蓄電池は電気代の削減や停電対策になる、さらに太陽光発電と併用するとメリットがもっと大きくなるとして人気が高まっています。しかし、ネットなどの情報を見ると、「蓄電池を導入すると後悔する」という主旨の情報もチラホラ見受けられます。とてもメリットが多く死角はないように見える蓄電池ですが、ケースによっては後悔することもあるのでしょうか。
当記事では蓄電池を導入すると後悔するという「後悔説」の言い分やそれが事実であるのかどうかを解説し、その上で失敗しない蓄電池の導入パターンを提示したいと思います。これから蓄電池を導入しようかと検討している方にとってはとても気になる情報だと思いますので、ぜひ最後までお読みください。
蓄電池を導入すると後悔する?
「蓄電池を導入すると後悔する」という論調の記事やネット動画などの主張は、おおむね共通しています。実際に導入して後悔した人の意見も含めると、以下の3つを「後悔」しているという声が目立ちました。
電気代が劇的に下がるというが…?
蓄電池のメリットはたくさんありますが、そのなかでも多くの人が関心を持っているのが電気代の削減効果です。深夜の安い電力を使って充電をしてそれを昼間の電気代が高い時間帯に利用すれば電気代の削減になります。太陽光発電と併用していると電気代の節約効果はもっと高くなるので、「蓄電池を設置すれば電気代が劇的に安くなる」と思うのは当然でしょう。
しかし、実際にはそこまでの効果は感じられなかったという声があります。これが本当なら、「後悔説」の大きな根拠になります。
これについては状況や電気の使い方によってケースバイケースなので、詳しくは後述していきます。この段階では言えるのは、確かに思っていたよりも電気代が安くならないのでがっかりしている人がいるのは事実だということです。
太陽光発電との相性抜群だというが…?
蓄電池は太陽光発電と併用してこそメリットが最大化するといわれています。太陽光発電を導入していると昼間の発電量を家庭内で使いきれずに余らせることがよくあります。それを売電すれば収入になりますが、蓄電池を導入するとそれを自宅内で貯めておいて夜間や悪天候の日に使うといったことが可能になります。これは太陽光発電の自家消費モデルと呼ばれるもので、電力の自給自足が完成すれば電気代の節約効果はさらに大きくなります。
このことについては事実なので期待外れということはほとんどないはずですが、施工店の提案内容が間違っていたり、工事の品質が悪いなどの理由で十分な発電量が得られないといった原因で後悔につながっていることはあるかもしれません。
思っていたほどのメリットがないような…?
漠然とした言い方になりますが、「もっとメリットがあると思っていた」という声も散見されます。これについては主観によるところが大きく、後悔していると語っている人が蓄電池に何を期待していたのかにもよるでしょう。
蓄電池のメリットのなかには、災害時の停電対策といったように通常時はメリットして意識しにくいものも含まれています。こうしたメリットは非常時になって初めて有難味が分かるものだけに、通常時は「メリットが少ない」と感じてしまうのかもしれません。
地球環境保護やエネルギーの有効利用というのも蓄電池のメリットですが、これも家庭内のメリットとしては見えにくい部分があるので、こうした主観による後悔は仕方ないのかもしれません。
蓄電池「後悔説」の言い分
蓄電池を導入すると後悔するという意見を、当記事では「後悔説」と呼んでいます。この「後悔説」にはどんな根拠があるのか、その言い分を列挙してみました。
導入費用が予想以上に高い
蓄電池という新たな機器を導入し、そのための工事もするので、そのためには費用が発生します。この費用が思っていたよりも高かったと感じると、後悔につながりやすくなります。
蓄電池を単体で導入すると、その費用は50万円から150万円ほど、そして工事費用が数十万円といったところです。これらを合わせると安くても100万円近くの費用がかかることになり、「高い」と感じる人も少なくないでしょう。
電気代の節約という経済的なメリットを求めて蓄電池を検討する場合、何年で元が取れるのかも気になるところでしょう。数年ですぐに元が取れるというわけではないところも、「やっぱり高いじゃないか」となってしまう原因になります。
意外に知られていない維持コストや手間が発生する
蓄電池は設置したら終わりというわけではなく、設置している間は適切なメンテナンスが必要です。施工店に依頼して定期点検をしてもらったり、必要に応じて部品の交換をすることもあります。こうした費用は金銭的な維持コストとなります。
また、金銭的なコスト以外にも蓄電池が本来の性能をしっかり発揮できるように、利用者も掃除をしたり、正常に稼働しているかのチェックをする必要があります。細かいことまでいちいち業者に依頼すると費用もかさんでしまうので、自分でできることは自分ですることも重要です。異音がしていないか、異臭が出ていないかといったチェックも含めると、こうした手間は時間的・労力的なコストとなります。
思っていたよりも面倒だと感じたとしたら、それは後悔につながる可能性があります。
補助金を使えるとは限らない
蓄電池については環境性能の高さや電力消費量削減に資することから国も設置を奨励しており、補助金の制度が設けられています。とはいえ、毎年同じ制度があるわけではなく、名称や補助額、条件などが毎年のように変わるため、とても複雑です。その複雑さや、予算消化によって早期に受付終了になってたなどの理由によって、補助金を当てにしていたのに使えなかったという事例は少なくありません。
期待していた補助金が使えなかったとなると金銭的な負担が大きくなるため、後悔する原因になったとしても不思議ではありません。
予想していたほど使わない
蓄電池の導入によって電気代を安くしたいと考える人は、すでに電気代が高いことに問題意識を持っている可能性が高いでしょう。そのため、すでに暑さや寒さへの対策をしており、積極的に節電をしているかもしれません。
蓄電池が最も活躍するのは、電力消費量が多い家庭です。すでにしっかり節電している場合は、思っていたほどのメリットが得られない可能性もあります。
蓄電池には寿命がある
私たちが日常的に使っているスマホにも、蓄電池が内蔵されています。この蓄電池は使い続けていると蓄電量が低下していき、何となくバッテリーの消耗が速くなるように感じます。これは内蔵されているリチウムイオン電池の劣化によるもので、同じリチウムイオン電池を使用している家庭用蓄電池でも同様の現象が起きます。
蓄電池の寿命は「サイクル」で表記されており、100%まで充電したものを0%まで使ったら1サイクルと計算します。蓄電池の各メーカーは使用できるサイクル回数の目安を表示しているため、寿命の参考になります。例えばシャープの「JH-WBシリーズ」のサイクル数は12,000回なので、12,000回の充放電ができるという意味です。
もちろんこの回数だけの充放電をしたら突然使えなくなるわけではありませんが、蓄電池は消耗する機器であり、寿命があることを押さえておいてください。
もっとも、これはほとんどのモノにおいていえることであり、蓄電池も例外ではないというだけのことです。
太陽光発電と併用していると発電量が低下することがある
太陽光発電と蓄電池を併用する場合、両方の電流変換を1台でこなすハイブリッド型のパワーコンディショナーを導入するケースが大半です。文字通り一人二役の活躍をするのですが、その分負担も大きくなります。パワーコンディショナーは消耗品なので、2つの機器からの電流変換をしていると劣化も速く進み、年を経るごとに変換効率が低下していきます。
このことにより、太陽光発電の発電量(電力として使用できる量)が低下してしまうことがあるわけです。
ただしこれは設置後すぐに起きる現象ではなく、毎年わずかに劣化していくだけなので、見た目に発電量が減っていくというイメージではありません。
悪質な販売店、施工店がある
ネット上での情報共有や淘汰によって近年ではあまり聞かれなくなりましたが、悪質な販売店、施工店に依頼してしまったばかりに満足のいく結果とはならず、後悔しているという声は実際にあります。
太陽光発電の普及が始まった黎明期は悪質な業者が今よりも多く、「被害」の事例は実に多くありました。そういった悪意をもった業者は激減していますが、今でも依然として問題なのが、悪意はないものの機器選びの提案や工事の品質が未熟であるがゆえに、後悔につながってしまうような仕事をしてしまう業者が存在していることです。
これについては後悔しない販売店、施工店選びの章で解説しますので、ぜひ参考にしてください。
蓄電池で後悔する人は、こんな人
これから蓄電池の導入を検討している方々に向けて、「こんな人が後悔する」という要件を紹介します。ここで挙げる要件に多く当てはまる方は、蓄電池を導入すると後悔してしまうかもしれません。
昼間の電力消費が少ない
蓄電池が最も威力を発揮するのは、昼間の電気代が高い時間帯に電力会社からの購入分を減らし、電気代の削減に寄与するパターンです。しかし、昼間に在宅している人がほとんどおらず無人であることが多いような家庭の場合、蓄電池に貯めた電力を使うこともあまりありません。そのため、蓄電池による電気代の削減効果は低くなってしまいます。
昼間の電力消費量が極端に少ないと感じるのであれば、蓄電池を導入しても後悔することになってしまうかもしれません。
予算とコストパフォーマンスに対する見通しがあいまい
蓄電池を導入したものの後悔していると語る人たちの声のなかには「思っていたよりも高くついた」というものが多く見られます。これはつまり、実際に使った費用と効果が釣り合ってないと感じているわけで、厳しい言い方にはなりますが、事前の予算とコストパフォーマンスの見通しが甘かった可能性が高いでしょう。
検討段階で予算とコストパフォーマンスに対する見通しがあいまいだと、実際に導入しても同じ心境になる可能性があります。販売店や施工店はしっかりとコストパフォーマンスについての説明をしてくれるはずなので、実際に導入したらどうなるのかを事前にしっかりイメージしておきましょう。
すでに節電のためにかなりの努力をしている
先ほど述べたように、すでに節電のために目一杯の努力をしている場合、蓄電池を導入しても期待通りの効果は得られないかもしれません。すでに節電の意識が高く、蓄電池が能力を発揮できる余地が少ないからです。
このこと自体は決して悪いことではないので、販売店や施工店に相談する際には、これまでやってきた節電に関する努力についても伝えた上で提案を受けるようにしてください。
停電が起きても気にならない/停電が起きにくい地域に住んでいる
停電時に電力を使えることは蓄電池の大きなメリットですが、そもそも1日や2日くらい停電になっても構わないと考えるのであれば、このメリットはあまり関係がないかもしれません。自宅内で医療機器を使用していて電力供給が止まると命に関わるような場合は蓄電池が必須といえますが、それ以外の場合は主観によって考え方が分かれるところでしょう。
また、地域的に停電が起きにくい場所に住んでいる場合も、停電のことをあまり意識する必要はなさそうです。東日本大震災の直後に全国各地で実施された計画停電の対象外だった場所に住んでいる場合は、今後も停電のリスクは低いと考えられます。
マンションなどの集合住宅で設置スペースを確保しにくい
蓄電池に関する後悔の理由には、設置スペースの問題も多く見られます。マンションなどの集合自宅だと特にその傾向が強く、適切な設置場所がなく無理に設置したら後悔することになった、というケースは考えられます。
というのも、蓄電池には「設置するのに適さない場所」があるからです。以下のような条件の場所に設置するのは、おすすめできません。
- 高温で多湿
- 風通しが悪い
- 直射日光が当たる
- 塩害による影響を受ける
他に適切な設置スペースを見つけられなかったばかりに、こうした条件の場所に無理に設置をすると寿命を短くしてしまったり、故障が頻発する原因になります。これだと蓄電池の本来の能力を発揮できませんし、かえってお金ばかりかかることにもなりかねません。
設置スペースについては販売店、施工店としっかり相談して条件の良い場所を探すようにしましょう。
初期費用が大きくなることを許容しにくい
長期的に見ればコストパフォーマンスが良く、メリットのほうが大きくなることが分かってたとしても、一度に100万円クラスの出費になることを許容できない人は、設置後に後悔しやすい人です。
蓄電池による経済的なメリットは徐々に出るものであり、すぐに劇的な変化が起きるわけではありません。その一方で「高いお金を出したのに」と考えるようなタイプの人は、後悔を含めてストレスを感じやすいので、あまりおすすめはできません。
太陽光発電を設置しない、今後も予定がない
蓄電池は太陽光発電の普及してから本格的な普及が始まったため、後付けで導入するケースは多数あります。太陽光発電をこれから導入する場合は蓄電池もセットで導入するケースが多いわけですが、このことを考えても蓄電池は太陽光発電と併用してこそメリットが最大化されます。
これからの蓄電池導入では太陽光発電との併用を考えるのが自然で、そうではない場合は太陽光発電と併用できるようになるまで待ってからでも良いかもしれません。
蓄電池で後悔しない人、導入するべき人はこんな人
それでは次に、蓄電池を導入することで成功する人、後悔しない人についても紹介していきましょう。基本的には「後悔する人」の真逆ではありますが、そのなかでも特に意識したい項目を挙げていきたいと思います。
電気代高騰への有効な対策にしたい
電気力消費量が多く、電気代が高いことに悩んでいる人にとって、蓄電池はひとつの有効な対策になります。ただでさえ電気代の単価が上昇し続けている昨今、このままだと電気代がとんでもない金額になるのではないかと悩んでいるのであれば、蓄電池を検討する価値が高いしょう。
蓄電池を導入することで少なくとも数千円、効果が大きくなれば1万円以上の電気代削減も不可能ではありません。
太陽光発電と併用したい、すでに太陽光発電を導入している
太陽光発電との相性の良さについては何度も述べていますが、これから蓄電池を導入するのであれば太陽光発電との併用を強くおすすめします。電気代の削減や災害時のリスクヘッジを考えるのであれば自家消費モデルにするのが理想なので、そのためには「太陽光発電+蓄電池」の組み合わせである必要があります。
そのため、すでに太陽光発電を導入していて蓄電池を後付けで導入する方も、後悔する可能性は低いでしょう。
災害時の停電に備えたい
近年になって災害が頻発している日本では停電時への備えが常識になりつつあります。先ほども述べたように自宅で停電してはいけない医療機器を使用している場合は命に関わるので蓄電池などの無停電電源設備は必須です。
そうでなくてもスマホやパソコンなどの端末が使えなくなることで実質的に社会と隔絶されてしまう現代社会において、全く電気を使えない状況は重大なダメージです。
それを避けるために自分で備えたいという方は、蓄電池が強い味方になります。災害時に真価を発揮することはもちろんですが、通常時であっても「万が一の事態に備えている」という事実が安心感をもたらしてくれます。
コストパフォーマンスをしっかり計算し、理解できる
蓄電池を導入することによって得られるメリットは劇的かつ短期的なものではありません。長い時間をかけてメリットが積み重なっていくため、すぐに結果を求めたり、よく分からないままに導入して結果を求めるようなタイプの人には不向きであると述べました。
販売店、施工店からはデータを交えたシステムの提案やシミュレーションの提示があります。これらをしっかり理解して判断できる人は、蓄電池のメリットを長期的に捉えられる人です。
これについては、太陽光発電にも同様のことがいえます。
後悔しない販売店・施工店の選び方
ここまでの解説で、蓄電池の導入で後悔するかしないかは、販売店や施工店によるところが大きいとお感じだと思います。そこで、最後には後悔しない販売店、施工店の選び方について解説します。
比較検討、相見積もりをする
決して安い買い物ではないだけに、蓄電池の検討段階では複数の販売店や施工店に問い合わせを出して相見積もりを取りましょう。ネットで検索をすると販売店や施工店は簡単に見つかりますし、問い合わせもネット上から無料でできます。
先ほどから「販売店」「施工店」と分けて表現していますが、蓄電池は買って終わりではなく設置工事が必要なので、ほとんどの業者は販売店であり、施工店です。そのため、価格や品ぞろえだけでなく工事のメニューや品質も含めて広い視野で比較検討をしましょう。
相見積もりをしていることは、業者にも伝えましょう。競争心理が働き、より良い提案が期待できます。
実績をチェックする
どの販売店、施工店も自社のホームページなどで実績を公開しています。実績数や、施工事例を写真付きで紹介していたり、さらに会社によってはお客さまの声といった形で紹介していることもあるでしょう。
こうした情報はとても重要で、実績が豊富で顧客満足度が高い業者ほど質の高い仕事が期待できます。自信がなければこうした情報を公開できないので、実績に関する情報が充実しているほど自信のある業者であると推測できます。
状況に合った柔軟な提案が得られるか
蓄電池は設置工事を伴う商品なので、設置スペースの条件など、それぞれのケースによって状況が異なります。これまでに豊富な実績を積み重ねている販売店や施工店であれば、「引き出し」の数も多いはずです。豊富な「引き出し」から最適な提案を柔軟に構築してくれるはずです。
この作業は一種の職人仕事のようなものでもあるので、提案の内容に自分自身の事情や状況がどこまで考慮されているかを比較検討の材料にしてみてください。「自分の事情に寄り添ってくれている」と感じられるのであれば、信頼できる業者と判断できます。
リスク、都合の悪いことも説明してくれるか
どの企業もそうですが、自社の商品やサービスを売りたいという気持ちは同じです。担当者レベルでも自分の実績を増やしたいという気持ちからさまざまな方法で売り込んでくるでしょう。このこと自体は当然なので問題はありませんが、重要なのは都合の悪いことやリスクについてもしっかり説明があるかどうかです。
営業上不利になることを伝えるのは営業サイドにとって本意ではないと思いますが、大事なことを伝えていないばかりに後からトラブルになるのは、お互いに不幸です。自信のある業者であれば都合の悪いこともしっかり説明してくれますし、聞かれたことに対して包み隠さず答えてくれるというのは、人として、会社としての信頼感にもつながります。
長く付き合っていくことになる業者を選ぶには、こうした信頼関係も重要です。
今だけでなく長期的な視野で付き合っていけるか
先ほども述べたように、蓄電池などの設備は長期間使い続けることでメリットを感じられるようになります。長い付き合いになることを前提に、何かあった時にすぐ相談できるか、信頼して任せられるかといった視点で業者選びをすることも重要です。
価格などのスペックだけで業者選びをすると、こういった人間的な部分には目が届きにくいものです。それだと後になってから後悔することになりかねないので、比較検討の段階でクリアにできることはすべてクリアにしておくべきです。
まとめ
蓄電池を導入すると後悔するというのは本当?という疑問にお応えするために、よくある後悔の声や、その根拠を紹介しました。しかしこういった「後悔説」のなかには、ユーザー側の事前の理解不足や販売店、施工店側の提案力の弱さなど、「人災」に近いものも多くあります。
蓄電池は正しい理解と適切な設置をすれば長期間にわたってメリットを得ることができる優れた機器なので、これから導入を検討している方は当記事の情報を参考に後悔しない販売店、施工店選びから始めてみてください。