太陽光発電で売電を行っている方にとってFIT制度は、重要な制度の1つです。しかし、一定期間経過後にFIT制度の適用から外されてしまうため、FIT制度からの卒業=卒FITについて考えておく必要があります。特に売電から自家消費へ切り替えたい場合は、自家消費した電気をどのように活用したいのか検討してみるのもおすすめです。
そこで今回は、卒FITによる影響や自家消費を行う方法や注意点について分かりやすくご紹介します。野立て太陽光発電を設置している方や住宅用太陽光発電で余剰電力の売電を行っている方などは、参考にしてみてください。
卒FIT後は自家消費するべき理由
太陽光発電で発電した電気を固定買取価格で売却できるのは、10年間もしくは20年間とFIT制度で定められています。さらにFIT制度の適用期間終了後=卒FIT後の買取価格は、電力需給や電力会社の方針によって変動するのが特徴です。
太陽光発電を所有している方の中には、売電から全量自家消費へ切り替えている方も存在します。しかし、なぜ切り替えているのか分かりにくいところです。
まずは、卒FIT後に全量自家多消費型太陽光発電へ切り替えるべき理由を1つずつ確認していきます。
電力の買取価格が下がっていて売電収入を伸ばしにくい
卒FIT後に電力会社から提示される電力の買取価格は、FIT制度の固定買取価格と比較して大幅に引き下げられています。電力の買取価格は、安くなればなるほど売電収益に影響します。
2022年度の固定買取価格は以下の通りです。
出力10kW未満 | 1kWhにつき17円 |
出力10kW以上50kW未満 | 1kWhにつき11円 |
出力50kW以上 | 1kWhにつき9円 |
東京電力の再エネ買取標準プランは1kWhにつき8.5円の買取価格で、FIT制度の固定買取価格より安く設定されています。売電収入を伸ばしにくいという点が、卒FIT後も売電を続ける上でデメリットの1つです。
電気料金の削減につながる
卒FIT後に自家消費へ切り替えると、売電収入を得られなくなります。ただし、売電に回していた電力を自宅や自社の設備へ供給できるため、電気料金削減効果を伸ばすことができます。また、電気料金に含まれるさまざまな費用負担を避けられるようになります。
全量自家消費型太陽光発電は、発電した電気を全て建物内のコンセントや照明、その他設備へ供給されるのが特徴です。
発電した電気を直接使用する形なので、買取価格低下による収益効率低下を避けられますし、発電能力に応じた電気料金削減効果を期待できます。
さらに電力の自家消費は、再エネ賦課金や燃料費調整額という負担を抑えられるのが強みです。
再エネ賦課金は、電気料金プランの中に組み込まれている費用項目です。電力会社が再生エネルギーを買い取る際のコストを再エネ賦課金という形で、国民や企業へ負担してもらっています。
燃料費調整額は、火力発電に使用される燃料(原油や天然ガス、石炭)価格の一部です。日本は燃料を輸入しているため、さまざまな要因で変動する燃料価格の負担を一部国民や企業に担ってもらっています。
なお、2022年は、ロシアによるウクライナ侵攻などで燃料費調整額が上昇し続けています。また、再エネ賦課金は売電型太陽光発電などの普及で、上昇傾向が続いており、売電より自家消費の方が、固定費削減という点で多くのメリットを得られるでしょう。
出力制御の影響を受けずに済む
卒FIT後、自家消費へ切り替えると、出力制御の影響を受けずに設備を稼働させることができます。出力制御とは、電力の需給バランスを維持するために電力会社側で一時的に発電や送電を制限する措置のことです。
たとえば、電力の供給量が需要を上回る場合、電力会社は太陽光発電など一部発電所からの送電をストップしたり各発電事業者へ発電停止の要請を行ったりします。
卒FIT後の安い買取価格に加え、一時的に発電・売電できないとなると、設備の維持費用の捻出すら難しい可能性が出てきます。
自家消費へ切り替えておけば出力制御の影響を受けずに済みますし、発電した電気を引き続き活用することが可能です。
企業価値アップにつながる
売電から自家消費への切り替えは、RE100などの枠組みへ参加しやすく、企業価値アップといったメリットを得られるのが特長です。企業や太陽光発電事業を展開している自営業者などは、特に注目のポイントです。
RE100などの再生エネルギーに関する枠組みでは、再生エネルギーを活用した事業運営などを加盟条件として定められています。つまり、売電ではなく自家消費による事業活動が、環境関連の枠組みへ参加するために必要です。
また、Jクレジット制度を活用することで、CO2排出量削減による環境価値を売却し、利益を得ることが可能です。
気候変動など環境問題の解決や対応が迫られてる現代は、環境へ配慮した事業活動を行うことで消費者や取引先から評価してもらえます。
卒FIT後に自家消費型のスタイルへ切り替えるには?
続いては、卒FIT後に自家消費型へ切り替える方法を紹介します。
野立て太陽光発電の場合は自己託送を活用
平地や山間部などの地面に設置する野立て太陽光発電を稼働している場合は、自己託送制度の活用で、自家消費を始めることが可能です。
通常、自社から離れた場所に設置する野立て太陽光発電は、そのままの状態で電力を自社の建物へ送電できません。
自己託送制度は、電力会社の送配電ネットワークを活用して、遠隔地に設置された太陽光発電所の電気を自社へ送電してもらえます。自己託送制度は自家消費用のサービスなので、卒FITに合わせて自家消費を行いたい企業にマッチしています。
申込手続きは、管轄の大手電力会社で対応しています。まずは、管轄の電力会社へ問い合わせを行い、各種契約手続きを進めていく必要があります。
また、自家消費用のパワーコンディショナへ交換したり、売電しないよう電気回路の切り替え工事なども必要です。切り替え工事などは、太陽光発電の施工業者で対応しています。
個人向けのサービスではないので、野立て太陽光発電を所有している企業向けのサービスです。個人の場合は、後半で紹介する中古太陽光発電の売却を検討してみるのがおすすめです。
住宅や工場設置型の太陽光発電は全量自家消費型に対応した機器を導入
住宅用太陽光発電を設置している個人や工場の屋根など自社の敷地内に太陽光発電を設置している企業は、自家消費に対応した機器の導入や回路の切り替え工事などで切り替えることが可能です。
敷地内に設置した太陽光発電は、送配電ネットワークを利用せずに各種設備やコンセントへ電力を供給できます。そのため、自己託送制度の申請は不要です。
卒FIT後の電力を効率よく自家消費するには?
ここからは、卒FIT後の電力を効率よく自家消費するために覚えておきたいポイントを紹介します。
蓄電池を導入
卒FITの時点で蓄電池を購入していない時は、蓄電池を導入するのが大切です。太陽光発電では、発電した電気を貯めることができません。自家消費したいタイミングと発電している時間がずれていると、自家消費できませんし発電した電気の損失という問題も発生します。
太陽光発電用の蓄電池は、太陽光発電と連携し、発電量や消費電力量に合わせて蓄電と放電を行ってくれます。夜間の消費電力量が多い場合は、日中に発電した電気を貯めておき、夜間に自家消費することで効率よく電気料金の削減を実行できます。
さらに高圧電力契約を行っている企業の場合は、最大デマンドを更新しそうなタイミングで蓄電池に貯めておいた電気を自家消費することで、最大デマンド抑制と基本料金の値上げを防ぐことが可能です。
エコキュートの電力に活用
個人の場合は、自家消費型太陽光発電で発電した電気をエコキュートへ使用してみるのもおすすめです。
エコキュートは、空気中の熱をヒートポンプでくみあげて、効率よくお湯をつくる設備です。電気料金単価の安い夜間に使用することで、電気料金の負担を抑えられます。
卒FIT後は、太陽光発電で発電したタイミングでエコキュートでお湯を沸かしたり、太陽光発電の電気を貯めた蓄電池でエコキュートを稼働させたりすることで、わき上げにかかる電気料金負担を大幅に抑えることが可能です。
電気自動車を導入している場合はV2Hを通じて充電
電気自動車を導入している個人や企業の場合は、太陽光発電の電気で充電することが可能です。
電気自動車は、バッテリーでモーターを駆動させて走行する自動車です。充電の際は、電源からV2Hを通じて電気自動車へ供給されます。
電気自動車は直流電気を使用するため、電力会社や太陽光発電から送電される交流電気を変換しなければいけません。V2Hは、充電の際に直流電気へ変換し、電気自動車から自宅や自社へ電気を送電する際に交流へ変換してもらえるのが特長です。
太陽光発電を活用すれば、充電にかかる電気料金負担を0円にできます。
照明設備などへ電力を供給
太陽光発電で発電した電気は、建物内のコンセントや照明設備などに供給されます。
住宅用太陽光発電を所有している方は、自宅の冷蔵庫や電子レンジ、電気ポット、スマートフォンやパソコンなどに使用することで、日常的に利用している家電製品の電気料金を抑えることが可能です。
建物の屋根や自社の敷地に太陽光発電を設置している企業は、オフィスや工場の照明、生産設備や事務用機器などへ電力を供給することが可能です。
自家消費による電気料金削減額は、電気料金プランの契約内容や太陽光発電の発電能力、電気の使用状況によって変わります。個人の場合は年間で数万円から数10万円、企業は数100万円単位の電気料金削減効果を見込める場合があります。
卒FIT前後に蓄電池を設置する場合は申請が必要
卒FIT前後に蓄電池を設置、太陽光発電と併用する場合は、設置前に経済産業省へ申請手続きを行う必要があります。
FIT認定では、太陽光発電設置の機器構成や事業計画などを提出しています。認定後に蓄電池を設置すると、FIT認定の申請内容に違いが生じてしまいます。
そのため、卒FIT前後に蓄電池を設置する場合は、FIT認定の変更認定申請手続きを行います。変更認定申請は、再生可能エネルギー電子申請サイトで進められます。
変更手続きでは、自家発電設備等の設置の有無で「有」を選び、蓄電池の種類に関する項目を追加します。また、配線図などの必要書類を添付する必要があります。手続きが面倒と感じたり時間を確保したりできない場合は、太陽光発電の販売店や施工業者などへ代行してもらうのも大切です。
買取期間終了後から廃止届出の受理までに蓄電池を設置したい時は、比較的手続きの手間がかからない事前変更届出の提出で済みます。なお、事前変更届出に充てる時間がない時は、太陽光発電の販売店や施工業者へ相談してみるのもおすすめです。
卒FIT後に自家消費する場合の注意点
卒FIT後に自家消費へ切り替える時は、運用目的を明確にした上で、目的に沿った運用ができるか収支バランスのシミュレーションや維持費用の負担、蓄電池の後付けにかかる費用などを確認しておくのが大切です。
卒FIT後に太陽光発電を稼働させる目的がない時や自家消費でも電気料金削減効果と支出のバランスを維持できない時は、太陽光発電所の売却を検討してみるのがおすすめです。
中古太陽光発電の需要は比較的高いため、売主を見つけやすく希望価格で売却しやすいといったメリットもあります。
卒FIT後は自家消費を検討してみるのもおすすめ!
卒FIT後の自家消費へ切り替えると、買取価格の低下や出力制御といった影響を受けずに発電を続けられます。また、自家消費型太陽光発電は、固定費および家計負担の軽減につながるので、多くの個人や企業にメリットがあります。
卒FIT後の運用方法について悩んでいる方や卒FIT後に自家消費するべき理由を知らなかった方は、今回の記事を参考に自家消費型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか?
もし、卒FIT後の運用目的が見つからない時は、太陽光発電の売却を検討してみるのもおすすめです。
弊社とくとくファームは、中古太陽光発電物件情報の掲載や紹介だけでなく購入・売却手続きの仲介、アフターフォローまで対応しています。中古太陽光発電の売却に関しては、見積もりから売主との交渉と契約、売却後の税務処理まで一括サポートいたします。
卒FITに合わせて太陽光発電で手放したい方は、1度とくとくファームまでお問い合わせください。