こんにちは、石橋です。
最近、当ブログではお問い合わせが多くなっている系統用蓄電池に関する記事を掲載することが多くなっていますが、そこにはこの事業の最前線にいる私の考え方も存分に含んでいます。ブログなので、個人的に感じていることを綴ることで、系統用蓄電池のリアルをお伝えできればと思っています。
今回は、系統用蓄電池ビジネスが大きく注目されるなか、今後考えられる展開と、その先にある競争激化に向けて知っておくべきことを語ってみたいと思います。これから系統用蓄電池ビジネスに参入したいとお考えの方は、今回お話するリアルな部分もご理解いただけると、より現実に即したビジネス参入ができると思います。

系統用蓄電池は現在、適合する用地探しに多くの事業者が苦労している状況です。「空き地に蓄電池を置いておけばいいじゃないか」と思う人も多いんですが、そう簡単ではないところにこのビジネスの難しさがあります。
私が代表を務める和上ホールディングスにも系統用蓄電池ビジネスに参入したいというご要望は多くいただくんですが、それを実現できる用地を探すのが大変です。やはり事業ですから、事前のデューデリジェンスがとても重要です。
デューデリジェンスとは、ある投資や事業を始めるのにあたって、経済合理性や整合性があるかを事前にチェックすることです。系統用蓄電池の場合、デューデリジェンスには4つの視点があります。
- 技術的なデューデリジェンス
- 事業性のデューデリジェンス
- 法令面のデューデリジェンス
- リスク管理、安全性のデューデリジェンス
1つ目の技術的なデューデリジェンスは、実際に蓄電池を設置したとしてその設備が期待通りに稼働するかどうかの視点です。設置する蓄電池の機種や設置方式、規模、EMS(エネルギーマネジメントシステム)の仕様などなど。そこに設置する蓄電池が計画通りで大丈夫なのか、というわけです。
2つ目は、事業性のデューデリジェンス。系統用蓄電池は、電力を「安く仕入れて高く売る」のが基本なので、その通りの収益性が期待できるかどうかの視点です。重要なのは、設置時だけでなく運用を開始してから年単位の時間が経過してからも収益性が確保されているかどうかを正確にシミュレーションすることです。
3つ目は法令や契約面でのデューデリジェンス、つまりコンプライアンスや契約の整合性があるかどうかです。メーカーとの保証契約もそうですし、施工会社との保証契約、EPCの契約内容などなど。運用開始後のO&M(オペレーション&メンテナンス)についても適切な契約になっているかどうかですね。
そして4つ目は、さまざまなリスクに対するヘッジができているかどうか。気象の変化や市場環境の変化、見通しなどなど。さらに、蓄電池設備に万が一のことが起きた場合の態勢を整えておくための監視システムも含まれます。すでに系統用蓄電池を設置した場合に考えられるリスクは体系化されており、和上ホールディングスでも事前のデューデリジェンスであらゆるリスクを網羅した上での設置計画を提案しています。
こうしたデューデリジェンスが適切でなければ、お金をかけて系統用蓄電池を設置したとしても、「こんなはずではなかった」となってしまいます。今はブームが過熱気味になっていて、とにかく早く始めたいという要望が多くの専門業者に殺到しています。しかし、焦りは禁物です。何でもいいから始めたいという投資がうまくいく可能性は、古今東西ありません。
特に系統用蓄電池を導入する際には、EMSの質が問われます。EMSとは先ほど注釈をつけたように、エネルギーマネジメントシステムのことです。系統用蓄電池は系統(電力網)からの充電と、系統への放電を繰り返します。これだけの単純な仕組みではあるんですが、どのタイミングで充電をして、いつ、どれくらい放電するかをコントロールするのがEMSです。これがうまく機能しないことには、系統用蓄電池の運用に無駄が生じてしまいます。電力需要の状況や周辺環境によってEMSの最適な働きは異なります。ある場所でうまくいったからといって、別の場所で同じ設定で稼働させたとしても、同じ結果になるとは限りません。いえ、同じ結果にはまずなりません。
近年ではAIを実装し、その場所で最も収益が高くなる設定を学習しながら対応するEMSも登場しており、今後は同じ規模の蓄電池であっても高い収益が期待できるシステムが求められるようになっていくでしょう。今はブームが過熱気味であまりそこまで目がいっていないかもしれませんが、いずれ系統用蓄電池の設置件数が増えてくると事業者同士の競争が起きます。そんな中でより収益性が高い蓄電事業をするとなると、「賢い系統用蓄電池」が求められるようになっていくでしょう。
設置計画や施工技術の質が問われる時代は、私たち和上ホールディングスの強みが出るフェイズだと思っています。太陽光発電の黎明期から収支シミュレーションや施工を手がけ、単に「設置する」だけでなく、質にこだわった設置工事をしてきました。系統用蓄電池も同様なので、そんな時代に向けてより質の高い系統用蓄電池をご提供できるように技術やノウハウを提供していきたいと思います。

