マクロとミクロの違いを見極めないと昨今の現象を理解できない時代

石橋大右

2026.4.30 石橋の考え

マクロとミクロの違いを見極めないと昨今の現象を理解できない時代

こんにちは、石橋です。
相変わらずテレビや新聞、はたまたネットを通じて報道されるはニュースは人々を不安にさせるようなものが多く、先行きの不透明感が増していることをひしひしと感じます。
それと同時に気になるのが、マクロとミクロという2つの大きな視点を混同してしまっているかのような報道です。これをごっちゃにしてしまうと誤った理解が広がってしまい、現実にそういった誤った理解による悪影響が社会に出ているとも思っています。

マクロとは、国や社会全体など、広い視野で物事みる視点のことです。これに対してミクロとは、個人や家計、企業など細かい経済単位で物事を見る視点のことです。この両者の違いは経済学の世界でよく用いられていますね。
例えば日本のGDPや失業率といった国全体の動向を示す指標は、マクロ視点です。これに対して、個々の企業の業績や各家庭の家計についての指標は、ミクロ視点です。

この両者は似たようなものに見えるかもしれません。ミクロの集合体がマクロなのですから、規模は違っても見ているものは同じ、と。しかし、これをごっちゃにしてしまっているのが昨今のニュース報道で、果たしてこれはマスコミがミスリードをしているのか、はたまたマスコミ自身も理解していなのか、それとも・・・?と感じています。

ミクロとマクロの視点の違いを如実に表しているのが、2026年3月から始まった原油の供給不安です。イラン情勢の緊迫化によってホルムズ海峡の封鎖が現実となり、同海峡を通過するルートで原油の大半を輸入している日本にとっては死活問題となりました。ここまでは、事実と相違ないわけですし、そのまま解釈すればいいと思います。
問題は、その先です。ホルムズ海峡からの原油輸送が途絶えそうだ、という報道が流れた直後にガソリン価格の高騰が始まり、ある放送局では「来週から1リットル200円」「1回あたり20リットルまで」との張り紙をしたガソリンスタンドの様子を報道していました。ホルムズ海峡が封鎖されたとしても、そこを通過した直後のタンカーが日本に到着するのは数週間後です。つまり、数週間は予定通り日本に向けて航行しているタンカーがあるため、すぐに需給が逼迫するわけではありません。
しかし、現場はどうでしょう。マスコミが不安を煽るような報道を続け、ネット上には陰謀論に近いような悲観マウントが溢れました。「ナフサ不足で6月に日本は詰む」という投稿が拡散したこともありましたが、これについてはウソであることが国から発表されているデータや、AIによるファクトチェックで明らかになっています。
ある評論家は「そんなに6月に日本が危機になると分かっているのであれば株価は大暴落するはず。今から日本株の空売りをすればいい」と述べました。本当にその通りだと思います。6月に日本が詰むことを確信しているのであれば、他の投資家に先駆けて日本売りを仕掛ければ大儲けできるのですから。しかし、実際にそんなことをしている人はいません。その証拠に、日経平均株価は史上初の6万円台に突入し、売り手よりも圧倒的に買い手が多いことを証明しています。

私はここに、マクロとミクロの情報がごっちゃになっていることの弊害があると考えています。イラン情勢が緊迫化してホルムズ海峡が封鎖された、そのために原油の輸入量が減るというところまではマクロもミクロも同じなのですが、その直後にいきなりガソリン価格が高くなったりするのはミクロの情報です。あるガソリンスタンドが極端な値上げをしたことをことさら強調するためにそこだけを取材したわけです。マクロでは原油の需給がまだ逼迫しているわけではないのに、です。

逆に、高市政権による備蓄石油の放出や代替調達を拡充することにより、当面原油の需給が逼迫することはない、との公式見解が発表されています。ここについても、マクロとミクロの乖離があると思います。
数字上、原油の需給が足りているというのはマクロ視点です。国全体で必要な量を確保しているのだから、理論上は原油価格が高騰することはなく、経済活動に影響が出ることはない、というわけです。
しかし、現場はどうでしょうか。そんなに簡単な話ではないと思います。現代の経済はサプライチェーンが複雑になっているため、ある1つの部品が調達できないだけでも完成品の納品が大幅に遅れるといったことが起きます。
東日本大震災が起きた際には東北地方にある多くの工場が被災し、さまざまな製品に影響が出ました。直接影響がなさそうな分野であっても、サプライチェーンが1か所でも欠けると完成品を作れなくなる時代です。部品全体の量は足りている、というマクロ視点で物事を見ていても、ある工場の部品を使用している完成品メーカーについては影響を避けられないということもあるわけです。これが、ミクロ視点です。

昨今の原油高騰によって、量は足りているものの「この価格だとうちは採算が合わない」として製品の供給を止めている企業が続出しています。原油や資材などのモノはあっても、それを使って生産をすればするほど赤字になることが分かっていれば、製造を止めるのが普通のビジネス感覚ですよね。マクロでは足りているとされるものであっても、ミクロの視点で見るとサプライチェーンのさまざまなところで目詰まりが起きているわけです。
本当に経済活動への影響を抑えたいのであれば、こうした目詰まりが起きないような資源の流通を目指すべきです。

もちろん国や企業などはその方向に動いているわけで、時間が経つごとにその成果は表れてくると思いますが、先日もメキシコから100万バレルの原油輸入に合意したとのニュースが流れた際に、「たった100万バレル、日本の消費量の1日分にも満たない」という批判がありました。メキシコからこれまで本格的に原油の輸入をしたことがない状態から合意をまとめただけでもすごいことですし、最初なので100万バレルから取引を始めるというのも自然なことです。マクロ視点で理解するなら、「今後に向けてメキシコからの安定調達を目指している」「リスク分散の一環」と理解できるわけですが、たった1回の取引の輸入量が少ないとしか理解できないのは、ミクロ視点しか持ち合わせていない人の言説です。

今後もさまざまな事象において、マクロ視点とミクロ視点の両方に対する理解が求められる場面があります。この2つの関係性をしっかり理解することで、日々起きていることの本質が見えてくるのではないでしょうか。

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