人工光合成とは?仕組みや問題点、太陽光発電との違いをわかりやすく紹介!

人工光合成とは?仕組みや問題点、太陽光発電との違いをわかりやすく紹介!

気候変動問題の解決へ向けて、日本や海外では、人工光合成という新技術の研究開発に取り組んでいます。これが実用化された場合、太陽光の届く場所ならどこでもエネルギーや有機化合物を取り出せるようになります。

そこで今回は、人工光合成の仕組みやメリット、課題についてわかりやすくご紹介します。最先端のクリーンエネルギー技術を把握した上で自社にできることを模索したい方や、脱炭素経営に関心を持っている方などは、参考にしてみてください。

目次

植物の光合成についてわかりやすく解説!

人工光合成のモデルでもある植物の光合成は、太陽光などに含まれる光エネルギーからでんぷんを作り出したり、酸素を放出したりしています。

光合成を行っているのは、植物の葉に含まれている葉緑体という細胞です。光を吸収した葉緑体は、二酸化炭素と水から酸素とでんぷんを合成します。

化学反応という点から見ると光合成は、「光分解による水から酸素や電子、水素イオンの生成」、「水と二酸化炭素から有機物の生成」という2つのプロセスによって成り立っています。

人工光合成は植物の光合成を参考にした新技術

人工光合成は、植物の光合成に関する化学反応やプロセスを元にした最新技術で、有機化学品の生成を目的としたものです。それでは、人工光合成の詳細について確認していきましょう。

太陽光で水などを生成

人工光合成は、植物の光合成によって生じる化学反応を元にした技術で、太陽光と水、二酸化炭素から有機化合物や酸素を生成します。生成を行うには、水素製造プラントやオレフィン合成プラントといった大規模な設備を複数用意する必要があります。

プロセスとしては、太陽光を光に当てて水素と酸素を分解し、水素と二酸化炭素から有機化合品を生成していく仕組みです。

詳細に説明すると、以下の流れで生成を行います。

  1. 光によって反応する物質(光触媒)へ光を当てる
  2. 水を分解し、水素と酸素を取り出す
  3. 取り出した水素と二酸化炭素を合成触媒へ通し、オレフィンを生成

水の分解を行う際は、分離膜という設備を利用して安全に水素と酸素を分離・取り出す仕組みです。

植物の光合成と異なりでんぷん以外の有機化合品を生成可能

人工光合成の大きな特徴は、植物の光合成と異なり、でんぷん以外の有機化合品を生成できるという点です。植物の光合成で生成できるのは、あくまででんぷんのみです。

一方、人工光合成の場合は、オレフィンというプラスチックの原料を生成することが可能です。一般的な方法よりプラスチック生産時の環境負荷を軽減できるため、脱炭素化を目指す上で欠かすことのできない技術といえます。

人工光合成と太陽光発電との違い

人工光合成と太陽光発電は、太陽光の活用方法に大きな違いがあります。太陽光発電は、太陽光の光エネルギーを太陽電池によって電気エネルギーへ変換し、自家消費したり売電したりするための設備です。

一方、人工光合成は、光エネルギーを水素エネルギーやプラスチックなどへ変換させる事が可能です。水素エネルギーや有機化合品といった、複数のエネルギーや物質に変換できるのが強みです。

人工光合成のメリット

ここからは、人工光合成の主なメリットについてわかりやすく解説していきます。

二酸化炭素排出量削減を後押し

人工光合成が普及すれば、二酸化炭素排出量の削減を後押ししてくれます。二酸化炭素は気候変動問題の主な原因であるため、早急に排出量を削減しなければいけません。しかし、二酸化炭素を大幅に削減しようとすると既存の設備や社会活動を止めなければいけないケースもあり、現実的に厳しい状況です。

人工光合成では二酸化炭素を吸収および化学反応に活用するため、水素エネルギーや酸素、オレフィンを取り出しながら二酸化炭素排出削減効果を得られます。

普及することで環境や食料不足問題の改善につながる可能性

人工光合成の普及は、さまざまな環境問題の改善につながる可能性があります。

世界の全人口は2023年時点で約80億4,500万人であり、毎年数億人単位で増え続けています。ただし、全人口の食料をまかなうことができない状況なので、深刻な食料不足も懸念されています。

さらに開発途上国では経済成長に伴い工場などが急増し、環境汚染も進んでいます。

そこで人工光合成が普及すれば、酸素と水素、オレフィン、食用のたんぱく質を生成し、食料不足の改善や有害物質を抑えた生産活動などを実現できる可能性があります。

化石燃料に頼らずエネルギーを調達できる未来も

人工光合成は、化石燃料に頼らない社会を実現するために役立ちます。

化石燃料は、火力発電だけでなく化学製品の生成や生産に用いられています。たとえば、既存のプラスチックは、石油を原料としています。生活に欠かせない化石燃料ですが、枯渇リスクもあるため、永久的には活用できないエネルギーなのです。

人工光合成を実用化できれば、太陽光と水、二酸化炭素で、オレフィンというプラスチックの原料をはじめとした有機化合物を作り出せます。

SDGsにつながる技術

企業にとって、人工光合成の研究開発や導入は、SDGsやESGおよび環境経営につながる事業です。

投資家は、環境や人権などに配慮した企業や改善に取り組む企業を評価し、投資候補としてみなします。また環境意識の高い消費者などは、商品やサービスの比較検討時に企業の環境経営についても注目することがあります。

このように、社会全体が環境・人権・ガバナンス・食料問題といったさまざまな課題に注目を向けている状態なので、企業も各問題に取り組むことが大切です。

人工光合成のデメリット・問題点

続いては、人工光合成のデメリットや問題点について1つずつ確認していきましょう。

研究段階ということもあり運用コストが高い

人工光合成は研究段階の最新技術であり、有機化合品やエネルギーの生成に莫大なコストがかかります。さまざまな産業やサービスで利用するには、量産化などによる設備費用の低価格化が実現しなければいけません。

しかし2023年時点では、実用化までに10年以上かかる見込みです。企業にとって人工光合成は、事業に導入することの難しい技術といえます。

光合成に必要な光触媒の耐久性を上げる必要がある

人工光合成に必要な光触媒には、劣化・腐食しやすい性質があります。水を酸素と水素へ分解するには、光触媒を水の中に設置する必要があります。また、日光を常時吸収しているため、光と水による劣化といった影響を受けやすい状況です。

今後は、光や水に強い光触媒の開発が求められます。

水と酸素の分解時に発生するガスの取り扱いに注意が必要

人工光合成を普及させるには、安全性を高めていくことも求められます。人工光合成で水を分解する際、水素と酸素の混合ガスが発生してしまいます。混合ガスは可燃性なので、火災や爆発といった危険性があります。

そのため研究機関や企業では、安全性の試験を繰り返したり、安全な分解方法および設備の構築に向けて改善を行ったりしている状況です。

実用レベルで活用するには広大な土地が必要

人工光合成をさまざまな場所で運用するには、土地開発を進めなければいけません。プラント設備には、数100から数1,000㎡単位の土地確保が必須です。しかし、広大な土地の確保や造成工事の際は、森林伐採や山の切り崩しなども行わなくてはいけません。

このように環境破壊につながる可能性もあるため、人工光合成関連設備の小型化なども求められます。

人工光合成の研究状況

ここからは、人工光合成の研究状況について紹介していきます。

トヨタは2030年の実用化へ向けて研究中

トヨタグループの株式会社豊田中央研究所は、2030年までの人工光合成実用化へ向けて研究開発を続けています。株式会社豊田中央研究所の人工光合成技術は、小型かつシンプルな構造という特徴を持っています。

二酸化炭素が溶けた液体で満たされた箱には、酸化電極と還元電極が入っています。各電極は太陽電池に接続されていて、太陽光を受けると化学反応によって酸素と水素イオン、ギ酸を生成する仕組みです。

2011年の実験では、変換効率は0.04%と非常に低い数値でしたが、改良を重ねることで2015年に4.6%を記録しました。

三菱ケミカルは経済につなげることも意識しながら研究

三菱ケミカルグループ株式会社は、人工光合成プロジェクトを進めています。プロジェクトの発足時期は2012年で、2030年に大規模な実験、2040年の社会実装を目標に、研究開発が続けられています。

三菱ケミカルグループ株式会社で重視しているポイントは、人工光合成を活用して経済を回すという点です。人工光合成技術の向上だけでなく、人工光合成による化学原料の製造技術開発、基礎化学品技術の開発など、事業として成り立たせるためのプロジェクトも進んでいるのが特徴です。

2023年時点では太陽光を活用する際に非FIT型太陽光発電を検討してみるのがおすすめ!

人工光合成技術は、2023年時点で研究段階です。これからクリーンエネルギーや省エネ設備の導入を行う場合は、非FIT型太陽光発電を検討してみるのがおすすめです。

非FIT型太陽光発電は、人工光合成と同じく太陽光を活用した設備で、脱炭素経営につながります。また既に実用化されている技術なので、導入しやすいのが強みです。それでは、非FIT型太陽光発電の特徴についてわかりやすく紹介していきます。

二酸化炭素排出量を抑えながら電力を使用できる

非FIT型太陽光発電は、二酸化炭素排出量を削減しながら電力を自家消費できる再生可能エネルギー設備です。

脱炭素経営を目指すには、自社の事業活動に伴う温室効果ガスや二酸化炭素の排出を削減していく必要があります。ただし、節電活動や省エネ設備の導入だけでは限界があり、再生可能エネルギー設備の導入も大切です。

非FIT型太陽光発電は、再生可能エネルギー設備の中でも設置しやすく、なおかつ二酸化炭素排出量を大幅に削減できます。

また、風力発電や水力発電などは、1kW100万円以上のコストがかかります。一方、非FIT型太陽光発電は1kW20万円台と比較的低価格で、なおかつ建物の屋根や地面、水上、駐車場など、さまざまな場所に設置できるのが特徴です。

さらにFIT制度に関する規制を受けないため、運用しやすさという点でもメリットがあります。

有事の際は自社や地域で非常用電源としての活用も可能

非FIT型太陽光発電は、災害などの際に自社や地域の非常用電源として活用できます。

大規模災害の発生後は、数日以上インフラが停止することもあります。非FIT型太陽光発電を設置している場合、停電時でも太陽光さえ出ていれば発電を継続できますし、自社や地域の電力ネットワークへ送電できます。

さらに産業用蓄電池を連携しておけば、夜間や発電量の少ない日でも電力を活用し続けることが可能です。

太陽光発電を通して再生可能エネルギーや環境負荷に関する知識や技術を蓄積できる

非FIT型太陽光発電はFIT制度の認定を受けていない太陽光発電で、売電や自家消費、その他電力関連の事業へ活用しやすい状況といえます。また、二酸化炭素排出量削減効果を得られるので、脱炭素経営において重要な二酸化炭素の削減実績を積むことが可能です。

他の再生可能エネルギーと比較して維持管理の手間が少ないため、本業で忙しい方でも導入しやすい設備だと言えます。

人工光合成で社会が変わる可能性も!企業は太陽光発電で脱炭素社会に貢献してみよう!

人工光合成は、太陽光によって水を水素と酸素に分解し、二酸化炭素と水素でオレフィンというプラスチックをはじめとした有機化合品の生成が可能な最新技術です。2030年や2040年に実用化される可能性があり、注目されています。

2023年中に脱炭素経営を加速化させていきたい方や、太陽光を活用した事業を始めたい方は、今回の記事を参考にしながら非FIT型太陽光発電を検討してみてはいかがでしょうか?

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また、品質はもちろんコスト面の負担にも目を向け、大量仕入れなどによる流通のコストダウンなどで初期費用負担の軽減を追及しています。

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