こんにちは、石橋です。
いよいよ年の瀬が近づいてきましたが、まだあまり気忙しい雰囲気はありませんね。
今回も業界のホットな話題でもあるので、系統用蓄電池に関するお話です。
今回は系統用蓄電池投資にまつわるコストについて最新事情をお伝えしたいと思います。

最初に、系統用蓄電池投資の利回りは、以下の計算式で求めます。
年間の収益 ÷ 初期投資費用 × 100 = 投資利回り(%)
投資案件である以上、この投資利回りをいかに高くできるかが投資家にとって最大の関心事です。この考え方は、太陽光発電投資と全く同じです。もっといえば、これらの投資は固定資産を所有し、その資産が生み出す収益を狙うのですから、不動産投資に近い投資だと位置づけています。事実、私が知っている範囲で系統用蓄電池や太陽光発電の投資に参入する人や企業の多くは、不動産投資にも参入しています。
ではなぜ、不動産投資をしている投資家が系統用蓄電池や太陽光発電に参入するのか、その理由は簡単です。収益モデルが確立していて将来性も十分あるからです。特に太陽光発電投資ではFITといって一定期間にわたって固定価格で電力を買い取ってもらえる制度があるため、その期間である20年間は収益が安定することが大いに追い風となりました。今やこのビジネスモデルが始まった時期の太陽光発電所がFITの20年間を終えつつあり、FIT後をどうするかが関心を集めています。私が代表を務めている和上ホールディングスもFIT後のニーズにお応えする形でNon-FIT電源の事業を進めていますが、これについては別の機会に大いに語ってみたいと思います。
さて、話を本題に戻しましょう。今回は、系統用蓄電池投資における投資コストについてです。系統用蓄電池や家庭用蓄電池、さらにはスマホに内蔵されているバッテリーなど、現在の蓄電池の大半を占めているのがリチウムイオン電池です。従来のニッカド電池と比べるときわめて品質や耐久性に優れており、系統用蓄電池のような大規模な蓄電施設にも利用可能です。そのため、系統用蓄電池の導入コストはリチウムイオン電池の価格による影響を強く受けます。
日本だけでなく世界中で蓄電池需要が高まるなか、リチウムイオン電池の需要も倍々ゲームのように拡大しています。リチウムイオン電池の原料として炭酸リチウムが必要になるのですが、リチウムイオン電池の普及拡大によって炭酸リチウムの価格が高騰しました。その傾向は2022年から2023年まで続き、これによりリチウムイオン電池の価格が高騰、そして系統用蓄電池の導入コストも増大しました。
系統用蓄電池については多層的な収益モデルがあるため、少々蓄電池が高くなっても投資をしたいという意欲が旺盛で、これまで順調に導入が進んできています。むしろ蓄電池を設置できる土地が不足する事態になっており、投資を始めたくても思うように始められないというのが現状です。
では、この炭酸リチウム価格は今後どうなっていくのでしょうか。2023年の価格高騰をピークに、2024年は価格が若干下がりました。これにより、系統用蓄電池の導入コストも少し下がりました。まだまだ下がったとはいっても2022年の水準にまでは下がってはいませんが、一旦はピークをつけたと見ています。急激な蓄電池の普及が進むなかで需給が一時は逼迫して価格が高騰したものの、炭酸リチウムの増産が追い付くことで価格が落ち着いてきた構図です。
今後も蓄電池の需要は増していくと思いますが、それを満たすだけの供給力も増していくため、2025年以降は一定の水準で落ち着くのではないでしょうか。これだけ投資意欲が旺盛なビジネスだけに、供給側も「おいしい商売」と捉えています。需要があるところでビジネスが盛り上がるのはどの業種でも同じで、今後も需給のバランスを保ちながら市場が拡大していくことでしょう。
それではなぜ今回、炭酸リチウム価格と系統用蓄電池の導入コストについてのお話をしたのかというと、投資における初期費用は利回りに大きく影響するからです。
冒頭で紹介した利回りの計算式においても分母である初期導入費用が小さくなるほど利回りが高くなるため、この部分にはシビアである必要があります。不動産投資においても、物件を購入する費用をいかに抑えて安く仕入れるかが利回りを左右します。これと同じ理由で、系統用蓄電池投資に参入する際には、コスト意識をしっかり持つことが重要です。
一種のブームのようになっている状況がある一方で、参入したくても思い通りになるとは限らない系統用蓄電池投資ですから、「とにかく参入すること」に関心が集中してしまい、コスト意識が希薄になりがちです。しかし長期目線で収益を狙っていくビジネスであるということは、最初の導入コストがずっと分母であり続けるわけです。炭酸リチウム価格が乱高下しているなか、期待通りの投資利回りを上げるためには、原料の価格にも関心を払うべきであると思っています。
和上ホールディングスも系統用蓄電池を取り扱っている関係上、こうした市場価格の変動については常に最新の情報をウォッチしています。もちろんこうした市場価格の変動やそれによる導入コストへの影響、利回りへの考え方などについて専門的なアプローチでご説明、ご提案していますので、ぜひ分からないこと、気になることは専門家である私たちにお尋ねいただければと思います。

