再生可能エネルギーの導入は、今や企業の持続可能性や社会的責任を示す重要な指標となっています。しかし、多くの企業が直面する課題は、適切な設置場所の不足です。
そこで、太陽光発電の新たなスキーム「自己託送」が注目を浴びています。このスキームを活用することで、場所の制約をクリアし、環境への取り組みを強化することが可能です。
この記事では、自己託送の基本から、そのメリット・デメリット、実際の導入事例までを詳しく探ることで、持続可能なビジネスの構築の一助になればと思います。
自己託送とは?
「自己託送」とは、企業が遠隔地に設置した発電施設から生成される電力を、自らのビジネス活動に直接活用するための革新的な仕組みです。
この方法を採用することで、企業は自社敷地内の太陽光パネルの設置スペースが不足していても、他の地域に新設した太陽光発電施設からの電力を自在に利用することが可能となります。
このような柔軟性が、再生可能エネルギーの積極的な活用を目指す現代の企業にとって、非常に魅力的な選択肢として注目されています。
自己託送の仕組み
自己託送の過程では、まず企業は親会社や子会社、あるいはグループ会社など、自社との関連性が深い場所を選定します。
その選定された場所での発電活動が開始され、生成された電気は電力会社の送配電網を通じて、企業の主要施設やオフィスへと供給されます。この流れが「自己託送」の基本的な仕組みとなります。
この仕組みの大きな特徴は、電力を購入するのではなく、自らが生産した電力を利用する点にあります。これにより、電力供給の安定性やコスト削減などのメリットが期待できます。
自己託送の背景と歴史
太陽光発電の技術が進化する中、企業や家庭での発電量も増加してきました。しかし、発電した電力をその場で全て使用するのは難しく、余剰電力が生じるケースが増えてきました。この余剰電力を有効活用する方法として「自己託送」の考え方が生まれました。
自己託送の背景には、再生可能エネルギーの普及と電力自由化の動きがあります。再生可能エネルギーの普及を促進するため、政府は様々な施策を打ち出してきました。その一つが、自ら発電した電力を自らの施設で使用することを奨励する「自己託送」の制度です。
また、2016年に日本で電力自由化が進行したことも、自己託送の普及に影響を与えました。これにより、電力の供給元を選べるようになり、自社で発電した電力を自社の施設で使用することが一層容易になりました。
このような背景から、自己託送は多くの企業や自治体での導入が進められ、再生可能エネルギーの更なる普及を支える重要な役割を果たしています。
自己託送の種類
自己託送には、主に2つの形態が存在し、それぞれが異なる特徴と利点を持っています。企業の状況や目的に応じて、最適な方法を選択することが求められます。
自己託送
一般的な自己託送は、企業が親密な関係を持つ遠隔地に太陽光発電所を設置し、その場所から発電した電気を自社施設に供給する方法です。
具体的には、親会社や子会社、グループ会社などとの関係が深い遠隔地に発電施設を持つ企業が、この方法を選択することが一般的です。
この方法の大きな利点は、既存の関係性を活用して電力供給の安定性を確保できる点にあります。
オフサイト自己託送
オフサイト自己託送は、自社施設から離れた場所や、自社と直接の関係がない遠隔地に太陽光発電所を設置し、そこで生成された電力を自社施設に供給する方法を指します。
特に、関係のある遠隔地に設置可能なスペースが限定的な企業にとって、この方法は非常に有効です。しかし、この方法の導入はまだ新しく、日本国内での実例は少ないのが現状です。
自己託送の関連法規や制度
自己託送は、再生可能エネルギーの普及を促進するための重要な手段として注目されています。しかし、この仕組みを利用するには、いくつかの法規や制度を理解し、適切に対応する必要があります。
再生可能エネルギーの固定価格買取制度 (FIT)
2012年に導入されたこの制度は、再生可能エネルギーを利用した発電を奨励するためのものです。自己託送を行う場合、この制度の下での電力の売買価格や契約期間などの条件を理解することが重要です。
電気事業法
電気の供給や需要、送配電網の利用に関する基本的なルールを定めています。自己託送を行う際には、この法律の規定に従って適切な手続きを行う必要があります。
電力自由化
2016年に全面的に進行した電力自由化は、電力の供給元を自由に選べるようになったことから、自己託送の導入がしやすくなりました。しかし、適切な供給元の選定や契約内容の確認が必要です。
これらの法規や制度を遵守しながら、自己託送を適切に導入・運用することで、再生可能エネルギーの効果的な利用とビジネスの発展を同時に実現することができます。
自己託送の4つのメリット
再生可能エネルギーの利用が進む中、自己託送は企業にとって魅力的な選択肢として注目されています。その背景には、以下の4つの大きなメリットが存在します。
1. 設置スペースの制限がない
自己託送の一番の魅力は、太陽光パネルの設置スペースに制約がないことです。
従来、企業の敷地内に十分なスペースがない場合、太陽光発電の導入を躊躇していた企業も多いでしょう。しかし、自己託送を利用すれば、自社の敷地外、関連する遠隔地に太陽光発電所を設置することができます。
これにより、スペースの問題だけで再生可能エネルギーの導入を見送ることなく、環境への取り組みを進めることができます。
2. 電気料金の節約効果
自己託送を利用することで、電気料金の大幅な削減が期待できます。特に、自己託送では大規模な発電施設の設置が可能なため、より多くの電力を自前で生成し、外部からの電力購入を減少させることができます。
これにより、電気料金の節約だけでなく、エネルギーの自給自足率も向上させることが可能です。
3. 再生可能エネルギーの効果的活用
オンサイト型の太陽光発電には設置面積の制約がありますが、自己託送を採用することで、広範囲の太陽光発電所を設置することが可能です。
このことから、企業全体の再エネ比率を大幅に向上させることができ、環境への取り組みをさらに強化することができます。
4. 余った電力の賢い使い方
自己託送を利用すれば、余剰電力の効率的な活用が可能です。例えば、定休日に発電量が消費量を超える場合、その余剰電力を他の施設に転送して使用することができます。
これにより、電力の無駄を減少させるとともに、全体のエネルギー効率を向上させることができます。
自己託送の5つのデメリット
自己託送は再生可能エネルギーの取り組みとして注目されていますが、その一方でいくつかのデメリットも存在します。
企業が自己託送を導入する際には、以下の点を十分に理解し、適切な対策を講じることが求められます。
1. 需要量や発電量の計画値の提出義務がある
自己託送を円滑に進めるためには、「計画値同時同量制度」の要件を遵守することが求められます。
この制度は、電力供給の安定を目的としており、電力供給者は30分ごとの電力の需要と供給を予測し、その予測値を電力会社へ提出する必要があります。
太陽光発電の出力や企業の電力需要が変動することから、日常的な監視と管理が不可欠です。
2. ペナルティのリスク
「計画値同時同量制度」において、提出した計画値と実際の供給量が大きく異なる場合、「インバランス制度」によりペナルティが課されるリスクがあります。
電力供給の計画値と実績値の差が生じると、電力系統の安定性に影響を及ぼす可能性があるため、このような制度が設けられています。そのため、精密な予測と計画が必要となります。
3. 導入の難しさ
太陽光発電所の設置には多額の初期投資が必要です。さらに、自己託送の導入は、電力会社との協議が難航することが予想されます。電力会社の許可が必要となるため、オンサイト型と比較しても導入のハードルは高いと言えます。
4. 補助金の活用が難しい
太陽光発電の導入に際しては、補助金を活用してコストを軽減することが一般的です。しかし、自己託送の場合、補助金の活用が難しくなることが考えられます。これは、自己託送がまだ広く普及していないための一因とも言えるでしょう。
5. BCP(事業継続計画)対策としての利用が難しい
太陽光発電の魅力の一つは、停電時や災害時にも電力供給を続ける能力です。しかし、自己託送の場合、送電が停止するリスクがあるため、BCP対策としての利用は難しいと言えます。
BCP(事業継続計画)とは、災害や事故、大規模なシステム障害などの緊急事態が発生した際に、事業を継続的に行うための計画や手段を事前に策定することを指します。この計画は、企業の存続や社会的責任を果たすために非常に重要とされています。
自己託送を利用する際の注意点
自己託送を利用する際には、注点を押さえることが重要です。自己託送を導入することで発電した電力が自宅内で使用され、電気代の削減につながりますが、設備や施工についても慎重に選択する必要があります。
設置場所
自己託送の設置場所は、屋根や庭などを含めても慎重に選択する必要があります。施工前には、設置場所に日当たりが良好かどうか、配置や角度による発電効率の影響などを確認しましょう。
初期投資とメンテナンス
自己託送の設置には初期投資が必要です。設備によっては高額な初期投資となることがありますので、自家消費電力量の見積もりを行い、購入・設置費用とのバランスを考慮する必要があります。また、設置後のメンテナンスについても、定期的な点検や溶接の錆びなどに注意しましょう。
法規制
法規制も自己託送を利用する際には抑えておくべきポイントです。太陽光発電システムの設置には電気設備工事業法の取得、送電事業者との契約が必要です。また、蓄電池については容量に関して規制が設けられているため、事前に確認が必要です。
蓄電池
自己託送には蓄電池が欠かせませんが、蓄電池にも注意が必要です。使用する蓄電池の容量や性能、バッテリーの寿命などについてはエンドユーザー視点で明確に把握し、管理することが必要です。
以上のように、自己託送を利用する際には、設置場所やコスト、法規制などについて注意深く選択することが重要です。
自己託送は環境保護や費用の削減に寄与する可能性が非常に高いため、導入を検討する場合には、自分の家庭や企業の状況にあわせ、慎重な決断をしていきましょう。
まとめ:自己託送は設置スペースが制限されている企業にとって魅力的な制度
自己託送は、再生可能エネルギーの導入を進める企業にとって、新しい選択肢として存在します。
このスキームの利用により、電力供給の安定性や余剰電力の効果的な活用、さらにはコスト削減といったメリットが期待できます。しかし、その一方で、計画値の提出義務やペナルティリスク、さらには補助金の活用の難しさなど、様々なデメリットも考慮する必要があります。
この記事を通じて、自己託送の仕組みやその実際の導入事例、そして注意点を詳しく解説しました。
再エネルギーの導入を検討する際、自己託送の可能性を十分に理解し、最適な選択を行うことが重要です。
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