太陽光発電の経済性および経済的メリットは、運用方法や事前のシミュレーションなどによって変わります。そのため、経済性の高い方法を把握しておく必要があります。
そこで今回は、太陽光発電の経済性や効率的な運用方法について詳しくご紹介します。太陽光発電の経済性について確認しておきたい方や、太陽光発電で自社の固定費を削減できるか知りたい方などは、参考にしてみてください。
太陽光発電の経済性は?
太陽光発電で自社の固定費・電気料金を削減していくには、運用方式と経済性について把握しておく必要があります。それでは、FIT制度と自家消費型太陽光発電の経済性について解説していきます。
FIT制度を活用した場合は経済性という点で課題もある
FIT型太陽光発電は、経済性という点で課題があります。
FIT制度(固定買取価格制度)は、太陽光発電をはじめとした再生可能エネルギー由来の電力を固定買取価格で買い取ってもらえる国の支援制度です。出力10kW以上なら、20年間固定買取価格で買い取ってもらえるのが大きな特徴と言えます。
一方で、FIT型太陽光発電には固定買取価格の下落という課題があります。
固定買取価格は毎年更新される仕組みで、認定年度の買取価格が採用されます。たとえば2023年度に認定を受けた場合、2023年度の固定買取価格が20年間適用されます。(※出力10kW以上の場合)
さらにFIT制度の固定買取価格は毎年下落傾向で更新されているため、2023年以前よりも売電収入を増やしにくい状況です。また電気料金は値上がりし続けていることから、売電収入では電気料金負担をカバーしにくい傾向と言えます。
東京電力の高圧電力、業務用季節別時間帯別電力(契約電力500kW未満)の場合、1kWhあたりの電力量料金は18.31円です。(昼間時間、その他季節の場合)
2023年度の固定買取価格は1kWhにつき9.5円なので、8.81円もの差が生じています。(出力50kW以上250kW未満)
このような経緯から、FIT型太陽光発電の売電収入で電気料金をカバーするのは、経済性という点で課題があります。
自家消費は電気料金削減効果という点で経済性のある運用方法
自家消費型太陽光発電は、電気料金の削減効果という点でFIT制度より経済性の高い運用方法です。
自家消費型太陽光発電とは、太陽光発電で発電した電気を自社のオフィスや工場・倉庫などで自家消費(利用)していく方法のことです。
前段で解説したように、これまで主流だったFIT型太陽光発電は、固定買取価格の下落と電気料金の値上げという点で経済性に課題があります。
自家消費型太陽光発電の場合は発電した電気を直接利用できるため、自家消費分だけ電力会社からの買電量を削減することが可能です。
たとえば、1ヶ月に500kWhから100kWh自家消費した場合、電気料金を20%程度削減できます。
売電収入でカバーするには発電量だけでなく買取価格の兼ね合いも影響してくるため、自家消費の方がシンプルかつ効率よく電気料金負担を軽減できます。
固定買取価格下落の影響を受けずに効率よく電気料金負担を削減できるのは、経済性という点でも注目すべきポイントです。
自家消費型太陽光発電の経済的メリット
続いては、自家消費型太陽光発電の経済的合理性およびメリットについて詳しく紹介していきます。
自社の電気料金負担を削減できる
自家消費型太陽光発電を設置すれば、自社の電気料金負担を大幅に削減することが可能です。電気料金は2022年頃から急激に値上がりし始めています。主な原因は、ロシアによるウクライナ侵攻から始まった国際的な燃料価格の高騰です。
そのため、2023年6月時点でも電気料金の値上げ傾向や物価高は止まらず、企業にとっても厳しい経営状況と言えます。
前段で解説したように、自家消費型太陽光発電は発電した電気を自社オフィスのコンセントから取り出したり照明や生産設備へ供給したりできるため、買電量の大幅な削減を目指せます。
さらに売電収入を活用した対策とは異なり、「買電量の削減=再エネ賦課金や燃料費調整額といったコストの削減」も実現できます。
今後も電気料金の値上げ傾向は続く可能性が高いため、自家消費型太陽光発電で早期に対応することをおすすめします。
脱炭素経営をアピールできるため事業イメージアップにつながる
自家消費型太陽光発電は、電気料金削減効果だけでなく企業価値アップという点でもメリットの多い設備です。
政府は2050年のカーボンニュートラル達成目標に向けて、さまざまな環境対策や支援制度を打ち出しています。
また投資家や企業は時代の流れを読み、脱炭素経営・環境経営へシフトしている企業への投資や取引を検討し始めています。社会全体で環境や人権などの意識が高まれば、消費者も意識し始めます。
自家消費型太陽光発電の運用は、二酸化炭素排出量の削減実績を示せますし、脱炭素経営をアピールできます。
このように自社の事業を継続・成長させていくには、脱炭素経営をアピールするための活動や自家消費型太陽光発電などによる実績作りも欠かせません。
太陽光発電を活用した新たな事業につながる可能性
太陽光発電を導入しておけば、将来的に新たな事業へ活用できる可能性があります。自家消費型太陽光発電は、自社の電力をカバーするための運用方法です。しかし、太陽光発電の経済性は自家消費だけではありません。
たとえば、太陽光発電で発電した電気に含まれる環境価値を取引し、収益を得ることが可能です。カーボンクレジット取引という制度は、二酸化炭素削減量をクレジット化し、企業や個人同士で取引を行えるものです。
持続可能な社会に合ったビジネスに取り組みたい方は、新たな事業の足がかりとして自家消費型太陽光発電を始めてみてはいかがでしょうか。
補助金制度の活用により初期費用回収期間を短縮
自家消費型太陽光発電の初期費用回収期間は、補助金制度の活用で短縮できます。(初期費用回収期間:初期費用を回収できる期間のこと)
経済産業省の「令和5年度以降の調達価格等に関する意見」によると、自家消費型太陽光発電の初期費用は出力50kW以上なら1kWにつき15.5 万円前後で推移しています。初期費用の回収期間は一般的に15年前後です。
国の太陽光発電に関する補助金制度は自家消費型太陽光発電向けなので、自家消費を前提としている事業者にとって申請しやすいと言えます。
たとえば、「ストレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」は、自己所有タイプの自家消費型太陽光発電なら1kWにつき4万円の補助金を受けられます。
出典:経済産業省ウェブサイト
自家消費型太陽光発電のデメリット
ここからは、自家消費型太陽光発電のデメリットについて確認していきましょう。
売電収入は得られない
売電収入を得たい方にとって、自家消費型太陽光発電はデメリットに感じる可能性があります。
太陽光発電で売電収入を得るには、自家消費以外の方法で運用していかなければいけません。ただし前半で解説したように、FIT型太陽光発電は経済性という点で課題があります。
また、出力250kW以上の太陽光発電ならFIP制度という別の制度で売電できるものの、アグリゲーターと契約しなければ、需要家(電力の使用者)へ供給したりインバランスリスクを抑えたりできません。(インバランスリスク:発電計画と供給量の差額を支払う)
太陽光発電の運用を検討する際は、売電だけでなく自家消費に目を向けてみるのも大切です。
施工販売業者への連絡をはじめとした担当者が必要
自家消費型にかぎらず太陽光発電を設置するにあたっては、施工販売業者との連絡対応などを行う担当者を配置する必要があります。
自家消費型太陽光発電事業の運用の流れは、施工販売業者と契約締結、現地調査や設計、設置工事です。業者によっては、運用保守までサポートしてもらえます。
なるべく自社の負担を抑えたい場合は、設置工事だけでなく総合的にサポートしてもらえる専門業者へ相談しましょう。
弊社和上ホールディングスでは、全量自家消費型太陽光発電の企画から設計、施工、設置後の保守点検、運用まで総合的にサポートしています。負担を抑えながら導入したい方は、ぜひお気軽にご相談ください。
維持管理費用や修理交換費用が発生
太陽光発電の運用には維持管理費用がかかるため、運用前にシミュレーションしておくのも大切です。
自家消費型太陽光発電の設置後は、保険料やメンテナンス費用、廃棄費用の積立などさまざまな費用がかかります。また、メンテナンスや修理交換は太陽光発電の専門業者でしか対応できないため、費用を抑えにくい傾向です。
経済産業省の「令和5年度以降の調達価格等に関する意見」によると、事業用太陽光発電の運転維持費は1kWにつき5,000円とされています。
出力100kWの太陽光発電を設置した場合、年間50万円の維持管理費用がかかります。
つまり、維持管理費用を抑えたい場合は、1kWあたり5,000円の維持管理費用を参考にしながら各専門業者の見積りを比較することが重要になります。
出典:経済産業省ウェブサイト
設置場所によっては自家消費型太陽光発電に適さない可能性も
場所によっては自家消費型太陽光発電に適さない可能性もあるため、慎重に設置場所を検討する必要があります。
特に注意すべきは、影の発生しやすい場所かどうかという点です。自家消費型太陽光発電の電気料金削減効果は、太陽光パネルの設置角度や日照時間、パワーコンディショナとパネルの相性など、複数の要素を細かく調整していくことで改善できます。
ただし、影の影響を受けると発電量を増やすことができません。設置場所を選定する際は、影による影響などをシミュレーションで丁寧に検証しましょう。
太陽光発電の経済性を伸ばすには?
最後は、太陽光発電の経済性を伸ばすために押さえておくべきポイントについてわかりやすく解説していきます。
変換効率の高い設計が可能な業者へ依頼
太陽光発電の経済性を伸ばすには、設計や施工品質の高い業者へ依頼しましょう。
太陽光発電の変換効率は、太陽光パネルの種類やパネルの設置方法、角度、パワーコンディショナをはじめとした周辺機器との相性などでも変わります。また、自社の電力使用量に合った設備にしなければ、たとえ変換効率の高い設備であっても自家消費しきれず、費用回収期間の長期化につながります。
ノウハウを蓄積した太陽光発電専門業者に依頼すれば、設計段階から変換効率の他、さまざまな点を考慮して準備を進めてもらえます。
蓄電池などを活用しながら積極的に自家消費
蓄電池との併用は、太陽光発電の経済性を伸ばす上で押さえておくべきポイントです。
蓄電池は、太陽光発電向けにも製造されています。産業用蓄電池は、事業用太陽光発電に対応した比較的蓄電容量の大きな製品で、17kWh以上のタイプを指します。
太陽光発電単体では電気を貯められないため、効率的な運用ができない可能性もあります。
蓄電池を併用すれば、太陽光発電で発電した電気を任意のタイミングで貯めておけます。また蓄電池に搭載された機能を活用することで、充電重視や自家消費重視、防災対策など、目的に合わせた蓄電ができます。
また、消費電力量の多い時間帯は太陽光発電と蓄電池で自家消費し、消費電力の少ない時間帯は蓄電池への充電を優先させることも可能です。
太陽光発電の経済性は自家消費で高くなる!
太陽光発電の経済性が気になる時は、自家消費を検討してみるのもおすすめです。FIT制度の固定買取価格は毎年下落傾向なので、売電収入を得たとしても、電気料金の値上げや物価高の続く2023年にはメリットの少ない運用方法と言えます。
一方、自家消費型太陽光発電で自家消費した場合は買電量を削減できるため、電気料金を効率的に削減することが可能です。
太陽光発電の経済性に期待している方や自社の固定費を削減したい方は、今回の記事を参考にしながら自家消費型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか。
弊社和上ホールディングスでは、全量自家消費型太陽光発電の企画設計から施工、運用保守まで総合的にサポートしています。また、補助金制度の確認や申請サポート、水上設置や屋根設置など、さまざまな場所への設置に対応します。
少しでも気になる方は、お電話やWebフォームよりお気軽にご相談ください。