こんにちは、石橋です。
今回も、最近お問い合わせやご相談が多くなっている系統用蓄電池のお話をしたいと思います。
今回は、系統用蓄電池に使用されているリチウムイオン電池の安全性についてです。

リチウムイオン電池は蓄電池の基幹技術としてとても優れており、私たちの身の回りはリチウムイオン電池だらけです。街を歩いている人が耳に入れているワイヤレスイヤホンや暑い日にたくさんの人が持っているハンディ扇風機、そしてスマートフォンやノートパソコンなどなど、これらの蓄電が必要な機器にはリチウムイオン電池が使われています。
スマホユーザーの中には、スマホだけの蓄電量では足りないということモバイルバッテリーを使っている人も多いと思います。モバイルバッテリは―蓄電以外の機能がなく、文字通りリチウムイオン電池のかたまりです。
私が代表を務める和上ホールディングスにいただくお問い合わせには系統用蓄電池に関するものが多く、すでに多くの案件を手がけています。系統用蓄電池も蓄電池である以上、リチウムイオン電池が使用されています。言わば、巨大なモバイルバッテリーです。
モバイルバッテリーはスマホやワイヤレスイヤホン、電子タバコなどを支える小さなインフラですが、系統用蓄電池は電力網に接続されている社会のさまざまな機器を支えています。それだけに、系統用蓄電池に用いられるリチウムイオン電池の規模は、相当なものです。
リチウムイオン電池については、最近ちょっと気になる話題を見聞きすることが多くなりました。顕著なのは、飛行機です。
飛行機に乗る際、モバイルバッテリーを預け手荷物にすることはできません。貨物室で発火したら危険だからです。実際にサムスン製のタブレット端末が機内で発火して火事になったことがあり、その件から航空会社はモバイルバッテリーの取り扱いを厳しくしています。
リチウムイオン電池には、熱や衝撃に弱い特性があります。系統用蓄電池は屋外に設置するため、夏の異常な高温によって影響を受ける可能性は十分考えられます。単に充放電の性能が一時的に落ちる程度であれば許容できたとしても、発熱が進むと発火する恐れがあります。
屋外の、しかも基本的に誰もいないところで蓄電池が発火して、気づいた時には火災になって設備全体がダメージを受けてしまった・・・となると、その損害は計り知れません。
強い衝撃を受けることは、系統用蓄電池の場合はあまりないと思います。このリスクはモバイルバッテリーやスマホなどで考慮するべきもので、「落とす」ことが考えにくい系統用蓄電池ではあまり関係がないと言っていいでしょう。
ただ、台風で何かがぶつかったり、蓄電池同士がぶつかったりすると、衝突リスクもあり得るんですが。
そうなると考慮するべきリスクは、熱です。地球温暖化の影響もあってか、日本の夏はどんどん暑くなっています。「危険な暑さ」「異常高温」なんて言葉が天気予報で頻繁に出てくるご時世です。
この暑さにしっかりと対策をすることが、系統用蓄電池投資では極めて重要です。
系統用蓄電池の熱対策、火災対策として考えられる視点は、2つあります。
1つ目は、熱による影響を可能な限り抑える対策です。もう1つは、それでも防ぎきれない火災などのリスクに備えるための保険です。
1つ目について、これもリチウムイオン電池の特性である熱暴走について知っておく必要があるでしょう。「暴走」という名のとおり、リチウムイオン電池の内部で発熱をしてそれが制御できなくなることを熱暴走といいます。半導体も熱がたまりすぎると熱暴走を起こしてパソコンがフリーズしたりしますよね、それと似ています。ただ、リチウムイオン電池の場合はそれが発火につながる恐れがあるため厄介です。
近年の蓄電池は、メーカーが十分な熱暴走対策をしています。そのため、蓄電池そのものの熱対策はそれほど考える必要はないといえます。蓄電施設を設置するのにあたっては、蓄電池が直射日光に当たらないようにする、高温多湿の場所は避けるといった対策は有効です。風通しの良いところに設置することで内部の熱を効率良く排出できるため、熱暴走や火災を防ぎやすくなります。こうした設置場所を考慮することによる熱対策は、すでに家庭用の蓄電池で広く普及している概念です。
こうした設置方法によるリスクヘッジは、設計段階から盛り込んでおく必要があります。もちろん和上ホールディングスはEPCをすべて丸投げしていただけるサービスを提供しており、こうしたリスクを考慮した用地の選定や設置計画をご提供しています。
次に、保険。系統用蓄電池は数千万円、場合によっては億単位の投資になります。これを火災などの物理的なダメージで失ってしまうのは、あまりにも損失が大きすぎます。熱による火災以外にも、屋外の施設だけに豪雨や落雷、地震といった自然災害によるダメージも想定されるため、適切な保険の加入はとても重要です。
保険の種類としては火災保険や動産総合保険で機器の金銭的な損害をカバーするのが基本線です。それ以外に、事業として系統用蓄電池を運用しているのに何らかのダメージで事業が停止してしまった場合、機会損失が発生します。その損失に備えてBI保険(事業中断補償)に加入するのもおすすめです。
事業として取り組む以上、系統用蓄電池においてもさまざまなリスクにしっかりと取り組むことが求められます。
こうしたリスクについてのご説明や適切なリスク対策の提案にも力を入れていますので、ご相談の際にはこうした部分にも期待していただければと思います。

