日本発「夢の大発明」といわれるペロブスカイト太陽電池について、今回はその後編です。後編は話の途中からなので、ぜひ前編もお読みいただければと思います。
今回お伝えしたいのは、ペロブスカイト太陽電池が実用化され、日本発の夢のエネルギーとなるために克服するべき課題についてです。夢が現実になるためには、決して平たんではない道のりがあります。
ちなみに民間企業でペロブスカイト太陽電池の実用化に最も近い位置にあるといえるのが、化学メーカーの積水化学です。和上ホールディングスと同じく、大阪の企業です。
同社ではすでに自社の建物においてペロブスカイト太陽電池を設置し、社内で使用する電力の自給を行う実験を進めています。同社の研究所屋上で行われている発電試験は、なんと世界初に試みです。
その他にもNTTデータがデータセンターで大量に消費される電力の一部をまかなうためにペロブスカイト太陽電池の導入を決めています。これもまだまだ実験段階なので、本格的な実用化というレベルではありません。
それではペロブスカイト太陽電池が実用化するためには、どんな課題があるのでしょうか。
現在研究が進められている2つの大きな課題は、耐久性と大型化です。ペロブスカイト太陽電池はまだまだ耐久性が低く、シリコンの太陽電と比べると実用化をしたとしても耐久年数が3分の1くらいにしかなりません。これだとコストが安いとは言っても頻繁に交換をしなければならないので、コスト負けしてしまう懸念があります。原因はペロブスカイト太陽電池の主原料であるヨウ素の安定性の低さです。自然界では不安定な物質だけに劣化も早く、発電性能が早期に低下してしまいます。これを克服するためにはヨウ素ではなく耐久性の高い原料に代替するか、強固な保護層をもつ太陽光パネルの開発が待たれます。とはいえ、ペロブスカイト太陽電池は曲げられることが大きなメリットなので、保護層を強化したいあまりに曲げられる性能を損ねるわけにはいかず、難しいところです。
もうひとつの課題である大型化は、本格的な発電施設に利用する際に必須の性能です。ペロブスカイト太陽電池は印刷物のように表面に太陽電池を敷き詰めていきますが、これを均一にプリントしていくことは意外に難しく、現在広く利用されているシリコン型太陽電池のような大きさにするにはまだまだ多くの実証実験をする必要があるそうです。面積が大きくなるほど表面の品質にムラができてしまうと、実用化した際に「当たりはずれ」ができてしまうので、これも克服するべき課題です。
さらにもうひとつ、太陽電池開発においては避けて通れない外的要因もあります。それは、他国との開発競争です。というのも、すでにシリコン型太陽電池では大きく差をつけられている中国の存在があります。日本で発明されたペロブスカイト太陽電池ですが、すでに中国でも実用化に向けた開発が急ピッチで進められています。シリコン型太陽電池も当初は日本が全世界のシェアの大部分を握っていたのにそれを中国に奪われてしまった苦い経験があります。ペロブスカイト太陽電池で二の舞を踏まないよう、国を挙げた開発体制が必要になります。
もちろんこのことは国も認識しており、開発予算をつけて実用化に向けた開発を進めている研究機関や企業を後押ししています。夢の次世代エネルギーが日本の財産となるよう、これからも注意深く見守っていきたいと思います。