こんにちは、石橋です。
連日ニュースを賑わせているウクライナ情勢。こんなことがこの時代に起きるのかという衝撃ニュースの連続で、心を痛めている方も多いのではないかと思います。
今回はその話ではなく、エネルギーを事業としている私が黙ってはいられない状況が起きているので、その話をしたいと思います。
ウクライナ侵攻が始まる前から、原油などエネルギー価格は上昇を続けていました。コロナ禍からの本格的な経済再起動が世界的に始まる中、石油の需要が高まっている一方で産油国が増産に消極的であることが最大の理由です。それを材料視した投機的な買いが入ったことで、さらに価格は高騰。
原油価格の高騰がいかばかりか、このチャートをご覧ください。これはWTI原油先物といって世界の原油価格の指標となるものです。
もう説明の必要がないほどの右肩上がりです。成長企業の株価がこんな値動きであれば理想的ですが、いかんせん理由は戦争なので全然喜べません。すでに世界的に原油高の影響は出始めており、日本でもレギュラーガソリンの価格が170円を超えています。このまま価格上昇が続くと1リッター200円超えも現実味を帯びてきています。かつて石油ショックがあってトイレットペーパーが店頭からなくなる、なんてこともありましたが、それが再来するのではないかと思えるレベルです。
実は、マーケットを見ているとウクライナ戦争は終わりの兆しが見えています。その最大の根拠は欧州の通貨ユーロの大幅反発と、同日の株高です。ウクライナ戦争が始まってからというものNATO諸国を擁するEUには戦争が飛び火するリスクが高まるとしてユーロが大きく売られ、爆下げといっていいほどの暴落をしました。それと同時にリスクを嫌う資産の代表格である株が全世界的に暴落しました。つまり、ユーロ相場と株式市場を見ているとウクライナ情勢がどうなっているのか一目瞭然なのです。事実、ウクライナで停戦の兆しが見えるとこの両者は反発していましたし、やはり戦争が終わりそうにない、ウクライナが敗北しそうだとの観測が流れると暴落の流れが再開していました。そして、それと反比例するようにWTI原油先物は上昇をしました。
少々断言的になりますが、3月9日の相場展開を見てこの戦争の帰趨が見えました。ずばり、この戦争は侵略者であるロシアの敗北です。核兵器を大量に保有している国なので破れかぶれの攻勢に出る可能性は否定できませんが、通常兵器による戦争でロシアはウクライナを屈服させることはできず、今後ウクライナの反撃が続くでしょう。南部にある空港をウクライナ軍が奪還したとの報道もありました。今後はこうした報道が続くのではないかと思います。それもユーロ相場と株式市場、原油先物を見ているとすぐに分かります。
これらの動きを見て、エネルギーの供給網がいかに不安定なものであるかを感じざるを得ません。多くの方も同様の思いではないでしょうか。エネルギーのほとんどを輸入に依存している日本では、海外でこうした有事があるとたちまち調達価格が高騰してしまい、経済全体に悪影響を及ぼします。せっかくコロナ禍の終わりが見えてきているのに、今度は戦争で不景気か…というわけです。
今こそ、日本はエネルギーの安全保障を本気で考える時です。太陽光発電や風力発電を中心とした再生可能エネルギーをさらに開発して電源としてのシェアを高めているのはもちろんですが、いかんせん自然は気まぐれです。人間の思い通りに電力を供給してくれるとは限らないので、もうひとつの電源として必要なのが原子力発電です。
すでにEUは原子力発煙をクリーンエネルギーと定義しており、安全に稼働できる原発は低炭素かつ高出力のエネルギー源です。これからの世界は再生可能エネルギーと原子力のベストミックスによる電力の安定供給に向かっていくことは間違いないので、日本も原発事故アレルギーだけで物事を判断するのではなく、リスクと必要性を科学的に検証して判断するべきです。
電気が突然止まってしまうリスクは、昔の比ではありません。安定供給されるからこそ今の文明社会が維持されるのであり、社会的な信用も生み出されます。いつ電気が止まってもおかしくないということでは、中国の地方都市や北朝鮮と変わりません。 ウクライナ戦争で得た教訓は他にもたくさんありますが、エネルギーについても正面から向き合う時が来ていることを感じます。