太陽光パネル税は制定される?経緯と概要を解説

太陽光パネル税は制定される?経緯と概要を解説

美作市では、太陽光パネル税の条例制定に向けて動いています。

太陽光発電を運用するとさまざまな税金がかかります。売電を行った場合は、売電収入に対して所得税が発生します。また、事業用太陽光発電を設置運用した場合は、固定資産税もかかります。そのため、太陽光パネル税は、発電事業者にとって負担のかかる制度です。

そこで今回は、太陽光パネル税の内容と問題点について詳しくご紹介します。太陽光パネル税に疑問を抱いている方や太陽光発電に関する税金を整理・確認している方は、参考にしてみてください。

太陽光パネル税とは一体何?

太陽光パネル税とは一体何?

太陽光パネル税は美作市(みまさかし)で提案された税金ですが、義務化されているわけではありません。

まずは、太陽光パネル税を提示している自治体や経緯について確認していきます。

美作市で提案された太陽光発電関連の税金

太陽光パネル税とは、岡山県美作市の市議会で提案された条例案のことです。導入目的は、太陽光発電施設周辺の防災対策費用を確保するためとのことです。

出力10kW以上の野立て太陽光発電など指定の設備が、太陽光パネル税の対象とされています。非課税対象の設備は、次の項目で説明します。

太陽光パネル1㎡あたりの税負担は、50円の予定とされています。太陽光パネルの面積が広いほど、課税額の増加につながる仕組みです。課税期間は5年間で、必要に応じて期間などが調整されます。

太陽光パネル税非課税の条件

太陽光パネル税の条例案には、非課税の条件も設けられています。

  • 建築物の屋根などに設置された太陽光発電設備(野立て以外)
  • 出力10kW未満の太陽光発電
  • 出力50kW未満の太陽光発電でかつ砂防指定地や地すべり防止区域、急傾斜地崩壊危険区域、土砂災害警戒区域および土砂災害特別警戒区域に含まれない土地に設置されている

また、太陽光発電事業者が住民と円滑な関係を維持するための寄附金を出している場合は、寄附金相当額の税額控除という項目も定められています。(税額の20%を上限)

災害リスクの多い土地で10kW以上の事業用太陽光発電を運営している事業者が、太陽光パネル税の対象とされる仕組みです。

総務大臣の判断で太陽光パネル税の有無が決まる

太陽光パネル税の条例案は、2021年12月21日に美作市議会で可決されました。しかし、条例案の可決のみで法定外目的税は、義務化されません。法定外目的税とは、地方税法に定められていない地方税のことで、太陽光パネル税も含まれます。

法定外目的税の創設には、総務省の総務大臣による同意が必要です。

再生可能エネルギー関連の法定外目的税は国のエネルギー政策と関わるため、総務省単体ではなく経済産業省との確認やすり合わせなどが必要とされています。

そのため、国の判断に時間がかかる可能性もあり、今後の展開に要注目です。

太陽光パネル税のメリット

太陽光パネル税のメリット

太陽光パネル税は、太陽光発電設備の周辺に住んでいる住民にとってメリットもあります。

太陽光パネル税の対象設備は、土砂災害や地すべりなどの災害リスクの多い土地に設置されている太陽光発電とされています。さらに税負担が増えれば、災害リスクの多い土地への設備設置を抑えられる可能性があります。

このような点から太陽光パネル税は、土砂災害などのリスクのある土地で生活している方にとってメリットのある政策です。

太陽光パネル税の問題点

太陽光パネル税の問題点

太陽光パネル税について注目している方の中には、どのような問題点があるのか気になる方もいるのではないでしょうか?

そこで続いては、美作市のかかげる太陽光パネル税にどのような問題が生じるのか、1つずつ確認していきます。

特定の発電事業者に大きな負担

太陽光パネル税は、出力10kW以上の事業用太陽光発電を運用している事業者や個人に負担のかかる税金です。

太陽光発電事業者は、売電収入に対する所得税や設備機器購入時の消費税、固定資産税などの税金を納めています。中でも美作市の太陽光発電事業者は、太陽光パネル税も負担しなければいけない可能性があります。

太陽光パネル税の負担割合は売電収入の2%前後に相当するため、軽い負担とはいえない内容です。さらに太陽光パネル税の使用用途は、防災対策や自然環境対策など、太陽光発電と関連性の少ない分野にまで及んでおり、特定の事業者へ負担を強いる点において疑問点の残る政策です。

これから美作市で太陽光発電事業を展開する方や既に展開している方は、収支バランスへの影響を考慮する必要があります。

二重課税の可能性

太陽光パネル税で特に問題視されているのが、二重課税の可能性という部分です。

出力に関わらず事業用太陽光発電や野立て太陽光発電などは、設備や土地に固定資産税がかかります。

太陽光パネル税は固定資産税と同じく設備を対象とした税金のため、二重課税の可能性も考えられています。なお、美作市の説明では、固定資産税は発電設備、太陽光パネル税は売電行為に対する税金という解釈のようです。

しかし、太陽光パネル税は、太陽光パネルという設備を対象とした税金です。美作市の説明では、二重課税かどうかという点において疑問点が残ります。

再生可能エネルギー普及にブレーキがかかる

そもそも美作市の太陽光パネル税は、国のエネルギー政策および再生可能エネルギー推進政策と矛盾しています。

国では、現在太陽光発電を含めた再生可能エネルギーの普及促進につながる税制優遇やその他政策を打ち出しています。

総務大臣が太陽光パネル税に同意した場合は、今後他の自治体で類似の法定外目的税を提案する可能性もあります。また、税負担の増加や税の公平性に対する疑問などから、再生可能エネルギーの普及にブレーキがかかる可能性があります。

太陽光パネル税は、税の公平性や税負担増加、エネルギー政策との矛盾、二重課税の可能性などの問題点を抱えている条例案です。

太陽光パネル税に対する世間の反応

太陽光パネル税に対する世間の反応

SNSやニュースサイトのコメントなどでは、太陽光パネル税の条例案に対して賛否両論といった傾向です。

以下に主なコメントの傾向を紹介していきます。

  • 環境破壊につながる太陽光発電の規制につながるから嬉しい
  • 問題のある太陽光発電への課税ならいいのでは
  • 意味のない政策では?
  • 固定資産税との二重課税につながる
  • 環境政策と矛盾している

主に太陽光発電に苦手意識を持っている方や太陽光発電の災害リスクに警戒感を示している方などは、太陽光パネル税に対して賛成の立場を示しています。太陽光発電パネル税の対象設備は、土砂災害の起きやすい土地に設置されている設備のためです。

一方、反対コメントは、太陽光パネル税の二重課税や条例案の正当性、税の公平性という点などに触れています。

太陽光発電を始める方は、周辺住民との円滑なコミュニケーションを交わし、地域への配慮も必要ということが分かります。また、急傾斜地など災害リスクの高い土地への設置を避けるのが、太陽光パネル税を避けたり周辺住民からの理解を得たりする上で重要です。

太陽光パネル税に対する太陽光発電協会の反応

太陽光パネル税に対する太陽光発電協会の反応

太陽光発電協会では、美作市の太陽光パネル税導入案に対して反対の姿勢を示しています。

太陽光発電協会は、国や各地域にメリットのある太陽光発電の普及を止めてしまう可能性、発電事業者に対する税負担の増加などといった点を考慮し、法定外目的税の導入に関する反対意見を表明しています。

現行の法律で定められている太陽光発電の主な税金

現行の法律で定められている太陽光発電の主な税金

太陽光パネル税を考える上で太陽光発電関連の税金を理解しておくことは、重要なポイントです。また、太陽光発電投資を始める方は、所得税や固定資産税などについて把握しておく必要があります。

最後に太陽光発電に関する税金を確認していきます。

売電に対する所得税

太陽光発電の売電収入を得た場合は、所得税を納める必要があります。

所得税は、所得の種類によって雑所得や事業所得など10種類に区分されます。

住宅用太陽光発電など事業目的以外の太陽光発電で売電収入を得た場合は、基本的に雑所得として区分されます。一方、個人や法人が産業用太陽光発電で売電する場合は、事業所得として区分されます。

また、アパートやマンションの屋根に太陽光発電を設置し、発電した電気を共用部分に使用した上で余剰電力を売電すると、不動産所得に区分される場合があります。

所得税の計算は、基本的に売電収入から経費を差し引いたものに所定の税率をかける仕組みです。ただし、所得の種類によって計算方法や控除額が変わる場合があるので、どの所得に区分されるのか税務署などで確認してみるのも大切です。

事業用太陽光発電に対する固定資産税

事業用太陽光発電を所有している場合は、固定資産税も発生します。

固定資産税の課税額は、所得税と異なる計算方法で求めるのが特徴です。

具体的には、課税評価額に1.4%をかけた金額を課税額として定める仕組みです。さらに太陽光発電の法定耐用年数は、17年と定められています。

課税評価額は、太陽光発電設備や土地に減価率をかけて求めます。法定耐用年数は、設備ごとに定められていて、減価償却可能な年数を指します。

設備取得から3年間は、固定資産税額を3分の2に減免してもらえる特例が設けられているので、税負担を抑えられます。

各種機器類の購入などで生じる消費税

太陽光パネルやパワーコンディショナ、配線などあらゆる設備や関連機器類の購入時には、消費税を負担します。

消費税は、個人や法人にかぎらずかけられる税金です。太陽光発電の設置運用において消費税は、設備機器購入時と設置工事費用の支払いの際に発生します。

なお、太陽光発電で発電した電気を売電する場合は、電力会社へ消費税を請求します。消費税を徴収したあとは、確定申告の際に納税する必要があります。一方、課税売上高1,000万円以下の事業者は、消費税の納税が免除されます。

ただし、消費税免税に関する制度は、インボイス制度によって大きく変わります。

消費税の控除に関するインボイス制度は2023年10月より始まるので、早めの確認と申請手続きを行うのも大切です。

太陽光パネル税は総務大臣の判断で確定される

太陽光パネル税は総務大臣の判断で確定される

美作市で提案された太陽光パネル税は、法定外目的税として2021年12月21日に可決されました。今後は、総務大臣の同意を得られるかどうかで、太陽光パネル税の創設が決まります。

太陽光パネル税は、土砂災害警戒区域に設置済みなど指定の条件に合致した太陽光発電事業者に対する税金で、太陽光パネル1㎡あたり50円課税される仕組みです。課税負担から災害リスクの多い土地に設備を設置しにくくなるという点では、住民にとってメリットのある政策です。

しかし、二重課税の可能性や国のエネルギー政策との矛盾、税の用途に対する課税対象者の矛盾など、さまざまな問題点を抱えています。

美作市で事業用太陽光発電を始めている方や今後太陽光発電事業へ参入する方は、太陽光パネル税についても要注目です。

弊社とくとくファームでは、中古太陽光発電所の売買仲介サービスをはじめ、無料の個人セミナーより太陽光発電に関するあらゆる疑問点へ対応いたします。太陽光発電事業を始めたい方はもちろん、太陽光発電について関心を持っている方もお気軽にご連絡ください。

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