トランプ大統領の国連演説で「地球温暖化はでっち上げ」との発言が物議を醸していますが

石橋大右

2025.9.29 環境問題石橋の考え

トランプ大統領の国連演説で「地球温暖化はでっち上げ」との発言が物議を醸していますが

こんにちは、石橋です。
先日、アメリカのトランプ大統領が国連で演説しましたが、その内容がなかなかのインパクトで、環境界隈だけでなく世界中に物議を醸しています。
「またトランプか」と世界が呆れ気味になっている部分もありますが、なぜ彼はそのように主張しているのか、もしかして一理あるのか、という視点で環境ビジネスの最前線にいる立場から検証してみたいと思います。

まず、一番話題になっている「地球温暖化はでっち上げ」という主張。「史上最大の詐欺」とも言っています。
なかなかの極論だと思いますが、実は同じことを主張している人たちは存在しています。気候変動自体は認めるものの、その理由が二酸化炭素の排出ではない、という説もあります。
客観的なデータを見ると、産業革命前と比べて地球の平均気温は1.5度以上上昇しています。これは紛れもない事実であり、昨今の日本の暑すぎる夏を見ても肌で感じられる変化だと思います。
私が見る限り、この発言はちょっと切り取られている印象があります。トランプ大統領が言いたいのは、「地球温暖化を人類の営みのせいにするのはでっち上げ」ということです。地球が温暖化しているのは確かかもしれないが、人類のせいかどうかは分からない、というわけです。
事実、地球は10万年というとても長いサイクルで氷河期を繰り返しており、これをミランコビッチ・サイクルといいます。
もちろん10万年前に人類が二酸化炭素を大量に排出していたわけではなく、この10万年サイクルの気候変動は人類の力とは別次元で起きているものです。もっといえば、太陽の活動の変化によるものだけに、地球ですら力が及ばない世界です。
そのサイクルで地球が温暖化しているとすれば、二酸化炭素の排出削減をしても意味がないじゃないか、というわけですね。しかも二酸化炭素の排出削減をするには経済的な負担を伴うため、経済成長の邪魔になる、というのも彼の持論です。
これについては、私も正直言ってまだ人類は正解にたどり着いていないと思っています。もちろん二酸化炭素などの温室効果ガスが地球を温暖化させていることは紛れもない事実ですが、昨今の気温上昇のすべての原因かどうかまでは断定できません。太陽の活動が活発化していることも事実であり、これも関係していると思います。
つまり、トランプ大統領の言い分にも一理はあるものの、全世界規模で人類が取り組んでいる環境対策を否定するのは暴論だと思います。彼の支持層には石油関連産業とか自動車産業の人たちが多数いるので、その人たちに耳障りのいいことを言いたいんだと思いますが、そのために地球を壊していいはずはありません。

もうひとつ、私の業界に近いところで気になった発言は、「再生可能エネルギーは機能しておらず、しかも高い」というもの。これも聞き捨てなりませんね。主に太陽光発電と風力発電のことを言っているものと思いますが、これについてはすでに2024年の実績値として再生可能エネルギーの91%が石油や石炭よりも低コストであることが判明しています。
特にこれはアメリカや中国など国土の広い国にある大規模な発電施設でコストダウンが進んでいる傾向があり、トランプ大統領のお膝元でも優秀な成績がでているのに、それを否定するのは関係各所に失礼ですよね。
その話の流れで、中国を名指しして「風力発電所なんかほとんどない」とも発言しています。これも実際には2024年のデータを見ると中国国内の総発電量の20%がすでに太陽光と風力にシフトしています。中国は早くから太陽光にかなり積極的に取り組んできたこともありますが、近年では風力発電の発電量が急増しています。
このままいくと、物量において中国が世界一の再生可能エネルギー大国の座を勝ち取るのは確実です。世界が再エネに本格シフトした時に、このままだとアメリカが取り残される可能性すらあります。アメリカファーストどころか、アメリカ最下位です。

パリ協定から2回離脱したことでも知られる大統領ですが、彼はよほど環境問題と関わるのが嫌いなんでしょうね。その理由は簡単です。彼が目の敵にしているアメリカの民主党の政策に環境対策が多く含まれているからです。自分は民主党とは違う、自分は本当にアメリカのためになる政策をしているんだ、と主張したいわけです。
ではアメリカの次期政権が民主党になると一気に環境問題への取り組みが加速するかというと、それも微妙だとは思います。世界でトップクラスの二酸化炭素排出国でありながら、これまでの取り組みは鈍いものでした。ヨーロッパや日本のほうが先行している状況に、今や中国が世界をリードしようとしています。アメリカが本当に中国に勝ちたいのであれば、この分野でも世界のトップを走るべきです。いつか化石燃料は枯渇し、環境問題以前にそもそも燃料がなくなるんですから。
でも実際にはその真逆を行こうとしています。彼の主張には一理あるものの、やはりトータルで見ると環境問題、そもそも科学への造詣が浅すぎると言わざるを得ません。
アメリカ国内でも集中豪雨やスーパー台風、竜巻など地球温暖化に由来する自然災害が頻発しています。トランプ大統領は老人でもあるのであまり興味はないかもしれませんが、アメリカの若い世代がこのことに気づいて実効性のある行動を起こすことが世界にとって必要な段階にきているのかなと思います。

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