太陽光発電の中でも産業用太陽光発電は、初期費用数百万円や数千万円程度かかります。出力によっては億単位の資金を用意する必要があります。 そこで今回は、産業用太陽光発電でローンを組む方法や注意点について詳しくご紹介します。産業用太陽光発電の資金調達で悩んでいる方は、参考にしてみてください。
産業用太陽光発電の初期費用とは?
産業用太陽光発電の初期費用は、出力や土地の取得状況などで変わります。
経済産業省の「調達価格等に関する意見」という資料では、初期費用の目安を確認することが可能です。「令和3年度以降の調達価格等に関する意見」は、1kWにつき25.3万円の設置費用という情報を掲載しています。
出力10kWの場合は約253万円、出力50kWで約1,265万円の初期費用と考えられます。なお、25.3万円という費用には、土地取得代金が含まれていません。
産業用太陽光発電を始める際に土地を別途取得する場合は、さらに費用がかかります。このように産業用太陽光発電は、数百万円単位の費用がかかる設備です。初期費用を一括で支払うことができない場合は、太陽光発電に対応したローンを含めて検討してみます。
各金融機関の金利や特徴
産業用太陽光発電の初期費用をローンで対応する場合は、対応金融機関の種類と特徴を確認するのが大切です。ここからは、太陽光発電のローンに対応している金融機関を紹介します。
銀行
メガバンクや地方銀行は、さまざまなローンに対応しています。地方銀行は、原則個別交渉なので、既に不動産投資に関するローンを組んでいたとしても別途太陽光発電のローンに関する相談に対応してもらえます。
ただし、産業用太陽光発電の設置予定地域が、地方銀行の担当エリア外ですと対応してもらえない可能性もあります。対応金融機関を探す際は、太陽光発電の施工業者や販売店に周辺地域でローン実績のある銀行を紹介してもらうと、二度手間を避けることができます。
メガバンクは、一般的に法人の相談を受け付けているため、個人のローンについて対応もらえない傾向です。
銀行へ相談する主なメリットは、低い金利という点です。金利は、変動もしくは固定金利で1%~5%台と低めに設定されています。返済期間など各種要件は、各銀行によって異なるものの15年や20年以内といったケースもあります。
たとえば千葉銀行の太陽光発電事業支援融資制度は、産業用太陽光発電専用の融資です。融資額は、1,000万円以上から相談できます。融資期間、は固定買取価格制度と同じく20年間です。金利に関しては、独自の変動金利を採用しています。
信用金庫
信用金庫は、銀行と異なり会員制の金融機関です。会員制度では信用金庫の営業エリアで事業を展開しているなど、いくつかの条件が定められています。
信用金庫は、個人からのローンに関する相談を受け付けています。また、太陽光発電専用ローンを設けている信用金庫もあります。
金利は、変動金利で2%~定められているケースもあります。返済期間に関しては、15年以内と銀行と大きく変わりません。
たとえば結城信用金庫の太陽光発電事業融資では、100万円以上3,000万円未満の範囲で融資を受けられます。金利は同信用金庫独自の変動金利で、返済期間15年以内と定められています。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は公的な機関で、政府出資の融資を受けられます。
太陽光発電のローンに関しては、日本政策金融公庫の環境・エネルギー対策資金という項目で対応しています。たとえば、国民生活事業(個人向け)の非化石エネルギー関連という融資では、出力10kW以上の自家消費型太陽光発電も融資の対象です。
融資期間は20年間で、他のローンと同様です。金利に関しては、状況に応じて金利1%未満や2%台といった範囲で設定されます。担保や保証人は、個別に決める仕組みです。
融資限度額は7,200万円なので、出力100kWや200kWなど中規模な産業用太陽光発電を運用したい場合に活用しやすい制度です。また、個人や個人事業主、中小企業も利用できるのが強みです。なお、マル経(小規模事業者経営改善資金)の場合は、融資限度額2,000万円と抑えられているものの、担保や保証人不要で利用できます。
信販会社
信販会社の中には、産業用太陽光発電に関するローン(ソーラーローン)に対応している会社があります。信販会社とは、販売信用取引を手掛けている会社のことです。たとえば、ジャックスやセディナ、アプラスなどは信販会社です。
金利に関しては、他の金融機関よりも高めに設定されています。ただし、融資を受けるハードルが低めな傾向で銀行や信用金庫の審査に落ちた方には、利用メリットのあるサービスです。
一般的には、太陽光発電の販売店と提携している信販会社から融資を受ける流れです。そのため、ローンの手続きを販売店に代行してもらえます。
蓄電池もローンで対応可能
産業用太陽光発電ローンの中には、蓄電池も融資の対象としているローンがあります。また、産業用太陽光発電と蓄電池のローンをセットで組むことが可能です。
蓄電池の初期費用は200万円以上かかることあるため、一括払いの難しい設備です。蓄電池ローンの概要は、産業用太陽光発電と大きく変わりません。また、セットでローンを組んでいる場合は、共通の融資期間や金利です。
なお、自治体によっては、太陽光発電や蓄電池に関する融資制度が含めている場合もあるので、調べてみるのもおすすめです。
たとえば神奈川県には、中小企業向けの「ソーラー発電等促進融資」という制度があります。ソーラー発電等促進融資は、融資限度額3,000万円、固定金利1.6%といった内容です。また、融資期間は、運転資金7年以内、設備資金20年以内です。
産業太陽光発電のローンを組む前に注意すべき点
産業用太陽光発電のローンを組むと決めた場合は、いくつかの注意点について確認しておくのも大切です。
シミュレーションを行っておく
太陽光発電のローンを検討している場合は、あらかじめ返済シミュレーションを済ませておくのが大切です。返済シミュレーションは毎月の返済額や完済時期、返済総額などを把握した上で判断できます。しかし、返済額などのシミュレーションは、手計算で難しい内容です。
住宅金融支援機構などいくつかの金融関連サイトは、無料で自動計算ツールを利用することが可能です。ツールでは、必要な項目を入力すると返済額や返済期間、返済回数などを自動計算してもらえます。
金融機関やローンの種類は慎重に選ぶ
産業用太陽光発電に対応しているローンは安易に決めず、金利や融資限度額、融資対象などを1つ1つ確認した上で判断します。
金利は低金利かどうかだけでなく、変動金利・固定金利といった点も確認するのが大切です。信販会社などは、変動金利で設定しています。変動金利は、低金利であったとしても金利上昇リスクがあります。
一方銀行や公的機関の融資には、固定金利もあります。信販会社と比較して審査難易度の高いケースでも、固定金利ローンを検討するメリットはあります。
融資限度額は、産業用太陽光発電の初期費用をカバーできるかで判断するのが基本です。
与信も審査に影響
産業用太陽光発電において与信は、他のローンと同じく審査に影響のある要素です。与信は、ローン申込者の年収や資金用途(使い道)、返済能力、担保、過去の信用情報などの総称です。
たとえば、各金融機関の定める基準を満たしていない状態では、ローンを組むことはできません。また、、太陽光発電のローンは、申込者だけでなく太陽光発電施工業者の与信も審査に含められる場合もあります。
与信は、個人で対応できる部分ではありません。万が一審査に落ちてしまった場合は、速やかに他の金融機関へ相談できるよう準備しておきます。
ローンを組まない場合より収益が減る可能性
産業太陽光発電のローンは、売電収入から返済していきます。
毎月の売電収入は、ローンを組まずに運用する場合と比較して減少してしまいます。売電収益を可能な限り伸ばしたい方には、デメリットといえるポイントです。
ただし、太陽光発電のローンは、一般的なローンと比較して低金利の傾向です。また、融資期間が15年や20年以内と長期間のため、返済額の割合を抑えながら毎月返済できます。
災害による設備故障時の返済方法を考えておく
地震や台風、線状降水帯による水害などで故障してしまった場合は、一時的に発電および売電できません。さらに土砂災害などで修理不可の場合、売電収入から返済することはできません。
このような災害や何らかの事故、経年劣化などで発電・売電できない時は、本業もしくは別の収入から返済する必要があります。
発電停止や発電量低下リスクに備えて、あらかじめ予備資金を用意もしくは自然災害補償付きの保険加入を検討してみてください。
産業用太陽光発電でローンを組むメリット
産業太陽光発電においてローンを組む主なメリットは、以下の通りです。
- 一般的なローンよりも低金利な傾向(金利1%前後)
- フルローン(頭金なし)可能な場合がある
- 設備稼働時は売電収入で返済できる
- 融資期間が長期間(15年間、20年間など)
- 公的機関の融資制度など、一部ローンは無担保
前述で触れたとおり注意点やリスクはあるため、事業計画や対策を立てた上でローンの判断を行うのが重要です。
産業用太陽光発電はローンを組みながら運用できる
産業用太陽光発電の初期費用は、銀行や信用金庫、日本政策金融公庫、信販会社などでローンを組むことが可能です。ローンの返済方法は、売電収入から進めていきます。
太陽光発電専用のローンは、金利1%未満や融資限度額1,000万円以上など一般的なローンと異なる内容です。また、担保・保証人不要な融資制度もあります。
産業用太陽光発電を始めたい個人投資家や事業として展開したい法人などは、今回の記事を参考にソーラーローン、太陽光発電にも活用可能なローンを調べてみるのもおすすめです。