電でまかなうことができれば、燃料費ゼロのクルマが誕生します。
これについては、クルマを置く場所に発電設備があることが理想なので、断然ソーラーカーポートのほうが有利です。ただし、ソーラーカーポートの発電量だけではEVの必要量をまかなうことが難しいため、さらにEVを走らせるだけの発電量を求めるのであればソーラーカーポートと屋根の太陽光を併用するのが望ましいでしょう。
その4 日当たり
発電量は太陽光発電システムの規模に比例するので、規模が大きな発電設備であるほど発電量は大きくなります。ただし、それは同じ条件で太陽光が当たっている場合の比較です。
屋根の太陽光は、少なくともその家に屋根より高い場所がないので自宅敷地内に太陽光を遮るものはないでしょう。そのため、降り注ぐ太陽光による発電量を最大化できます。
これに対してソーラーカーポートは自宅の横などに設置するため、どうしても自宅によって陰になる時間帯や場所が生まれてしまいます。もちろん施工業者はその影響が最も少なくなるようにプランを提案すると思いますが、立地条件によっては日陰の影響を免れないでしょう。
日当たりでの比較では、条件によってソーラーカーポートのほうが屋根の太陽光よりも不利になることがあります。
その5 初期費用
初期費用については、ソーラーカーポートと屋根の太陽光のどちらであっても設置する規模に比例するため、どちらかに優位性があるということはありません。かつては屋根の太陽光に補助金が出ていましたが、今では国の補助金はありませんし、自治体レベルで補助金を出しているところも少数です。
東京都のように新築住宅の屋根に太陽光発電の設置を義務付けるような自治体では実質的な補助金を得られる可能性はありますが、これもあまり評判がよくないので少数止まりでしょう。
初期費用についてはどちらであっても百万円単位でイニシャルコストが必要になることで共通しています。
その6 税金との関わり
税金との関わりを考えた時に、知っておくべきことがあります。それは建築物と固定資産税の関わりです。カーポートの外観を見ると、車庫に付いている簡易的な屋根に見えるかもしれません。しかし、支柱があって屋根のある構造物なので法律上は建築物として取り扱われることがあります。
建築物である以上、それは自宅の母屋と同じように固定資産税の課税対象となる可能性があります。課税対象になるか否かを決めるのは規模と、構造です。
カーポートは四方に壁がなく屋根だけがついている構造になっているものが大半ですが、これを3方向以上壁で囲むと「建物」となります。それだけの構造物になると基礎を打ち込む必要もあるため、こうなると立派な建物です。
その上に10kW以上の規模で太陽光パネルを設置すると、ソーラーカーポートも建物として取り扱われ、固定資産税が発生します。ただしこの規模になると家庭用というよりも業務用の規模になるため、家庭用のソーラーカーポートではあまり関わりはないと思います。
その7 建ぺい率との関わり
前項ではソーラーカーポートが建物として取り扱われる可能性について述べました。そこでは税金との関わりに注意する必要性を解説しましたが、ソーラーカーポートが建物として取り扱われると、建ぺい率の問題も生じます。
建ぺい率とは、土地の面積に対して建物を建築して良い面積の比率です。土地に対して母屋が建ぺい率いっぱいまでの面積になっていると、それ以上敷地内に建物を増やすことができません。ソーラーカーポートが建物として取り扱われると、その部分が違反になってしまう恐れがあります。
屋根の太陽光は元から建物として取り扱われている母屋の屋根に設置するため、こうした問題とは無縁です。
ソーラーカーポートが向いている人

7番勝負でソーラーカーポートと屋根の太陽光を比較しました。それを踏まえてソーラーカーポートが適している人というのは、以下の条件に1つでも多く合致する人です。
・車庫の日当たりが良い
車庫は一般的に、あまり日当たりの良くないところに設置されます。そのほうがクルマに当たる直射日光を少なくできますし、車庫に日当たりは必要ないからです。しかし立地条件によっては日当たりの良い場所に車庫が設置されていることもあるので、その場合はソーラーカーポートが適しています。
・屋根に太陽光パネルを設置するのが難しい
建物の強度や採光窓、さらには自宅の景観を損ねたくないといった理由で屋根に太陽光パネルを設置したくない場合があります。その場合は屋根の太陽光は難しいので、代替案としてソーラーカーポートが考えられます。
・すでに屋根に太陽光パネルを設置している
すでに屋根に太陽光パネルを設置していて、そのメリットを実感している家庭でさらに発電量を増やして収益性を高めたいという場合は、ソーラーカーポートが有望な選択肢になります。
・車庫の駐車スペースが2台分以上ある
車庫の駐車スペースが2台分以上あるような場合は、ソーラーカーポートも出力の大きなタイプを選択できます。クルマが1台分のカーポートだと設置できる太陽光パネルもそれほど多くはならないので、車庫が広いほどソーラーカーポートにするメリットは大きくなります。
・EVを使用している、使用する予定がある
すでにEVを使用している、もしくは使用する予定があるのであれば自宅の車庫に充電設備が必要になります。クルマを停めている真上に発電設備を用意すれば太陽光発電によってEVの充電ができるため、理想的なライフスタイルになります。
・安い費用で始めたい
太陽光発電を始めたいと思うものの、初期費用に抵抗を感じているのであれば規模の関係から屋根の太陽光よりも比較的低予算で始められるソーラーカーポートがおすすめです。
屋根の太陽光が向いている人

ソーラーカーポートと比較している屋根の太陽光が適している人についても整理しました。以下の項目に1つでも多く当てはまる人は屋根の太陽光を検討するべきでしょう。
・光熱費の削減効果をより多く実感したい
ソーラーカーポートよりも屋根の太陽光のほうが出力の大きな発電設備を設置できるケースが多いので、規模の大きな太陽光発電によって光熱費を大幅に削減したいと考えている方には、屋根の太陽光が適しています。
・売電収入に期待したい
上記の項目と同様の理由で、自宅で消費しきれなかった電力を売ることによって収益を確保したいと考えている方も、屋根の太陽光が適しています。
・災害時の非常用電源としても使いたい
近年、日本の各地で頻発している自然災害の被災地では、太陽光発電がしばしば注目を集めています。災害時に停電が発生しても自宅に太陽光発電システムがあれば自立運転モードにすることで十分な太陽光がある時間帯は電力を使うことができます。今後も自然災害は全国各地で発生すると考えられるので、もしもの時の備えとして太陽光発電を使用したいという場合は、規模の大きな発電設備を設置しやすい屋根の太陽光がおすすめです。
・日当たりが良く広い屋根がある
自宅内に屋根よりも高いとこに建築物があることは少ないと思いますが、近隣の建物や樹木などとの関わりで自宅屋根に十分な日当たりがあるのであれば、その屋根を太陽光発電の候補地と考えるのは適切です。
近年では太陽光発電を設置することを前提に家を設計することが多いため、太陽光発電の設置を前提に家を新築する方も、屋根の太陽光で大きなメリットを享受できるでしょう。
・そもそも自宅に車庫がない
ソーラーカーポートは、車庫の上に取り付けることでデッドスペースを有効活用できる仕組みです。そもそも自宅に車庫がない、クルマを所有していないという家庭にはソーラーカーポートを設置する場所がないので、屋根の太陽光しか選択肢はありません。
まとめ

人気が高まっているソーラーカーポートと、太陽光発電の定番ともいえる屋根の太陽光。この両者を7番勝負で比較し、それぞれに適している人について解説しました。両方を設置するのが理想ではありますが、どちらか一方を取り付けるのであれば当記事の比較やそれぞれの適性を参考にしてください。