いよいよ本格化してきたFIPの時代、FITとの違いをこのタイミングで整理

石橋大右

2026.5.13 太陽光発電ビジネス

いよいよ本格化してきたFIPの時代、FITとの違いをこのタイミングで整理

こんにちは、石橋です。
今回は再生可能エネルギーについての最新事情として、FIPについて解説したいと思います。よく似た名前であり、FIP以前の主流だった概念としてFITとの違いについてもフォーカスしてみたいと思います。

FIPは、最近になってよく見聞きするようになった新しい制度です。以前はFITが主流でしたが、このFIPはそれに代わる概念、制度として注目を集めています。これからの再生可能エネルギー普及に大きな役割を果たすと見られるだけに、このタイミングでFITとの違いなどを整理しておきたいと思いました。

まずは、これまでの太陽光発電普及に大きな役割を果たしてきたFITについて。FITとは「Feed In Tariff」の略で、日本では固定価格買取制度と呼ばれています。余談ですがこのTafirrというのは直訳すると関税で、何かと話題のトランプ関税にもよく登場した言葉です。何せ、トランプ大統領は自らのことを「Tariff Man(関税男)」と呼んでいたくらいですからね。

FITは再生可能エネルギーで発電した電力を一定期間にわたって固定価格で買い取る制度なので、特に事業者にとっては収支を安定化させるのに役立つため、産業用太陽光発電の普及に一役買ったと感じています。FITの期間は家庭用が10年で産業用が20年なので、この年数だけを見ても産業用に適している制度ともいえます。
太陽光発電に関連するインフラファンドや投資案件などのほとんどは、このFITがあるからこそ生まれたといっても過言ではありません。20年間にわたって「売り上げ」がある程度確定しているのですから、事業者にとっては参入しやすいのは自明の理です。

・・・と、ここまでは良かったんですが、FITには大きな課題があります。1つ目は、再エネ賦課金(正式名称:再生可能エネルギー発電促進賦課金)です。固定価格で買い取るFITの制度を維持するためには、誰かがそのお金を出さなければなりません。特に初期の頃のFITには太陽光発電を普及させる役割があったため、相場よりも高い価格で買い取っていました。その上乗せ分を調達するために設けられたのが、再エネ賦課金です。
一般的な電力消費者から電気代に上乗せする形で徴収し、再生可能エネルギーで売電をする人に多めにお金を渡して来たわけです。
これ、単純に考えても不公平感がありますよね。再生可能エネルギーを導入している人にはもっとオトクになる一方で、一般の電力消費者の負担が増えるのですから。しかも太陽光発電の普及が進むにつれて再エネ賦課金は増加しており、不公平感も増大してしまっています。
私は以前から「FITには限界がある」と述べてきましたが、最大の理由はこの不公平感です。タバコ税がどんどん増税されている点においても、喫煙者にばかりタバコとは関係のない税負担をさせるのは不公平だという議論がありますが、この議論では喫煙者のみが「被害者」となっているため、非喫煙者からは異を唱える声があまり出てきません。しかし、社会の大多数を占める電力消費者が「被害者」になるとなると、社会も黙っていません。その結果、再エネ賦課金を廃止する提案など、不公平感に基づく議論が巻き起こっているわけです。

もう1つ、FITには構造的な課題があります。それは出力抑制の増加です。太陽光発電はお日さまが出ている限り発電をしますが、それは電力の需要とは無関係です。逆にお日さまが出ていない時は発電をしないため、発電をする時は余る一方で発電をしない時は電力が足りなくなる、という偏りが生じます。
発電をし過ぎる時は電力を消費しきれなくなるため、電力会社が出力抑制をします。出力抑制になると、売電も止まります。つまり、発電をしているのに売り上げにはなりません。
これだと事業者からは「話が違う」となりますよね。再エネ賦課金で恩恵を受けるはずだった発電側にも不利益が生じるようになってしまったのです。
FITは太陽光発電の普及には貢献したものの、そこまででした。普及したあと、さぁどうする?というところまでは考えていなかったため、「発電しすぎ」「発電しない時は電力が足りない」といった、新たな課題と向き合う必要が生まれました。

そこで、今回の本題であるFIPです。FIPは「Feed in Premium」の略で、FITの進化版です。FITは電力を固定価格で買い取ってもらう制度でしたが、FIPは電力を市場で販売します。市場で販売する際に一定の補助額が上乗せされる制度と表現するのが、一番分かりやすいと思います。FIPのPはPremiumの頭文字ですが、電力販売時に上乗せされる補助額のことをプレミアムということに由来しています。

どちらにしても発電事業者には何らかの下駄が履かされて恩恵があるわけですが、FITとFIPでは何が違うのでしょうか。ここで最大の違いを一言で言ってしまうと、事業者がただ闇雲に売電をすればいいのではなく、市場で販売する以上、市場価格を意識する必要がある点です。これはとても大きな違いです。
何が違ってくるのかというと、事業者は利益を最大化させるために電力をどう売るかを考える必要があります。電力が余る時間帯に売っても利益が少ないので、他の事業者からの供給が少なくなる時間帯に電力を売ろうと考えるようになります。
これにより、事業者は電力をより高い価格で売るために需給調整をします。これまでは保護されてきた再生可能エネルギーが市場参加者の一部となり、市場の需給に応じて電力を供給する存在になるのです。

これまでは生まれたばかりの弱い存在なのでお金をかけて守ってきた再生可能エネルギーでしたが、これからは市場参加者となって経営努力をした上で利益を目指すべき、それを後押しするのがFIPというわけです。
再生可能エネルギーは今や、未来のエネルギーではありません。すでに一定数の電力需要をまかなう電力源となっており、今後さらにその比率は高まっていきます。FIPはその時代に向けて再生可能エネルギーを社会のインフラとして認め、強く育てていくための仕組みなのです。
私が描いていた未来が、いよいよ到来した気分です。このFIPをより実効性のあるものにするには、蓄電池など技術的なインフラ整備が欠かせません。これについても語りたいことが大いにあるので、次回に譲りたいと思います。

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