近年、脱炭素経営をはじめとした環境問題への取り組みは、企業の事業活動として注目を浴びるようになってきました。しかし、具体的な対策などがわからず、悩んでいる担当者や事業者もいるのではないでしょうか。本記事は、企業に環境問題の取り組みが求められている背景と事例、取り組む方法について詳しくご紹介します。環境問題への取り組みについて調べている方などは、参考にしてみてください。
なぜ環境問題の取り組みが企業に重要な理由
気候変動の問題は深刻化しており、私たちの生活や社会に大きな影響を与え始めており、世界はSDGsや脱炭素など、さまざまな方針を掲げながら対策に乗り出しています。
しかし、そもそもなぜ企業の活動として環境問題への取り組みが重要視されているのでしょうか。その理由を解説します。
気候変動問題の解決には活動単位の大きい企業による協力が必要
たとえば、気候変動問題の大きな要因の一つとなっている温室効果ガスは、やはり活動単位の大きい企業の排出量が大きな割合を占めるため、企業の協力は欠かせません。環境省「2022年度の温室効果ガス排出・吸収量(詳細)」によれば日本の二酸化炭素排出量(電気・熱配分)は、家計部門(自家用車・一般廃棄物含む)が21.6%、企業・公共関連部門が78.4%です。
これだけ大きな割合を占めているので、政府や国際組織がいくら方針を打ち立てても、実際の排出主体である企業が動かなければ意味がないのです。
気候変動の深刻化は、海面上昇や地球の平均気温上昇による干ばつ・豪雨、台風の勢力拡大、猛暑日の増加、大雪など、さまざまな事象や災害を引き起こします。こうした諸問題は、もちろん企業の経済活動にも大きな影響があるでしょう。自分たちの市場を守るためにも、環境問題に向き合わなくてはなりません。
脱炭素経営は、二酸化炭素の排出量実質0を目指した経営方針を指し、国内のさまざまな企業が導入しています。環境負荷を抑えた事業活動は、森林の保護といった活動のほか、水質に影響を与えない生産活動や資源の再利用を重視した製品の開発など、多岐にわたります。
事業の成長や価値向上と関係している
今や社会の常識となった環境問題への取り組みは、事業の成長や自社の信頼性・価値向上にかかわります。
投資家は、ESG(環境・社会・ガバナンス)の視点から企業を評価し始めており、環境問題への取り組みに関しても注目しています。環境やガバナンスなどに力を入れている企業を信頼したり、サービスや製品が環境に配慮されたものかどうかを考慮して選んだりする消費者も増えてきました。
環境活動の実績や活動状況などを審査に含めたESG融資やグリーンファイナンスなどが始まり、資金調達においても環境問題に取り組むことが選択肢を広げ、有利にはたらく環境になってきています。
環境問題の取り組みを企業が行うメリット
環境問題に取り組むことがスタンダードになってきたため、環境対策は経済合理性を伴うようになってきました。ここからは企業が環境問題に取り組むメリットをあらためておさらいしていきます。
投資家や企業・消費者からの評価向上を期待できる
環境問題へ取り組んでいる企業は、投資家や取引先、消費者から評価される軸が増えるため、企業価値の向上やイメージアップにつながります。自社のブランディングやイメージアップの方法について悩んでいる企業は、こうした切り口から挑戦してみるのも良いでしょう。
事業の創出につながる
企業が環境問題へ取り組む過程で、これまでとは異なる業界や企業との接点も増える可能性があります。たとえば、制作工程の上流にいる企業が脱炭素対策を進めるとき、サプライチェーンを見直し、下流においても脱炭素できるように取引先を変えたりすることもあります。環境問題に取り組んでいれば、新たな取引先として選択肢の一つに挙がるチャンスもあるでしょう。
また自社での環境問題への取り組みが、新たな事業として成立することもあります。たとえば、環境に優しいパッケージに変更するために、新しいパッケージを作ったとすれば、こうした技術は新たなサービスとして顧客に提供することもできるでしょう。このように、新たなビジネスチャンスにもつながる可能性があるのです。
取り組みを通じてコスト削減を図れる
環境問題への取り組みを継続した場合、固定費をはじめとしたコストの削減にもつながるケースがあります。
たとえば、電力会社から供給されている電力は火力発電由来で、使用すればするほど間接的な二酸化炭素排出量増加につながります。社内でこまめな節電を意識した活動を行えば、二酸化炭素の排出削減を図れるだけでなく、電気料金の削減も実現できるでしょう。
また紙の使用量削減は、資源の消費や森林の伐採といった問題を解決する方法の一つです。紙の資料量を減らすためにペーパーレス化とデジタル技術の導入を進めた結果、紙の購入費用を大幅に削減できます。
幅広い人材を確保できる可能性がある
脱炭素経営や環境負荷に配慮された事業活動の継続は、幅広い人材の確保につながる可能性があり、人材獲得という点でもメリットのある取り組みです。
さまざまな人が環境問題を意識している社会となった結果、こうした視点を企仕事選びの判断材料にする就職希望者もでてきました。環境問題への取り組みは、まだまだ企業の自主性に任されている部分もあり、環境問題に取り組んでいる企業は、体力や余裕があるイメージもつきやすいでしょう。
環境問題への取り組み例
環境問題へ取り組むメリットを把握した企業の中には、具体的にどのような活動を始めればいいのかわからない企業も多いかと思います。ここからは、企業ができる環境問題への取り組み例をいくつか紹介します。
プラスチック素材を変更する
環境負荷の低減を目指す方法として代表的なのは、プラスチック素材の使用量を減らすことです。
レジ袋有料化を皮切りに、多くの企業が使い捨てプラスチックを変更する動きを見せました。プラスチックは、高い耐久性を持ち、コストも低いですが、プラスチックごみの不法投棄が大きな問題で、自然環境や生物へ悪影響を与えています。
紙に変更するのが最も簡単ですが、紙の使用量が増えることも森林伐採や二酸化炭素排出量増加に間接的に関与するため、ケースバイケースでリユース可能なものに変更することも考慮しましょう。
水の使用量を削減する
人間が容易に利用できる淡水は限られています。気候変動問題の深刻化や途上国の急激な成長、人口増加などで、世界的に水不足のリスクが懸念されています。
製造業のように水を大量に使用し、水質に影響を与える可能性がある使い方をしなければならない事業者では、使用量を見直す動きもあります。たとえば、1度使用した水を浄化して再利用できるようにしたり、センサーなどの機器類で水の使用量を適切にコントロールしたりしています。
社用車をEVに切り替える
社用車をEVへ切り替える取り組みは、環境負荷の低減につながる対策です。交通会社や運輸・物流関係の会社も、トラックやバス、タクシーをEVへ切り替えることで、既存の事業を継続しながら脱炭素化を図ることが可能です。
EV車は充電環境に依存するため、地域や事業形態によっては完全に移行することは難しいですが、ハイブリッド車などを活用して、少しずつ脱炭素化を進めることはできます。EV車導入の補助金もあるので、今なら導入もしやすいでしょう。
再生可能エネルギーの導入と活用
再生可能エネルギーの導入や活用も、既存の本業に大きな影響を与えずにできる取り組みの一つです。
再生可能エネルギーとは、化石燃料と異なり資源に頼らない、枯渇しないエネルギーのことです。二酸化炭素の排出量が少なかったり、なかったりするので、化石燃料を用いた発電よりも環境負荷の少ないエネルギーといえます。
たとえば、太陽光発電は、太陽からの光を太陽光パネルで吸収し、電気へ変換することで、自家消費(自社で消費)したり余剰電力を売電したりできます。発電する際に二酸化炭素を排出しないため、火力発電等による電力の購入量を減らし、間接的な二酸化炭素排出量を減らすことができます。
環境問題に取り組んでいる企業の事例5つ
ここからは、環境問題に取り組んでいる企業の事例を5つ紹介します。
株式会社ユニクロ
株式会社ユニクロでは環境負荷の低減を図るため、省エネや素材の再利用、廃棄物の削減といったさまざまな対策を行っています。
たとえば、ティーカップ1杯の水でジーンズが仕上げられる技術を開発し、水の使用量を最大99%削減しています。主要な素材工場に対しては環境影響評価を行い、水やエネルギー使用量の適切な設定、削減が図られています。
他には、LEDへの切り替え、照明・空調の省エネ化、海外支店での太陽光発電の導入など、エネルギーの使用量削減も行われています。
またプラスチック使用量削減のほか、プラスチックを原因とする海洋汚染問題の解決に向けたプロジェクトにも参加し、環境問題への関心の高さがうかがえます。
サントリーホールディングス株式会社
サントリーホールディングス株式会社は地球環境を次世代に引き継ぐため、さまざまな活動に取り組んでいます。
サントリーのペットボトルは薄型・軽量設計で、なおかつ植物由来の素材が用いられています。このような対策は、ペットボトルに含まれるプラスチックの使用量削減につながっており、地球環境にやさしい取り組みです。
また輸送時に排出される二酸化炭素の削減を目指し、モーダルシフト(鉄道や海上船舶輸送の活用)への転換、統合配車システムによる効率的な輸送、エコドライブの推進など、さまざまな対策が実施されています。
キッコーマン株式会社
キッコーマン株式会社は、1997年5月に日本の食品業界で初めてISO14001の認証を受け、環境マネジメント体制の強化および二酸化炭素排出削減を進めています。
新入社員研修の際、環境問題の詳細、キッコーマンで行われている環境対策の内容、成果などを伝えるようにしており、社内の環境対策の意識を向上させるよう努めています。
環境対策に関しては、水資源の保全プロジェクトや植樹活動といった活動のほか、再生可能エネルギーの導入も進んでいるのが特徴です。再生可能エネルギーの取り組みでは、太陽光発電の設置および自家消費だけでなく、再生可能エネルギー由来の電力を購入することで、二酸化炭素排出量を大幅に削減しています。
また、円型製麹装置(えんけいせいきくそうち)の蒸気量削減や冷凍機・小型ボイラーの更新などの取り組みによって、年間数100tレベルの二酸化炭素が削減されています。
株式会社セブン&アイ・ホールディングス
株式会社セブン&アイ・ホールディングスは、二酸化炭素排出量の削減に加えて、プラスチックごみの対策、食品ロスやリサイクル技術、持続可能な調達など幅広く取り組みを行っています。
商品開発の際は、包装パックや容器などの着色料・印刷インクを削減したり、アイスカップにリサイクルPETを用いたりしており、パッケージの環境配慮に力が入っています。
その他、気候変動対策としては、店舗の省エネ化や創エネ設備の導入などが挙げられます。大規模太陽光発電による電力使用量削減のほか、EMS(エネルギーマネジメントシステム)による設備の制御・冷蔵や空調設備の負荷低減を図れる給気システムなどが、各店舗に導入されている状況です。
森永製菓株式会社
森永製菓株式会社は、2050年までの温室効果ガス排出量実質0を長期目標として、再生可能エネルギーの活用やエネルギーの見える化など、さまざまな対策や検討を進めています。
工場内では、二酸化炭素排出量の見える化や高効率な生産体制の確立し、オフサイトPPAによる太陽光発電や省エネ設備の導入といった複数の対策が講じられています。(オフサイトPPA:第三者所有の遠隔地にある太陽光発電所から購入した電気を使用する方法)
またフロンを使用している設備に関しては、代替フロン設備への切り替え・フロンガス漏洩防止策といった取り組みで環境負荷を抑えています。
企業が環境問題へ取り組むときは太陽光発電の導入がおすすめ
環境問題が多岐にわたる分、その対策もさまざまです。そのため、どのような対策から始めればいいのか悩んでいる企業も多いでしょう。そこでおすすめの方法が、太陽光発電の導入です。最後は、環境問題へ取り組む際に太陽光発電の導入がおすすめの理由を紹介します。
既存の事業を大幅に変えることなく取り組める
既存の事業を大幅に見直すことなく取り組めるのが、太陽光発電導入の大きなメリットの一つです。
プラスチック素材を別の素材へ切り替えたり、環境負荷を抑えた製品の開発を行ったりするには、開発コストや技術的なハードルをクリアする必要があります。また、すぐに実績を残すことも難しいでしょう。
一方、太陽光発電の場合は3~6ヶ月程度で稼働を開始できるほか、設計から施工、保守運用まで施工業者に任せられるので導入は比較的容易です。設置スペースや予算さえあれば、短期間で二酸化炭素排出量を削減できます。
自家消費なら電気代を直接削減できる
太陽光発電を運用する場合は、二酸化炭素の排出削減に加えて電気代も削減できます。太陽光発電の運用は、自家消費型と売電型に分かれますが、自家消費型にすれば、直接電力使用量を減らせるでしょう。
自家消費型は、太陽光発電で発電した電気を、自社の工場や建物で消費していく運用方法を指しています。売電型は、電力会社に発電した電気を買い取ってもらうことを目的とした運用方法です。
現在では売電で収益を得るよりは、自家消費で電気代を削減した方がお得意な傾向にあります。
シンプルな運用でCO2削減実績を獲得できる
太陽光発電事業は、素材開発やシステム開発よりもシンプルな運用で二酸化炭素削減実績を獲得できるのが特長です。
設備導入後の発電・自家消費に関する操作は不要で、複雑な管理などもありません。また、発電量や設備状況の監視、修理交換に関してはO&Mサービスへ委託でき、機器・部材の調達や施工負担を負わずに済みます。
リソース不足などでシンプルな環境対策を求めている企業は、太陽光発電事業を検討してみるのがおすすめです。
環境問題への取り組みは企業の成長に重要な要素!
気候変動の解決には、国や自治体だけでなく企業の協力も必要不可欠です。また、環境問題への取り組みは、投資家や消費者からの信頼性・評価を高める上でも重要です。
数ある取り組みの中でも、太陽光発電事業は、比較的導入しやすいといえます。環境問題への取り組み方で悩んでいる企業は、今回の記事を参考にしながら太陽光発電の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
創業から30年、とくとくファーム0では、非FIT型太陽光発電の導入支援や物件のご提案による、脱炭素経営のサポートを行っております。
非FIT型は、FIT制度の認定を受けていない(買電を主な目的としていない)太陽光発電のことです。発電した電気を自社で消費できるのはもちろん、需要家向けに電力供給を検討できます。柔軟に運用しやすいのが非FIT型のメリットで、環境対策で悩む企業にとっても注目の設備です。
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