こんにちは、石橋です。
今回は、一般の方はそれほど注目しないかもしれないものの、再生可能エネルギー業界の者としてとても気になるニュースについて話したいと思います。
その話とは、太陽光発電所の窃盗被害についてです。

あくまでも肌感覚ですが、数日に1回くらいの頻度で「太陽光発電所から銅線が盗まれた」というニュースを目にしている気がします。もちろん関連のニュースが流れてきやすい立場ではあるので、余計にそう思うのかもしれませんが、それにしても多すぎです。
データを見ると、特に被害は関東地方およびその周辺に偏っています。太陽光発電所自体は日本全国にあるものの関東に偏っているというのは、おそらく悪事を働く泥棒が多いからでしょう。人口が多いと、その分泥棒が多くなってしまうのかもしれません。
そもそも、なぜ太陽光発電所を泥棒が狙うのでしょうか。そこには大きく3つの背景があります。
背景① 金属価格の高騰
インフレや世界的な需給のひっ迫もあって、金属などの資源価格が高騰しています。金(ゴールド)の価格が史上最高値!と話題になることがありますが、実は銅の価格も2020年以降高騰の傾向が続いていて、最高値を更新する勢いです。
太陽光発電所には、太陽光パネルからパワーコンディショナーへの送電や、系統との接続のために大量の銅線が使われています。泥棒は、高値で売れる銅線を狙っているわけです。
背景② 太陽光発電所は基本的に無人
自宅や自社の敷地にある太陽光発電施設であれば人がいるので、泥棒も簡単に悪事を働くことはできません。しかし、遠隔地にある太陽光発電所となると話は別です。無人のところに泥棒にとっての「お宝」である大量の銅線があるとなると、それが狙われてしまう原因になります。
背景③ 泥棒の組織化、技術の高度化
太陽光発電所の窃盗被害が出始めた頃は、まだ泥棒も個人レベルでした。そのため大掛かりな設備や道具を持っていることは少なかったのですが、最近の泥棒はプロ化が進んでいます。効率よく銅線を盗むための技術や設備が高度化しているため、手口がさらに巧妙化しています。
これについては「いたちごっこ」の様相を呈しているため、自衛手段を高度化させるしか対抗する術がありません。
さて、こうした盗難リスクは太陽光発電投資をする投資家にとって脅威です。期待利回りが出せなくなってしまうばかりか、銅線を根こそぎ盗まれてしまうと太陽光発電そのものができなくなってしまい、さらには漏電などのリスクもあります。
そこで重要になるのが、窃盗への備えです。
太陽光発電所の盗難対策には、大きく3つの柱があります。それぞれのアプローチで対策しておくことによって、よりセキュリティ性が高まります。これから太陽光発電投資をする方は特に、これらの点を踏まえた発電所運営をされることを強くおすすめします。
対策① アルミケーブル化
泥棒が狙っているのは、銅線です。銅が高く売れる状況が続く限り、泥棒が銅を狙う構図は変わらないでしょう。そこでおすすめなのが、銅ではなくアルミケーブルを使用する対策です。アルミは銅のように高価ではなく、その一方で銅に近いパフォーマンスが得られます。
ここで問題になるのが、泥棒にどうやってアルミケーブルを使用していることを伝えるかです。「うちの発電所はアルミを使用しているので盗んでも無駄」と張り紙をするのかというと、それだと泥棒が入ることを前提にしているようでむしろ逆効果の恐れもあります。
その点については、泥棒も「プロ」です。仮に侵入に成功したとして、ケーブルの一部を確認してそれが銅なのかアルミなのかはすぐに分かります。アルミの場合は盗んでも意味がない(アルミも売れますが泥棒のリスクを冒してまで盗む輩は少ない)ので侵入されたことだけで済むかもしれません。
対策② 物理的な進入阻止
アルミケーブル化したから銅線は無事・・・と安心してもいられません。そもそもケーブルをチェックされるまでに泥棒に侵入されることは避けるべきです。そこでおすすめなのが、フェンスの堅牢化や防犯カメラ、人感センサーなどの設置です。これらの防犯グッズは家庭用でも広く普及しており、泥棒への侵入抑止に役立ちます。
というのも、泥棒が一番嫌うのは「仕事をするのに時間がかかる」ことです。時間がかかるほど捕まるリスクが高くなるため、可能な限り短時間で目的のものを盗もうとします。フェンスが堅牢であったり、鉄条網などがついていたらそれだけで侵入に時間がかかりますし、そこに人感センサーがあれば侵入に手間取っている間にアラートを発報して警備会社が駆けつける・・・といったことも可能になります。そして、泥棒もそのことを考えるため、侵入をためらいます。
発電所によってはダミーの防犯カメラをつけて抑止するケースもあり、泥棒から見て「入りにくい」ことはとても重要なのです。
対策③ 損害保険
銅線が盗まれることを前提に考えるのであれば、その備えとして保険への加入を検討する人は多いことでしょう。もちろん保険加入は盗難リスク以外のリスク管理も含めて有効なのですが、近年では窃盗事件があまりにも多いことから保険料の値上がりや、一部で保険適用外になるなど、保険によるリスク対策の有効性が低くなりつつあります。
やはり盗まれることを前提にするのではなく、盗まれないことに軸を置いて対策をすることが重要といえます。
私が代表を務める和上ホールディングスも、さまざまな形で窃盗対策をご提案しています。O&Mサービスとして提供している「とくとくサービス」では常時監視を行い、異常があればすぐに察知できる仕組みを確立していますし、低コストで異常を検知できるセキュリティ機器「CTKシリーズ」のご提案もしています。小型なのでさまざまな場所に設置できるため、泥棒による防犯システム無効化といった「攻撃」も検知することができます。このCTKシリーズと遠隔監視システムを連動させて警告を発して泥棒を退散させたり、そのまま警備システムと連携して現場で泥棒を確保するのにも活用できます。
日本は治安のいい国なので無人の発電所も安心して稼働できる・・・という時代は昔話になりつつあります。もちろん一番悪いのは泥棒ですが、今後も盗んだものが高く売れる状況が続く以上、太陽光発電所のオーナーや投資家は自分自身の判断と対策で発電所を守る必要があります。長期的な安定収入のために、ぜひセキュリティにも高い関心を持っていただければと思います。

