こんにちは、石橋です。
梅雨がなかなか明けない中、真夏を思わせるような日も多くなってきました。皆さん熱中症にくれぐれもご注意ください。
今回お話をするのは、飛行機の燃料として利用が拡大しているSAFについてです。飛行機はあれだけの図体を空に飛ばすだけに大量の燃料を消費して、CO2排出も相当なものになります。それゆえに飛行機は環境デストロイヤーとのレッテルが貼られて久しく、実際の環境負荷よりもことさら悪いイメージが強調されているようにも感じます。しかし、今や世界は飛行機がなければ経済や社会を維持することはできません。きわめて重要なインフラだけに、環境といかに折り合っていくかが長年の課題でした。
そんな航空業界に、とんでもない燃料が登場しました。それが、SAFです。SAFと書いて「サフ」と読みます。「Sustainable Aviation Fuel」の頭文字を並べて作られた造語で、直訳すると「持続可能な航空燃料」となります。ちなみにSDGsの「S」もSustainableの頭文字なので、同じです。つまり、このSAFはSDGsと同じ理念をもった燃料であるということです。
それでは、このSAFについてもう少し詳しく解説しましょう。
このSAFは、植物などのバイオマス原料や、飲食店などから出てくる廃油、廃棄物などから作られています。これまで使用されてきた(今も使用されていますが)ジェット燃料は石油から作られるので、化石燃料です。それに対してSAFは化石燃料ではなく、植物やゴミから作られる再生可能燃料です。植物由来の原料は大気中のCO2を光合成で吸収しながら育ち、それが燃料になります。つまり、SAFを利用すればカーボンニュートラルに近づくことができるわけです。しかも廃油などを有効利用できるのですから、ゴミの減量にも貢献します。
こうしたSAFの仕組みを知ると、理想的な燃料であるように思えてきませんか?事実、世界中の航空会社はSAFの導入を積極的に進めており、それは日本の航空会社も例外ではありません。
SAFはCO2の排出量が実質80%ほど減るため、これまで飛行機が環境デストロイヤーだと言われてきた常識が覆ります。これからも飛行機は世界中の人たちの大切な交通手段であることは変わらないので、それが再生可能エネルギーで飛ぶというのは、素晴らしい未来だと思います。
そんな理想的な燃料であるSAFですが、まだまだ課題もあります。最大の課題は、製造コストです。従来のジェット燃料と比較すると5倍、もしくは10倍ほどの製造コストがかかるので、航空会社にとっては「高い燃料」です。もちろん燃料費が高くなると航空運賃に転嫁されるので、近年拡大しているLCCのような手軽な交通手段が手軽ではなくなる恐れがあります。
もっとも、昨今の原油高騰を考えるとジェット燃料を使ってもSAFに近いコストになってしまう可能性があるため、皮肉にも原油高騰がSAFの普及を加速させるという背景もあるようです。いずれにしても製造コストはスケールメリットで解決するべきことなので、今後さらに普及が進めばSAFの調達コストも下がっていくことでしょう。
このSAFは日本の技術ではないので、今はまだ海外からの輸入に頼っているのが現状です。しかし環境先進国である日本では、このSAFを国産化する動きがあります。今後ますます需要が拡大していくことは目に見えているので、国内のベンチャー企業が続々とSAFの開発や製造に参入しているのです。
その代表格といえるのが、ユーグレナという会社です。ユーグレナというのはミドリムシのことで、ユーグレナ社はミドリムシを原料にSAFの製造を始めています。すでにさまざまなところに納入実績があり、なんと航空自衛隊の戦闘機がユーグレナ社のSAFで飛んだこともあるそうです!
すでに政府専用機や民間の定期便にも利用され始めているので、将来は輸入に頼らない国産のSAFで日本の飛行機が飛ぶ時代がやってくるかもしれません。とても夢のある話なので、今回は敬意をもって紹介させていただきました。