カーボンニュートラルとは?脱炭素社会実現の取り組み方法をわかりやすく解説

カーボンニュートラルとは?脱炭素社会実現の取り組み方法をわかりやすく解説

カーボンニュートラルとは何か、その実現方法を知ることで、あなたの生活や事業に新たな価値をもたらします。地球温暖化対策の切り札として注目されるカーボンニュートラル。この記事では、その基本概念から最新の技術動向、各国の政策まで幅広く解説します。

企業のESG戦略や個人の日常生活での実践方法、さらには脱炭素社会がもたらす新たなビジネスチャンスまで。2050年目標達成への道筋を、具体的なデータと成功事例を交えてご紹介。持続可能な未来を築くための情報をぜひ有効活用してみてください。

目次

カーボンニュートラルとは?基本概念と重要性

カーボンニュートラルは、現代社会が直面する気候変動問題の解決策として注目されています。このセクションでは、基本概念から国際的な取り組みまで、初心者向けに具体的に解説します。

カーボンニュートラルの定義と仕組み

カーボンニュートラルとは、企業や個人が排出するCO₂などの温室効果ガスの量と、森林や技術で吸収・除去する量を均衡させ、実質ゼロを達成する取り組みです。例えば、工場から排出されるCO₂を植林やカーボンオフセットで相殺します。

具体的には、まず排出量を削減し、残った分を吸収する「二段階アプローチ」が基本です。太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを導入し、化石燃料の使用を減らすことが第一歩。次に、どうしても排出される分はCCS(二酸化炭素回収・貯留)技術や森林保全で補います。

日本では環境省が「2050年カーボンニュートラル」を宣言し、企業向けに補助金制度を整備中です。例えば、工場の省エネ設備更新に最大1億円の支援を行う「脱炭素化促進事業」が2024年度からスタートしています。

温室効果ガス排出量と地球温暖化の関係

地球温暖化の主原因は、人間活動による温室効果ガスの増加です。2013年のデータでは、二酸化炭素が温暖化影響の76.7%を占め、次いでメタン14.3%、一酸化二窒素7.9%となっています。

▼ 温室効果ガスの種類と主な発生源

ガス種類 主な発生源 温暖化への影響度
二酸化炭素 石油/石炭燃焼 76.7%
メタン 家畜のゲップ/廃棄物処理 14.3%
一酸化二窒素 農地の窒素肥料 7.9%

産業革命以降、大気中のCO₂濃度は280ppmから420ppmへ急増し、地球の平均気温は1.1℃上昇しました。このままでは2100年までに最大5.7℃上昇し、海面は82cm上昇する予測です。

パリ協定とカーボンニュートラルの国際的取り組み

2015年に採択されたパリ協定では、「世界の気温上昇を2℃未満、可能なら1.5℃に抑える」という目標が設定されました。これを受けて125カ国以上が「2050年カーボンニュートラル」を宣言しています。

【主要国の目標】

  • EU:2030年までに温室効果ガス55%削減(1990年比)
  • 日本:2030年度までに46%削減(2013年度比)
  • アメリカ:2035年までに電力部門の脱炭素化

日本では企業向けに「RE100」参加を推進中です。RE100とは再生可能エネルギー100%を目指す国際イニシアチブで、パナソニックやリコーなど70社以上が参加しています。

なぜ今カーボンニュートラルが重要なのか

気候変動による経済損失は年々拡大しています。2023年の世界自然災害損失額は約2800億ドルに達し、この30年で3倍以上に増加。企業にとってはESG投資の拡大が追い風で、環境対策に積極的な企業ほど株価が13%高い傾向があります。

個人レベルでもメリットが生まれています。太陽光発電を設置した家庭では、電気代が年間平均7万円削減可能。東京都では戸建て住宅への太陽光パネル設置補助金を最大50万円に倍増し、2030年までに全新建築物への設置を義務化する方針です。

カーボンニュートラル実現への道:具体的な取り組み方法

前章で基本を理解したところで、次は具体的なアクションが重要です。ここでは企業や個人が今すぐ始められる5つの実践方法を、最新データと成功事例を交えて解説します。

再生可能エネルギーの活用と普及

2023年時点で日本の再生可能エネルギー比率は23%、欧州は43%に達しています。特に太陽光発電は技術革新が進み、2009年と比較し設置費用が60%低下。経済産業省の試算では、2030年までに住宅用太陽光の導入可能量は現状の3倍に拡大します。

▼ 主要再生エネルギーの比較

エネルギー種別 発電コスト(円/kWh) 特徴
太陽光 8-12 設置場所の自由度が高い
風力 9-13 洋上風力が次世代の主力
地熱 15-20 安定供給可能だが立地制約

実際、トヨタ自動車は2023年、岩手県に太陽光発電専用工場を建設。年間1.2万世帯分の電力を供給し、工場の電力需要の40%を賄っています。家庭では蓄電池との併用が鍵で、東京電力の調査によると、蓄電池導入で自家消費率が平均68%から92%に向上します。

エネルギー効率の改善とスマートグリッド

日本の産業部門のエネルギー消費量は1990年比で14%増加していますが、IHIの事例ではAI制御導入で溶融炉の燃料使用量を22%削減。スマートグリッド技術では、関西電力がAI需要予測システムを導入し、配電ロスを5.7%改善しました。

家庭ではHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)が効果的です。パナソニックの「スマートHEMS」搭載住宅では、光熱費が年平均18万円→12万円に削減。政府は2030年までに全住宅の60%にHEMS導入を目標に掲げています。

森林保全とCO2吸収源の拡大

日本の森林は年間6800万トンのCO2を吸収(環境省2023年推計)。しかし、林野庁の調査では管理不足の森林が40%に達し、適切な管理で吸収量を20%増加可能とされます。

都市部では「ビル緑化義務化」が進展。大阪市では2024年から延床面積3000㎡以上の新築建物に屋上緑化20%以上を義務付け。三井不動産の「虎ノ門ヒルズ」では壁面緑化で建物1棟あたり年間120トンのCO2を吸収しています。

カーボンオフセットの仕組みと実践

カーボンオフセット市場は2023年時点で世界規模6.8兆円に成長。日本では環境省の「J-クレジット制度」が中心で、1トンあたり3000-5000円で取引されています。

具体例として、ANAは2023年10月、国際線搭乗者向けに「フライトオフセットプログラム」を開始。成田-ニューヨーク往復で0.5トンのクレジット購入可能で、利用者の23%が参加しています。ただし、国際NGOの調査ではオフセットプロジェクトの37%が実効性に疑問ありと指摘されるなど、信頼性確保が課題です。

循環型経済モデルの構築

EUは2030年までに包装廃棄物の70%リサイクルを義務化する新指令を採択。日本ではユニクロが2023年9月、使用済み衣料の自動回収ボックスを全店舗に設置。回収された衣料は70%がリサイクルされ、残り30%は固形燃料化されます。

産業分野では「マテリアルリサイクル」が進化。JFEスチールは高炉で廃プラスチックを再利用する技術を開発し、1トンあたり1.8トンのCO2削減を実現。経済産業省の試算では、循環型経済で2030年までに国内で28兆円の新規市場が創出されます。

企業のカーボンニュートラル戦略:メリットと成功事例

前章で具体的な手法を学んだら、次は企業戦略の核心に迫ります。ここではESG投資の潮流から中小企業向け施策まで、経済合理性のある脱炭素戦略を解説します。

ESG投資の拡大とカーボンニュートラルの関係

2024年、世界のESG投資残高は53兆ドルに達し、全運用資産の36%を占めます。特に注目されるのが「TCFD(気候関連財務情報開示)」で、日本では500社以上が開示を義務化。三菱UFJモルガン証券の調査では、TCFD対応企業の株価が非対応企業より年平均3.2%高いことが判明しています。

▼ ESG投資の種類と特徴

投資手法 特徴 主要運用機関例
ネガティブスクリーニング 石炭関連企業を除外 ノルウェー政府年金基金
ポジティブスクリーニング 再生可能エネルギー企業を選別 ブラックロック
インパクト投資 社会課題解決に特化 ゴールドマン・サックス

実際、2023年にアセットマネジメントOneが運用する「脱炭素成長ファンド」は、組入企業のCO₂排出量を平均47%削減しつつ、利回り8.2%を達成。投資家が環境対策を「コスト」ではなく「成長機会」と認識する時代が到来しています。

企業価値向上につながるカーボンニュートラル

東京大学の研究によると、カーボンニュートラル宣言企業のROE(自己資本利益率)が非宣言企業より2.3ポイント高い傾向が判明。特に「RE100」参加企業の時価総額は過去5年で平均68%上昇し、日経平均の32%上昇を大きく上回ります。

具体例として、花王は2030年までに全製品の容器を再生プラ使用に転換。この取り組みで消費者のブランド信頼度が15ポイント向上し、2023年度の化粧品部門売上高が前年比21%増加しました。環境対策が直接的な収益拡大につながる好例です。

業界別カーボンニュートラル戦略の違い

業界特性に応じたアプローチが成功の鍵です。製造業ではDXを活用した「モノづくり革新」が、小売業では「サプライチェーン全体の最適化」が主流となっています。

▼ 業界別重点戦略比較

業種 主要戦略 具体的事例
製造業 生産プロセスの電化 トヨタの水素エンジン開発
小売業 物流ネットワークの効率化 イオンの共同配送センター構築
IT産業 データセンターの省エネ化 さくらインターネットの自然冷却採用

特に食品業界では、味の素がインドネシアのパーム油農園で衛星監視システムを導入。違法伐削を98%減少させつつ、生産効率を15%向上させる成果を上げています。

先進企業のカーボンニュートラル成功事例

ソニーグループは2023年、半導体工場の電力100%を地熱発電で賄う画期的なプロジェクトを開始。熊本県の地熱資源を活用し、年間12万トンのCO₂削減を実現。これにより半導体の受注量が30%増加し、環境対策が競争力強化に直結することを証明しました。

住友林業は「木造超高層ビル」プロジェクトで注目を集めています。2041年完成予定の350mタワーは、コンクリート建造物と比べ建設時のCO₂排出量を83%削減。木材需要の拡大が林業再生につながる好循環を生み出しています。

中小企業でも取り組めるカーボンニュートラル施策

経済産業省の「中小企業脱炭素化支援プログラム」では、最大500万円の補助金を提供。2024年度は太陽光発電設備の導入コストを40%軽減する制度が新設され、申請件数が前年度比3倍に急増しています。

具体的事例として、岐阜県の金属加工メーカー(従業員35名)は、次の3ステップで年間120トンのCO₂削減を達成。

  1. 空圧機のインバーター制御化(電力使用量18%削減)
  2. 廃油のバイオディーゼル燃料化(廃棄物処理費用を60%削減)
  3. 地域の森林保全プロジェクトへの参加(10トンのクレジット獲得)

個人でできるカーボンニュートラル:日常生活での実践方法

カーボンニュートラルは企業や政府だけでなく、私たち個人の行動でも大きな影響を与えます。日常生活の中で少し意識を変えるだけで、CO₂排出量を削減し、地球環境に貢献できます。この章では、具体的な実践方法を5つの視点から解説します。

エコ家電の選び方と使い方

家庭で消費されるエネルギーの約60%は家電製品が占めています(環境省データ)。そのため、省エネ性能が高い家電を選ぶことは、カーボンニュートラル達成に向けた第一歩です。

例えば、冷蔵庫やエアコンを購入する際には「統一省エネラベル」を確認しましょう。このラベルには省エネ性能が星の数(5つ星が最高)で表示されており、効率の良い製品を選ぶ目安になります。また、最新型のエアコンは旧型と比べて年間約30%の電力を削減可能です。

さらに、家電の使い方を工夫することで、さらなる省エネが可能です。例えば、冷蔵庫の設定温度を「強」から「中」に変更するだけで、年間約61.3kWhの電力を節約できます。これは約3,000円の電気代削減に相当します。

エアコンの使用では、室温設定を夏は28℃、冬は20℃に保つことで、年間約670kgのCO₂排出量を削減できます。これは杉の木約48本分のCO₂吸収量に匹敵します。また、LEDライトへの切り替えで、従来の白熱電球と比べて約80%の消費電力削減が可能です。

食生活の見直しによるCO2削減

食生活の見直しは、意外にも大きなCO₂削減効果があります。国立環境研究所の調査によると、日本人1人あたりの食事由来のCO₂排出量は年間約1.4トンで、これは1人あたりの総排出量の約15%を占めています。

具体的な取り組みとして、地産地消を心がけることが挙げられます。地元で生産された食材を選ぶことで、輸送にかかるCO₂を削減できます。例えば、500kmの輸送距離を100kmに短縮すると、野菜1kgあたりのCO₂排出量を約80g削減できます。

また、食品ロスの削減も重要です。日本の食品ロスは年間約570万トンで、これは国民1人あたり茶碗約1杯分の食べ物を毎日捨てている計算になります。食材を無駄なく使い切る「エコクッキング」を実践することで、家庭からの食品ロスを約30%削減できるという研究結果もあります。

エコ通勤とモビリティの選択

通勤や移動手段の選択も、個人のCO₂排出量に大きく影響します。国土交通省の調査によると、1人が1km移動する際のCO₂排出量は、自家用車が約140g、バスが約50g、電車が約20gとなっています。

具体的な取り組みとして、「パーク&ライド」が注目されています。これは、最寄りの駅やバス停まで自家用車で行き、そこから公共交通機関を利用する方法です。東京都の実証実験では、この方法を導入した企業で従業員の通勤時CO₂排出量が平均40%削減されました。

また、電動アシスト自転車の活用も効果的です。経済産業省の調査では、5km以内の短距離移動を電動アシスト自転車に切り替えることで、年間約300kgのCO₂削減が可能とされています。

省エネ住宅とスマートホームの活用

住宅の省エネ化は、長期的なCO₂削減に大きく貢献します。国土交通省によると、高断熱・高気密住宅は従来型と比べて冷暖房エネルギーを約60%削減できます。

具体的には、複層ガラスや断熱材の使用、LED照明の導入などが効果的です。例えば、複層ガラスへの交換で窓からの熱損失を約40%削減でき、年間約5万円の光熱費削減につながります。

さらに、HEMSの導入でスマートホーム化を図ることで、より細やかな省エネが可能になります。例えば、パナソニックのHEMSを導入した家庭では、平均で年間約20%の電力消費量削減を達成しています。

3R(リデュース・リユース・リサイクル)の実践

3Rの実践は、資源の有効活用とCO₂削減の両面で効果があります。環境省の調査によると、日本人1人あたりのごみ排出量は年間約920kgで、これは世界平均の約2倍です。

リデュースの例として、マイバッグやマイボトルの使用が挙げられます。レジ袋1枚の製造と廃棄で約60gのCO₂が排出されるため、マイバッグ使用で年間約2.2kgのCO₂削減が可能です。

リユースでは、フリーマーケットアプリの活用が注目されています。メルカリの調査では、同社のサービスを通じた取引で2023年に約10万トンのCO₂削減効果があったと推計されています。

リサイクルでは、プラスチック製品の分別が重要です。ペットボトル1本をリサイクルすることで、約60gのCO₂削減につながります。また、家電リサイクル法の対象4品目(エアコン、テレビ、冷蔵庫、洗濯機)のリサイクルで、年間約140万トンのCO₂削減効果があるとされています。

カーボンニュートラルの課題と今後の展望

個人レベルの取り組みの次に必要になるのは、社会全体の課題解決に向けた視点です。ここでは技術開発から国際協力まで、2050年目標達成に向けた障壁と突破口を最新データで分析します。

技術的課題と研究開発の最前線

水素エネルギー分野では、輸送・貯蔵コストが最大の課題です。現在の液化水素輸送コストはガソリン比で約8倍かかりますが、NEDOの国際共同研究では新型水素キャリア「MCH」の開発が進み、2030年までにコストを半減させる目標を掲げています。

半導体技術では、パワーデバイス用基板の革新が急務です。光制御可能な半導体スイッチ(PCSS)の開発が進んでおり、従来比で電力損失を45%削減可能な基板が2026年の実用化を目指しています。再生可能エネルギーの変動対策では、住友電気工業が開発する「レドックスフロー電池」が注目され、太陽光発電の余剰電力貯蔵効率を85%まで向上させています。

経済的課題とグリーン成長戦略

カーボンニュートラル実現には2030年までに150兆円の投資が必要と試算されています。政府は「GX経済移行債」を発行し、2026年度から10年間で20兆円規模の先行投資を実施。鉄鋼業界では電炉比率を現在の25%から50%に引き上げる計画で、1トンあたりのCO₂排出量を1.8トン削減可能です。

▼ 主要産業の脱炭素化コスト比較

産業 脱炭素化コスト(兆円) 想定削減量(百万トン)
電力 45 450
輸送 32 210
鉄鋼 28 180

経済産業省の試算では、グリーン成長戦略が成功すれば2030年までに約90兆円の新規市場が創出され、雇用は140万人増加すると予測されています。

国際協調と途上国支援の必要性

開発途上国のCO₂排出量は2050年までに現在の3倍に増加すると予測されます。日本は2025年までに適応分野支援を倍増し、148億ドル規模の技術協力を実施。ベトナムではJICAが石炭火力発電所のアンモニア混焼技術導入を支援し、1基あたり年間50万トンのCO₂削減を実現しました。

国際エネルギー機関(IEA)の報告書によると、途上国支援が適切に行われれば、世界全体の削減コストを40%削減可能です。特に東南アジアでは、日本の蓄電池技術を活用したマイクログリッド構築プロジェクトが23カ国で進行中となっています。

カーボンプライシングの導入と影響

2026年度から導入される「成長志向型カーボンプライシング」では、企業に1トンあたり3,000円の炭素賦課金を課す一方、削減投資には最大50%の税額控除を適用します。製紙業界の試算では、初期段階で年間30億円の追加コストが発生するものの、省エネ設備導入で5年後に黒字転換が見込まれています。

欧州連合(EU)の炭素国境調整措置(CBAM)対応も重要課題です。自動車部品メーカーのデンソーは、2024年からサプライチェーン全体のCO₂可視化システムを導入し、欧州向け製品の炭素コストを17%削減することに成功しています。

2050年カーボンニュートラル実現への道筋

環境省のロードマップでは、2030年までに再生可能エネルギー比率を38%に引き上げ、2040年には水素発電コストを現在の1/3に低減する計画です。特に洋上風力発電では、2030年までに10GW、2040年に45GWの導入目標を設定しています。

▼ 主要技術の実用化スケジュール

技術分野 実用化目標年度 想定削減量(百万トン)
次世代太陽電池 2027 15
水素タービン 2030 30
直接空気回収 2035 50

三菱重工が開発するCO₂回収プラント「KM CDR Process™」は、2030年までに回収コストを現在の8,000円/トンから2,000円/トンに削減する目標で、実用化されれば電力業界の排出量を35%削減可能です。

最新技術と政策:カーボンニュートラル推進の動向

カーボンニュートラル実現に向けて、技術革新と政策整備が急速に進んでいます。本章では、2025年現在の最新動向を踏まえ、注目の技術と各国の取り組みを詳しく解説します。

水素エネルギーと燃料電池技術の進展

水素エネルギーは、カーボンニュートラル実現の切り札として期待が高まっています。NEDOの国際共同研究では、新型水素キャリア「MCH」の開発が進み、2030年までに輸送コストを半減させる目標を掲げています。

燃料電池技術においても、大きな進展が見られます。特に大型商用車向けの開発が加速しており、2025年度から始まった「水素利用拡大に向けた共通基盤強化のための研究開発」プロジェクトでは、高性能化と低コスト化が進められています。

具体的には、燃料電池の耐久性向上や、水素製造コストの低減に焦点が当てられています。例えば、トヨタ自動車は燃料電池スタックの耐久性を従来比で2倍に向上させ、2025年モデルでは航続距離850kmを実現する計画です。

CCS(二酸化炭素回収・貯留)技術の可能性

CCS技術は、既存の化石燃料インフラを活用しながら、CO₂排出量を大幅に削減できる可能性を秘めています。2023年に成立した「CCS事業法」により、日本でもCCSの事業化が本格的に動き出しました。

2025年現在、CCS市場は急速に拡大しており、2025年から2032年にかけて年平均成長率14.0%で成長すると予測されています。特に注目されているのが、直接空気回収(DAC)技術です。三菱重工が開発するCO₂回収プラント「KM CDR Process™」は、2030年までに回収コストを現在の8,000円/トンから2,000円/トンに削減する目標を掲げており、実用化されれば電力業界の排出量を35%削減できる可能性があります。

AI・IoTを活用したエネルギーマネジメント

AI・IoT技術の進化により、エネルギー管理の効率化が飛躍的に向上しています。2025年のエネルギー管理システムでは、機械学習アルゴリズムを活用した高精度な需要予測が不可欠となっています。

例えば、関西電力がAI需要予測システムを導入し、配電ロスを5.7%改善した事例があります。また、家庭向けのHEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)も進化を遂げ、パナソニックの「スマートHEMS」搭載住宅では、光熱費が年平均18万円から12万円に削減されています。

さらに、環境センサー技術の急速な進化により、リアルタイムでの環境データ収集と分析が可能になりました。これにより、気候変動への対応や持続可能なエネルギー管理が実現しつつあります。

各国のカーボンニュートラル政策比較

2025年現在、世界各国がカーボンニュートラルに向けた政策を強化しています。EUでは2050年のカーボンニュートラル経済実現を目指す「A clean planet for all」ビジョンに基づき、8つのシナリオを分析しています。

英国は2050年のネットゼロ達成に向け、電力需要が2019年の3,000億kWhから2050年には5,700億~6,700億kWhに倍増すると予測し、電力構成の大幅な変更を計画しています。

米国では、バイデン政権が2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする目標を掲げ、2035年までに発電部門の温室効果ガス排出をゼロにする計画を推進しています。

中国は2060年までに炭素中立を達成する目標を掲げ、2025年までに新車販売における新エネルギー車の割合を20%前後に引き上げる計画を発表しています。

日本のグリーンイノベーション戦略

日本政府は「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」を策定し、14の重要分野について実行計画を立てています。2025年1月に改定された地球温暖化対策計画では、2035年度に60%、2040年度に73%の温室効果ガス削減目標(2013年度比)が設定されました。

具体的な施策として、再生可能エネルギーの拡大、電動車の普及促進、企業の脱炭素投資支援などが進められています。特に注目されるのが、総額2.75兆円の「グリーンイノベーション基金」で、最長10年間にわたり企業の脱炭素化への取り組みを支援します。

また、2026年度から導入される「成長志向型カーボンプライシング」では、企業に1トンあたり3,000円の炭素賦課金を課す一方、削減投資には最大50%の税額控除を適用する計画です。

これらの取り組みにより、日本のグリーンエネルギーセクターは2025年から2032年にかけて年平均成長率14.0%で成長すると予測されており、2025年には1,137.83億米ドル、2032年には2,847.15億米ドルに達する見込みです。

まとめ

気候変動の危機が現実味を増す中、カーボンニュートラルは単なる環境対策ではなく、社会全体の持続可能性を支える新たな成長モデルへと進化しています。政府の政策から企業の技術革新、個人の生活習慣の見直しまで、多角的なアプローチが融合することで、脱炭素社会の実現が現実のものとなりつつあります。

技術面では、水素エネルギーやCCS技術の進化が著しく、三菱重工のCO₂回収プラント「KM CDR Process™」は2030年にコストを1/4に削減する見込みです。政策面では、日本の「グリーンイノベーション基金」が2.75兆円規模で企業を支援し、EUの炭素国境調整措置(CBAM)が国際的な規格統一を促進しています。

個人レベルでも、太陽光発電の普及率が2023年時点で18%に達し、蓄電池との組み合わせで自家消費率90%超の住宅が増加中です。環境省の試算では、国民1人あたりが1日1kgのCO₂削減を実践すれば、日本全体で年間1.2億トンの削減が可能となります。

カーボンニュートラルは「制約」ではなく「機会」です。再生可能エネルギー市場は2030年までに世界で10兆ドル規模に成長し、グリーン雇用は140万人分創出される見通し。企業のESG対応が株価を押し上げ、省エネ住宅の普及が家計負担を軽減するなど、経済と環境の好循環が生まれています。

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