こんにちは、石橋です。
私が代表を務める和上ホールディングスは、太陽光発電をはじめとする環境ビジネスや、電気事業を展開する企業です。もちろん日本の会社であり、代表である私は日本人です。
なぜ最初にそんなことをわざわざ述べるのかというと、太陽光発電に関するデマや陰謀論にはほぼ間違いなく中国が登場するからです。
これは弊社だけでなく、太陽光発電業界全体に対する風評被害ともいえる部分があるので、今回はこの場を使ってからまった糸を冷静にほどいていきたいと思います。

SNSなどでよく見かけるのが、「太陽光発電は中国の産業、それを推進することは親中だ」という趣旨の主張。
確かに、現在世界の太陽光発電システムの市場シェアは中国メーカーが上位を占めています。かつては日本メーカーが上位を占めていたことを考えると複雑な気持ちになりますが、それは現実です。大規模な生産ラインというスケールメリットをいかしてコストダウンをしているのですから、小規模メーカーでは太刀打ちできません。
でもこれって、何も太陽光発電だけの話ではありません。
最近、トランプ関税が話題になっていますね。トランプ大統領は「アメリカに製造業を取り戻す」ために、アメリカが巨額の貿易赤字を抱えている国に対して高い関税をかけました。そうすれば関税分だけ価格が高くなり、アメリカにとっての輸入品の価格競争力が低下します。アメリカの国内メーカーと価格が同じであれば、アメリカ製品が売れて製造業が復活する・・・というロジックです。
これが果たして成功するかどうかは、正直懐疑的です。トランプ大統領が標的にしている日本車についても、関税をかければアメリカ車が売れるようになると考えているみたいですが、そうでしょうかね?アメリカ人は壊れずに高性能な日本車を選んでいるのであって、アメリカ車よりも安いから選んでいるわけではないと思います。アメリカでレクサスに乗っている人が、関税分の値上げを気にするかというと、考えにくいですよね。
逆に日本でアメ車に乗っている人に聞くと、「壊れてばっかり」という悪口が聞こえてくるので、アメリカでも同じだと思います。
話がそれましたが、同じことは日本国内でも起きています。たとえば、スマホ。今や日本製のスマホなんてほとんど流通していませんね、アメリカ製のiPhone、韓国製のギャラクシー、中国製のファーウェイ、などなど。仮に中国製以外であっても組み立てや製造を中国で行っているのが大半で、iPhoneですら中国で最終製品になります。
もしトランプ関税によってiPhoneを中国で作らなくなり、アメリカ国内で作るようになると、価格は今の4倍近くになるそうです。それだけ中国で製造することに優位性があるわけです。
パソコンも同じで、日本国内で売られているパソコンを脱中国すると、10万円のパソコンが40万円くらいになるそうです。
好む、好まざるにかかわらず、もう長らく中国が世界の工場となって効率のいいものづくりをしているのは現実なんです。「太陽光パネルを買うのは親中だ!」という人は、それならスマホやパソコンを買う人も親中ということになります。
それ以外にも私たちの身の回りにあるさまざまな製品を見ると「MADE IN CHINA」と書かれています。なぜそうなっているのかというと、一番生産ラインが安定していてコストにも優位性があるからです。親中だから、共産党の犬だからという理由で中国での製造を選んでいる会社なんて、ほとんどないはずです。
太陽光発電投資をしている人や会社に対しても、「中国を利している」という矢が飛んでくるそうですが、私が知っている限り中国を利するために太陽光発電投資をしている人は1人もいません。単に投資としての魅力があるからであり、環境ビジネスに将来性や倫理性を感じているから投資しているだけです。
もうひとつ気になるのが、「太陽光発電なんて儲からない、ただの詐欺」という論調です。初期投資を回収することなんてできず、結局は販売会社や施工会社が儲かるだけ、というロジックです。
この根拠となっているのが、売電価格の低下です。ご存じの方は多いと思いますが、FIT(固定価格買取制度)による売電価格は年々低下しています。こんなに売電単価が下がっているのだから、収益性も下がる、だから儲からないということですね。
そもそも、FITは一種の補助金のようなものです。太陽光発電の電力を高く買うから皆さんどんどん設置しましょう、という趣旨で始まりました。そのため、初期の頃は40円を超えるような高額買取をしていました。
しかしその後太陽光パネルなどの価格が下がり、それほど補助金を出さなくても普及するようになってきました。すでに国の補助金制度は終了してしますし、FITの買取価格が下がってくるのも当然といえます。
しかも、家庭用太陽光発電の場合は自家消費分の貢献があります。太陽光発電がなければ2万円だった電気代が、1万円で済んだとしたら、その1万円は太陽光発電による貢献です。これは毎月のことだけに、積み重なると大きな金額になります。しかも昨今では電気代がどんどん高くなっています。その高い電力を買わずに済むだけでも、太陽光発電が果たす役割は大きいわけです。
太陽光発電を「詐欺だ」とする主張の多くは、損益計算をする際にこの自家消費分を考慮していません。もしかしたら気づいているのかもしれませんが、不都合な事実だけにスルーしてしまうこともできます。
こうした私の意見は、決してポジショントークではありません。事業の最前線では太陽光発電のデメリットやリスクにも直面しているので、それを包み隠さずお伝えしています。
しかし、ネットなどで流布する陰謀論を見ていると、ロクに太陽光発電のことを理解していない人が注目を集めるため?再生数を稼ぐため?に言っているようにしか見えないので、物申させていただきました。

