超円高時代に思うこと

石橋大右

2011.8.27 石橋の考え

超円高時代に思うこと

お盆休みをはさんで、経済の分野では大騒ぎが続いています。

その主役は言うまでもなく、超円高です。

特に対ドルでの円高進行が凄まじく、これまでの最高値をあっさりと突破したのは記憶に新しいところです。

さすがにここまで来ると、異常と言わざるを得ません。日本経済がそこまで国際社会から信頼されているのはありがたいことですが、そのせいで日本経済が打撃を受けてしまうのは看過できませんね。

そもそも、円高になると何が起きるのでしょうか?

まず考えられるのは、日本製品が相対的に高くなってしまうので国際的な競争力を失ってしまいます。自国の通貨を安くしておくと自国製品の価格を安く販売できるので輸出は伸びます。

これを国家的な戦略としている代表的な国が、中国と韓国です。中国には自由為替制度がないので極端な言い方をすれば国の意向通りに為替レートを誘導することができます。人民元が今のような安さであり続ける限り、安い中国製品は世界中を席巻し続けることでしょう。

ただし、自国通貨が安いということは賃金水準がいつまで経っても上がらないことや、輸入製品の価格が下がらないので一般市民の生活はあまり良くなりません。昨今の中国で起きているデモなどには、こうした不満が背景にあるとされています。

一方、円高というのは日本円が強くなるということなので、デメリットばかりではありません。よく海外旅行に出かける人がおトクになった、という報道を目にしますが、こんなものは円高メリットのごく一部に過ぎません。

なんだか、本当にある大きなメリットを隠すためにわざとショボい話にすり替えているのではないかと思うほどです。

では、現在のような超円高が持つ本当のメリットとはなんでしょう?

それは言うまでもなく、強い日本円を使って外国資産を買うということです。

例えば、アメリカ国内にある100万ドルの不動産物件を買うとしましょう。1ドルが150円程度だった時代が長く続いたので、その水準だとすると1億5000万円のお金が必要になります。しかし、現在のように76円台にもなるような超円高になると、7600万円で済みます。

これはかなりのお値打ちですね。日本人は、世界最強通貨となった円を使って、どんどんお値打ちの資産を買えば良いのです。その資産が長期間にわたって、日本人投資家に大きな利益をもたらします。

しかし、そんなお金を用意できる人は限られている…。

そんな意見もおありでしょう。

しかし、それでもなお日本円での投資をおすすめには2つの理由があります。

ひとつは、日本で長らく続いているゼロ金利政策。

預金しても利息がつかないと嘆いている方は多いと思いますが、これは一方のお金を借りるという時にも超低金利なのです。事実、多くの投資家が日本国内で安い資金を調達し、それを外国に投資しています。

これは日本人だけのことではなく、欧米のファンドが日本国内で金利の安い円を調達、その円を使って日本国外に投資するという手法は以前から行われています(これを円キャリートレードと言います)。当の日本人がこのことにあまり気づいていない(知らされていない)一方で、欧米のファンドは強い日本円を利用して莫大な利益を上げているのです。

もうひとつの理由は、ちょっと難しい話になりますが日本銀行の政策です。

日本銀行というのは、日本の経済にとって司令塔のような存在で、日本円についてを監督する立場にもあります。日本円のお札や硬貨を発行できるのも、日本銀行だけです。

さて、日本銀行は時に為替変動があまりにも急激であったり、意図しない方向に進んでいる場合は為替介入というものを行います。

今回の超円高においても、何度か円売りドル買いの介入を行っています。

マーケットが一方向に進んでいる時に、日本銀行のように中央銀行が為替市場に介入するというのは大きなインパクトを与えるので、マーケットの行き過ぎが是正されるという効果が期待できます。

日本銀行が動くということは、「日本の通貨当局は、これ以上の円高を容認しない」と言うメッセージになるからです。

さて、ここでちょっと難しい言葉です。

「非不胎化介入」という言葉をご存知でしょうか。

これを簡単に言ってしまうと、日本銀行が為替介入をする時に、自分でお札を刷って資金を作り、それを市場に投入するというものです。ここ最近の為替介入は、この非不胎化介入です。

本来であれば、為替介入で購入した外貨を、いつか円安になった時に今度は逆の市場介入を目的として売ります。こうすることで、マーケットに流れている日本円の流通量は一定に保たれます。

しかし、非不胎化介入だとマーケットに投入した資金はそのまま放置されます。つまり、マーケットで流通する日本円の量が増えます。日本円を世界中が競って買い漁っている状況で、供給量を増やすと希少価値が薄れ、円安に向かうというわけです。

これをちょっと逆の視点から見ると、現在の日本というのは世界最強通貨となった日本円をどんどん発行して資金量を増やしているのです。ならば、その資金を使ってどんどん資産形成をしていけば良いのです。

国が豊かになるというのは、これまでのように輸出を伸ばしてお金を稼ぐという方法だけではありません。金融システムを利用し、超円高という逆境を利用するという方法もあるのです。

800兆円以上の借金を抱えている日本の財政が健全な状態であるはずはありません。やがて世界からそのことが問題視され、円高が是正される時が来るでしょう。

この超円高で日本人が世界中に形成した資産が、円安になると莫大な利益となって戻ってくるのです。

現在は、超円高という局面をただ悲観してばかりのマスコミ報道が目立つので、もっと前向きにメリットにも目を向けて、強い日本経済を作るために役立てて欲しいと思っています。

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