為替介入のことを理解していない主張が多すぎるのでひと言

石橋大右

2026.8.5 石橋の考え

為替介入のことを理解していない主張が多すぎるのでひと言

こんにちは、石橋です。
先月の末日、7月31日に大規模な為替介入がありましたね。
それまでドル円相場は円安一辺倒でどんどん円安が進み、「日本は終わった」的な意見も多々見受けられました。
確かに、円の価値が下がるということは日本人が持っている円資産の価値が目減りしてしまうので、円だけで資産を持っている人は貧しくなってしまいます。それだけ日本が終わってしまうわけではありませんが、ネット上の言説は極端なものが多いですから、円安に絡めて悲観マウントをとるようなSNS投稿などが本当に多く見られました。

さて、今回の本題はここではありません。
7月31日に1回目と2回目、そして週明けの8月3日にもあったと囁かれている為替介入についてです。
為替介入の意思決定プロセスに関わっているのは、財務大臣です。
片山さつき財務大臣が介入の事実や理由などについて会見で述べているのに対して、「税金の無駄遣いではないか」という質問が飛びました。あまりにも荒唐無稽な質問なので大臣は無視する形になったのですが、これが憶測を呼びました。

「都合の悪い質問だったのでは」

ここからさらに派生して、「10兆円の介入資金があれば熊本の復興にどれだけ役立てられたか」なんていう意見まで飛び出す有り様です。
こういった意見、主張を見ると、あまりにも無理解が広がっていて、これもSNSの弊害なのかなと感じてしまいます。

まず、為替介入の資金は外為特別会計といって、一般会計の税金から出たお金ではありません。
元々は税金から作られた資金だとは思いますが、為替介入をしたからといってそのお金が消えてしまうわけではありません。
むしろ、国のお金が増えていることを、この人たちは知っているのでしょうか。

円安対策の為替介入では、ドル売り円買いの取引を行います。
つまりドルを使うわけですが、そのドルがどこから出てきたのかというと、かつて超円高になっていた時に円売りドル買いをした時のドル資産です。
かつて円相場は100円を大きく割り込んで80円前後になっていた時期がありました。今のレートが160円前後であることを考えると、何と2倍。
対ドルで日本円は2分の1の価値になったことになります。
これを逆に考えると、この当時に行った円売りドル買いの為替介入で貯め込んだ巨額のドル資産の価値も、2倍になっています。
今回の為替介入では主にこの時期に買ったドル資産を市場に撃ち込んでいるので、なんと財務省は大儲けしているのです。
こちらは、日本が保有している外為特別会計の推移です。
ご覧のように、凄まじい勢いで増加しています。

2024年の時点で、その額なんと187兆円。
ちょっとした国の国家予算を大きく上回る規模です。一般会計とは別にこれだけ莫大な資産があって、しかもそれが増え続けている事実があります。
最近ではこうした仕組みを熟知している識者が、この外為特別会計から支出すれば増税しなくてもやっていける、と主張しています。いつまでもあるお金ではありませんが、少なくとも増税を予定しているのであればそれを先送りにできるでしょう。

このことを踏まえると、「税金の無駄遣い」という指摘は大きな間違いです。
逆に、もしこの為替介入をしていなかったとしたら、どうでしょうか。
もしかするとドル円レートは170円を突破し、200円に迫っていたかもしれません。こうなったらいよいよ日本の終わりと言ってもいいような惨事です。
それを食い止めようとして日本だけでなくアメリカにも協力を求め、協調介入をした政権の判断は正しいと思います。
もちろん、為替介入をしたからといって円安の構造的な原因がなくなったわけではなく、これだけでトレンドが変わるかどうかは分かりません。
しかし、その後のドル円レートは157円近辺で頭を押さえつけられる展開です。これは間違いなく、160円を超えるようなところまで円を売り込むと再び介入が撃ち込まれて大損をするかもしれないと世界中の投資家がビビっているからです。
この心理効果はとても大きく、当面は安心して円を売ってくる動きは起きにくいでしょう。
こうした抑止効果をもたらしただけでも、日本経済にとってはメリットがあったと思います。それがいつまで続くかはまた別の話ですが。

為替介入は税金の無駄遣いでもなんでもなく、円を守る、日本を守るための行動です。
それを「税金の無駄遣い」と言ってしまうのは、何でも反対、批判したい人たちにとって格好の燃料だったのでしょう。しかし逆に、その無理解をさらけ出すことになってしまいました。
普段から思うことですが、SNSなどで何かを主張する際には、せめてもう少し調べて知識を付けてからでないと、単に過激なことを言って注目を集めたり、再生数を稼ぎたいだけにしか見えません。

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