太陽光パネルのメンテナンス方法として導入されつつあるEL検査は、パネルの異常を可視化できる検査方法です。早期の異常発見を目指す上でメリットが大きく、多くの太陽光発電事業者に注目されています。
今回はELとはどのような検査なのか、その特徴や仕組み、太陽光発電事業に取り入れるメリット、コストについて詳しくご紹介します。太陽光発電のメンテナンスサービスを見直している方などは、参考にしてみてください。
EL検査とは?
まずは、太陽光パネルのメンテナンス方法として導入されているEL検査の概要、仕組みについてわかりやすく解説します。
太陽電池に電流を流して発光部分を撮影
EL(エレクトロルミネセンス)検査とは、電流を流すと特定の波長帯の光を発光するという太陽光パネルの性質を利用して、異常を見つけるメンテナンス方法のことです。
元々はメーカーの出荷前検査に用いられている技術ですが、近年O&Mサービスで導入されつつあります。
EL検査では太陽光パネルに電流を流し、その反応を撮影して以上を確認します。不具合が発生している箇所は電流を流しても発光しないため、画像解析によって各セルの状態を把握できます。迅速かつ明確に太陽光パネルの不具合を発見できる点が、大きな特徴です。
近年ではドローンによるEL検査も
EL検査は暗所で行う必要があります。したがって一般的なEL検査の流れは、太陽光パネルを取り外して、メーカーやO&Mサービスに引き渡して検査を実施するというもの流れです。そのため、時間と手間がかかる点は、課題の一つでした。
しかし近年では、架台に太陽光パネルを取り付けた状態で電流を流し、ドローンによる空撮で夜にパネル全体を撮影し、分析していく検査方法も出てきました。ドローンを活用した撮影なら、取り外さずにチェックできるため、短時間での測定を実現できます。
太陽光発電所の稼働を止めずに検査できるため、従来のEL検査よりも導入しやすいのがメリットといえます。
EL検査とPL検査の違い
EL検査とPL検査の大きな違いは、測定方法です。
前段で解説したようにEL検査の場合は、太陽光パネルに電流を流し、特定の波長帯における発光を測定しながら不具合の状況を分析します。このため、目視ではわからない不具合や将来発生しそうな不具合を発見することが可能です。しかし、不具合によってはパネルがほとんど真っ暗になることもあります。
一方PL検査は、太陽光パネルにレーザー光を照射し、セルの発光状況から不具合の有無や種類を測定していく検査方法です。詳細にパネルの状況を確認できるので、セルの劣化や結晶構造などを分析できます。
EL検査によって確認可能な不具合
続いては、EL検査によって確認可能な主な不具合を紹介していきます。
ガラスのひび割れ
EL検査では、太陽光パネル表面に取り付けられているカバーガラスのヒビや割れなどを見つけられます。
カバーガラスのヒビ・割れは目視でも確認できるものの、太陽光パネルの数が膨大な大規模設備においてすぐに発見できない可能性もあります。EL検査を実施すれば、より鮮明にカバーガラスの破損を撮影できるため、迅速かつ正確な状況を確認することが可能です。
セルの割れ
太陽光パネルに搭載されているセル(太陽電池)の破損はもちろん、微細な割れといった不具合もEL検査によって発見できます。
セルの割れ(クラック)は、ホットスポットなどによって引き起こされる不具合の一つです。ホットスポットとは、配線の不良や劣化、鳥のフンなどによってパネル表面に発生した部分的な影が原因で、局所的に発熱してしまう現象のことです。
とくにセルの微細な割れは、目視で発見できませんしサーモグラフィーでの測定でも発見の難しい事象です。大きな割れといった深刻な状況でなければ、発見できない可能性があります。
クラックがひどくなるまで放置してしまえば、発電量低下や発電停止、太陽光パネル全体の破損といったさまざまなリスクにつながってしまいます。EL検査を定期的に実施してもらえれば、早い段階で対処することが可能になるでしょう。
バイパスダイオードのショート(短絡)
EL検査では、バイパスダイオードのショート(短絡)による異常を検知することが可能です。
バイパスダイオードとは、太陽光パネル内の回路に組み込まれたダイオードという半導体素子のことです。EL検査は、この故障による発熱をはじめとした不具合を検知できます。
太陽光パネルは、一部が故障した場合、バイパスダイオードによって故障箇所を迂回しながら電流を流せるように設計されています。そのため、発電の損失や更なる故障、事故のリスクを抑えることが可能です。
しかしバイパスダイオードが、劣化や高負荷などによって故障してしまうと、この仕組みがうまく機能しません。不具合の発生しているセルにまで電流を流してしまい、発熱などの不具合を引き起こします。
バイパスダイオードの故障を見つけるためには、電気点検が必要です。EL検査では、発光状況の変化でバイパスダイオードの状態を捉えられます。
PIDおよび発電異常
EL検査を実施した場合、太陽光パネルのPID現象による異常を検知できます。
PID現象(Potential Induced Degradation)とは、太陽光パネルを複数接続した上でシステムを稼働させた際、漏れ電流による出力の低下を招く異常のことです。具体的には、太陽光パネルのフレームへ電流が漏れてしまい、本来得られるべき発電量を損失してしまいまうといったケースがあります。
他の異常と同じくEL検査なら、太陽光パネルおよびセルの発光状況によって把握できます。
EL検査の費用相場
太陽光発電におけるEL検査の費用については、O&Mサービス(管理・点検などのサービス)および、検査対象の設備規模などによって変わります。また一般的にインターネット上で費用は公開されていないため、費用相場を推定するのは難しいところです。
これからO&Mサービスを契約したり切り替えたりすることを検討している方、EL検査を依頼する方は、O&Mサービスの相見積もりを活用しましょう。各検査項目の費用を比較し、費用相場を計算するのが大切です。
またO&Mサービスを検討する際は、複数のサービスを一つのプランにまとめた月額プランの方がおすすめです。各検査項目を一つずつ追加していくプランよりも費用を抑えやすく、なおかつ遠隔監視から定期メンテナンス、緊急時の駆けつけサービスといった必要な項目をまとめて導入できます。
EL検査を活用するメリット
太陽光パネルのさまざまな異常や故障は、サーモグラフィーや電気点検などで発見することが可能です。そのためEL検査は、太陽光発電システムにおいて必須な検査方法ではありません。それでもEL検査が求められているのには、理由があります。
不具合の発生状況を証明したり、太陽光パネルの品質を確認したりする上で役立つからです。ここからは、太陽光発電事業においてEL検査を取り入れるメリットをわかりやすく解説します。
不具合を明確に証明できる
EL検査は、太陽光パネルの不具合を証明しやすい検査方法です。
メーカー保証による交換・修理などを受ける場合など特定のケースでは、不具合を証明しなければいけません。EL検査は、特定の波長帯で発光している太陽光パネルを専用の機材で撮影し、記録に残すことが可能です。また発光の有無で、不具合の発生している箇所を発見できるため、太陽光パネルの状態を明確に示せる方法でもあります。
万が一の不具合発生時に補償を受けたい場合は、EL検査を活用してみるのもおすすめです。
将来的に発電損失を招くセルがあるか確認できる
EL検査は、太陽光パネル内に搭載されたセルの品質を確認する上でも役立ちます。
たとえば、セルに発生する微細なクラック(ヒビ)は、その後、故障などの不具合につながるケースもあります。目視などで見つけたり分析したりするのが難しい事象です。
EL検査の場合は微細なクラックも明確に示せるため、故障発生前の段階で将来的に発電損失を招くかどうかを評価できます。万が一、発電損失につながるクラックなら、早めに太陽光パネルの修理交換を実施し、故障による発電停止といったリスクを軽減することが可能です。
パネルを取り外さずに検査可能
EL検査に対応しているO&Mサービスの中には、太陽光パネルを取り外さずに行っているサービスも出てきているので、よりスムーズに検査を進められる環境へ変わりつつあります。
従来のEL検査は、あくまで架台から太陽光パネルを取り外す必要があるため、発電を一時的に停止しなければいけませんでした。しかし最新のEL検査では、太陽光発電所の稼働を継続しながら、太陽光パネルに電流を流し、発光状況の撮影や分析を進めてくれます。
またO&Mサービスによっては、メガソーラークラスの太陽光パネルに関しても夜間の間に撮影・測定できるため、スピーディに行えるのもメリットの一つです。
日射量の強弱に関係なく検査を実施
暗所で実施する検査であるため、サーモグラフィーによる検査と異なり、日射量で実施可能かどうかが左右されることもありません。
とくに最新のEL検査では、夜間の間に少数の作業員で実施してくれます。発電事業に影響しない時間帯で作業してもらえるのは大きなメリットです。
ただし、EL検査のみで太陽光発電所のさまざまなチェックを済ませられる訳ではないので、目視点検や電気点検を軸にメンテナンスパックを検討するのが大切です。
O&Mサービスを選ぶ際はEL検査以外の項目にも注目
EL検査は、O&Mサービス(メンテナンスや管理を専門とするサービス)で依頼できます。しかしO&Mサービスを比較検討する上では、EL検査以外の項目にも注目するのが大切です。
EL検査は、太陽光パネルやパネル内部のセルに関する不具合を発見できる検査方法です。しかしこれまでお伝えしてきたように、同検査方法で太陽光パネルに関するすべての不具合を検知できる訳ではありません。架台や周辺機器の不具合・劣化などに関するリスクもチェックする必要があります。
それでは、O&Mサービスを選ぶ上で重視すべきポイントを解説します。
定期点検メニューの内容が充実しているか
O&Mサービスを調べる際は、定期点検メニューが充実しているかどうか確認しておきましょう。
太陽光発電所の定期点検は、大きくわけて目視点検と電気点検の2種類です。目視点検は、作業員の目視によって架台の腐食、太陽光パネルの割れ、ケーブルの切断や被覆の破れといった破損状況を確認する作業を指しています。
一方、電気点検とは、太陽光パネルや周辺機器の電柱や電圧・抵抗などから、異常を見つける検査のことです。他にも以下のような作業が、定期検査において必要とされています。
- 太陽光パネルの割れ、汚れの付着に関する確認
- 接続部分のゆるみや腐食、破損の有無
- パワーコンディショナや接続箱といった精密機器の漏電・浸水などの破損の有無
- 敷地内の汚れや雑草のチェック・清掃
検査の必要な項目は一つではないので、太陽光パネルを含む各設備や機器を検査してもらえるか、敷地内の清掃や除草作業までカバーしてもらえるかどうか、見積りの段階で相談しておくのがおすすめです。
遠隔監視および駆けつけサービスの有無をチェック
一般的にO&Mサービスでは、定期点検だけでなく遠隔監視と障害発生時の対応(=緊急時の駆けつけサービス)が付帯されています。そのため遠隔監視や運転管理、駆けつけサービスを受けられるか確認するのが、比較検討において重要です。
太陽光発電事業において収益低下を抑えるには、発電量低下などのエラーを早期検知し、迅速に対処する必要があります。
O&Mサービスでは、インターネットに接続した遠隔システムや監視カメラなどによって、太陽光発電所の敷地内や発電量および関連データを常時チェックしています。また、万が一エラーを検知した場合は、同サービスのスタッフが現地へ急行して点検・修理作業を進めてくれるのです。
遠隔監視と駆けつけサービスは、太陽光発電の継続的な稼働を保つ上で欠かせないサポートといえるため、必ずチェックしておきましょう。
実績豊富なサービスから検討する
O&Mサービスを比較する際は、実績豊富なサービスから見積りを検討するのがおすすめです。
太陽光発電所は、20年以上の長期にわたって運用していきます。そのため、O&Mサービスとの契約やサービス提供期間も長期におよびます。万が一、技術力や対応に問題がある場合、再度手間をかけて別のO&Mサービスを調べる必要がありますし、太陽光発電所の運用にも影響を与えてしまいます。
このようなリスクを避けるためには、対応件数などの実績が豊富なサービス・評判のいいサービスから検討するのも大切なポイントです。
EL検査とは発光状態から異常を発見する検査方法!
EL検査とは太陽光パネルに電流を流し、特定の波長帯の発光具合から太陽光パネルや内部の不具合を見つける検査方法のことです。とくに、不具合の証明やセルの品質を確認する際に役立ちます。
しかし、太陽光発電所のメンテナンスは、EL検査のみで対応しきれません。10年・20年と運用していく上では、O&Mサービスから提供されているさまざまなメンテナンス・運用管理サポートを活用するのが重要です。
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