近年、太陽光発電の自家消費に注目を浴びています。FIT制度終了を機にいままでの売電型から自家消費型への気運が高まりつつあります。自家消費型太陽光発電を導入するなら注意したいのが「逆潮流」です。
自家消費型太陽光発電ではこの逆潮流を起きてはなりません。そこで今回は、自家消費型太陽光発電で注意したい現象「逆潮流」についてご紹介いたします。ぜひ最後までご覧ください。
自家消費型太陽光発電の重要ポイント「逆潮流」とは?
通常、電力は電力会社の発電施設から、電気系統を通じて家まで一方的に流れ、消費されます。これを「潮流(ちょうりゅう)」と呼びます。
一方、太陽光発電システムと電力会社の送電網が系統連系(電力会社の電力系統に発電設備を接続すること)している状態では、太陽光発電等による発電量が自家消費電力量を上回ると、自動的に余剰電力が送電網へ流れていきます。これが「逆潮流(ぎゃくちょうりゅう)」です。
発電所から送電線を経由する電力消費の流れとは逆方向の流れであることが「逆」潮流といわれる理由です。
逆潮流は売電での系統連系に見られる現象
太陽光発電システムによって生み出された電力は、発電事業者の電力系統に発電設備を接続することで売電できるようになります。
売電を行うためには、電力会社が供給する電力と同程度の電力品質が求められますが、太陽光発電等で発生した電気は過電圧または不足電圧になることがあります。
これらの問題を解決するためには、系統連系の設備だけではなく電力品質を整えるための設備も合わせて設置することが必要です。
パワーコンディショナー、接続箱、売電電力計が主な機器類となり、特に売電電力計は発電した電力を計測するための機器として法律により設置が義務付けられています。
自家消費型太陽光発電システムにおいての逆潮流を防ぐためには、これらの正しい知識と理解が必要となります。
太陽光発電システムにおける系統連系の種類
太陽光発電システムにおける系統連系の種類は次の通りです。
1.逆潮流あり
発電された電力を供給するとともに、余剰電力あるいは発電した全電力を、電力会社に逆潮流させます。発電量が足りない場合には、電力会社から電力の供給を受けます。
2.逆潮流なし
発電された電力より、自家消費される電力が多い場合に用いられます。余剰電力が発生する場合は、電力会社に逆潮流させないように、保護継電器を設置することが必要です。
3.自立切替型
主に防災用として設定されるシステムです。停電等が起きた場合、系統から切り離して発電した電力を特定の消費電力のために供給します。蓄電池等他の電源と組み合わせて使用することで、安定した電力の供給が可能となります。
逆潮流と余剰電力の違いについて
基本的に、逆潮流は「売電の際に系統連系へ電力を流し込む」ことを指します。太陽光発電システムにより発電された電力のうち、自家消費及び蓄電される電力を除いた分の、売電される電力量が逆潮流電力量に当たります。
また、元々自家消費や蓄電をしないシステムの場合、発電された電力の全てが逆潮流電力量ということになります。
一方、「余剰電力量」と呼ばれるものあります。細かい定義はありませんが、大まかに以下のような意味で使われます。
- 発電を行う事業者から見た時、発電した電力のうち、自家消費しない電力量
- 発電を行う事業者から見た時、長期的なスパンで「発電した電力及び電力会社から買った電力」のうち、自家消費しない電力量
- 電力会社から見た時、発電事業者等から買った電力量(買電)から事業者に売った電力量(売電)を引き、手元に残った電力量
自家消費型太陽光発電で、逆潮流は起きてはならない理由とは?
自家消費型太陽光発電で、逆潮流は起きてはならない理由は次の通りです。
系統連系で起こる「バンク逆潮流」の意味は?
需要側(太陽光発電システムの設置者)の発電量が多く消費し切れない場合、電気が変電所まで遡り、供給している電気量よりも流れ込む電気量が大きくなる事態が発生します。これを「バンク逆潮流」と呼びます。
バンク逆潮流で発生する問題は?
バンク逆潮流が発生すると、配電系統の電圧が適切に制御されなくなります。さらに配電線の電圧品質の劣化や回路機器を保護する遮断機の不良等、安定した電力の供給に支障をきたす可能性があります。
また、送電線事故が発生した際には電気を回復させる時に時間がかかる原因にもなります。そのため、従来はバンク逆潮流そのものが認められていませんでした。
しかし、この制限をかけたままではメガソーラーが建設されても系統連系へ接続できないという事態が発生し、太陽光発電の普及がなかなか進まない原因となってしまいました。
そこで、2013年に「電気設備の技術基準の解釈」や「電力品質確保に係る系統連系技術要件ガイドライン」が資源エネルギー庁によって改正され、電圧を適正に管理するための装置や変電所に送電線事故を検出できる装置を設置する等の対策を行えば、バンク逆潮流が発生する場合でも、系統連系への接続が認められるようになりました。
自家消費型太陽光発電システムには安全装置と制御装置が必要
自家消費型太陽光発電システムに使用される安全装置と制御装置については次の通りです。
1.逆電力保護継電器(RPR)
逆方向の電力を検出すると信号を発信し、発電設備の停止や遮断器を開放する等の処理を行い、逆潮流を防止する電器です。RPRは(Reverse Power Replay)の略となっています。他にも「67P」と呼ばれることもあります。
2.負荷追従制御オプション
2020年6月に販売を開始した、太陽光発電の逆潮流を防止するシステムです。RPRを設置しても、発電の損失やパワーコンディショナーの故障につながる可能性がありますが、このシステムはパワーコンディショナーの出力や電力を比較しながら発電電力をあらかじめ制御するものです。内蔵のタッチパネルを利用し、使用する回路や各回路のパワーコンディショナー定格出力を入力するだけで動作します。
3.パワーコンディショナー
パワーコンディショナーそのものに逆潮流防止のシステムを組み込んだものも販売されています。今まで完全自家消費型の発電システムは、発電電力が消費電力を超えて電力系統に流出することを防ぐため、消費電力に対して発電電力を約10%以上抑制するように設定するのが一般的でした。そのため、発電した電力を最大限活用することが困難でしたが、消費電力に高速・高精度に追従して発電電力を制御することにより、発電電力の上限を最大で99%まで高められるようになりました。
4.逆電力保護継電器(RPR)
逆方向の電力を検出すると信号を発信し、発電設備の停止や遮断器を開放する等の処理を行い、逆潮流を防止する電器です。RPRは(Reverse Power Replay)の略となっています。他にも「67P」と呼ばれることもあります。
逆潮流を防ぐことによる自家消費型太陽光発電メリットは次の通りです。
中小企業の節税対策として効果的
自家消費型太陽光発電を導入するメリットとして、「中小企業経営強化税制」や「中小企業投資促進節税」を利用できることが挙げられます。
ただしこれらの節税対策は、以下の条件に該当する必要があるため、注意が必要です。
- 資本金または出資金が1億円以下の法人
- 資本金または出資金を有しない法人の中で、従業員数が1000人以下の法人
- 従業員数が1000人以下の個人事業主
条件を満たして請求すれば、設備投資を行った初年度に「100%」を経費として計上できる即時償却や、10%の税額控除が受けられます。
優遇税制の1つですので、該当する場合は活用していくといいでしょう。
電気代の削減=経費節約につながる
電気の自給自足が可能になるため、電気代の節約=経費の節約につながります。電力会社から購入する電力が減る分、電力の使用量に応じて決まる電気料金が安くなります。
また、購入する電力が減れば電力プランを安価なものへ変更できるようになるため、月々の基本料金も削減可能です。
災害時には非常電源として活用できる
2018年前半までは、東日本大震災の影響から「地震対策」への注目が集まっていましたが、2018年夏以降は台風や豪雨等で大きな被害が出ており、地震に加えて台風や豪雨等への対策も重要視され始めています。また、台風や豪雨での停電期間を見ると2~3週間にも及び、事業に大きな影響が出ることが予測できます。
そのような事態に対しての「自家消費型太陽光発電システム」は非常に有効です。電源を確保することで事業の継続ができ、安定した業務へとつながります。
まとめ:自家消費型太陽光発電には「逆潮流対策」が必要不可欠!必ず専門業者に相談をしよう
自家消費型太陽光発電システムにおいて、「逆潮流対策」は必要不可欠なものです。怠ってしまうと様々なトラブルの要因となり、悪化すると発電そのものができなくなってしまう可能性があります。
システムを導入する際には、必ず専門業者に依頼し、どのような逆潮流対策が適しているかを相談しておきましょう。
太陽光発電システムは非常に息の長い設備です。しっかりとした対策で有効に活用していくようにしましょう。